リノベーションで間取り変更の費用相場は?ポイントと事例も紹介
Writer 片山飛翔 デザイナーWORKS バランスの取れた色彩感覚と暮らしやすさを考えた動線計画で、女性からも人気のあるデザイナー。休日は料理とキャンプをするのが定番です。 CREATOR’s STORY|片山 飛翔 |
数あるリノベーションのなかでも、空間の雰囲気をがらりと変えられるのが、間取り変更です。もともと仕切られていた部屋の壁を取り払って広い一部屋にしたり、仕切り壁を設置してそれぞれの個室にしたりと、家族のライフスタイルの変化にともなって使いやすい間取りにすることで、より暮らしやすくなります。
リノベーションで間取り変更となるとかなり大がかりな工事となるため、費用面など含め、不安な点も多くあるでしょう。そこで今回の記事では、間取り変更のリノベーションにまつわる注意点や費用、事例などを全般的に見ていきましょう。
目次
間取り変更のリノベーションとその目的
マンションの場合だと構造上で間取り変更のリノベーションが難しい場合もありますが、戸建ての場合は間取り変更の自由度は割と高く、間取り変更のリノベーションをすることで、全く別の空間に生まれ変わる場合も多くあります。一口に間取り変更リノベーションといっても、その目的はさまざまです。下記に見ていきましょう。
リノベーションで間取り変更をする目的
リノベーションで間取り変更をする目的の多くは、家族のライフスタイルの変化です。子どもが成長するにつれ子ども部屋が必要になったり、それからさらに年月が経ち子どもが独立して子ども部屋が不要になったり。自宅で仕事をすることになり、書斎が必要になる場合もあります。
また、キッチンとダイニングを一続きにして、より生活しやすくしたいというパターンもあるでしょう。
リノベーションで間取りを変更する内容
間取り変更は、もともと仕切られていた部屋の壁を取り払って広い一部屋にしたり、仕切り壁を設置してそれぞれの個室にしたりと、その内容はさまざまです。具体的に見ていきましょう。
間仕切りを撤去し部屋を一つに
間取り変更のリノベーションで多いのが、もともと仕切られていた部屋の壁を取り払って、1つの大きな部屋をつくるリノベーションです。2部屋をつなげる場合もあれば、複数部屋をつなげる場合もあります。
例えば、リビングとダイニングが壁で分かれている間取りの場合、壁を取り払って広いリビングダイニングの一室にするというリノベーションも最近人気です。家全体が開放感のある空間になり、部屋の面積は変わらずとも、どこか広くなったように感じることでしょう。
壁を取り払うことができるかどうかは、特にマンションなどの場合は構造上の問題も大きく関わってくるので、リノベーション施工業者へ壁の撤去が可能かどうかを確認しつつ、進めていくとよいでしょう。
間仕切りを設置して部屋で区切る
仕切られた壁を取り払って1つの大きな部屋にするのとは真反対に、大きな1つの部屋に壁仕切りを設置することで部屋を区切るのも、間取り変更のリノベーションで多くある例です。
例えば、子どもの成長にともない子ども部屋を設置したい場合や、家で仕事をすることになり書斎を設けたい場合など、このタイプのリノベーションも多くのニーズがあります。壁を設置して仕切る際に、間仕切りをパーテーションや引き戸タイプにすれば、必要なときは大きな1部屋として使うこともできるため、汎用性が高くなりおすすめです。
水回りの動線変更
水回りの動線を効率よくするために、間取り変更をするリノベーションの例も多くあります。築年数が古い物件は水回りの動線があまりよくない場合も多いため、長く住むためには水回りのリノベーションをすることで、ぐんと住みやすくなる場合があります。
例えばキッチンは、次々と新しいタイプの製品が登場します。築年数が古い物件では壁付け式のキッチンが主流だったものの、現在では対面式のキッチンが主流になりつつあります。浴室などにも、同じことがいえるでしょう。キッチンや浴室などの水回りの配置変更は、配管を移動したり新しく設置したりと、費用がかさみます。費用をおさえつつ暮らしやすい動線にするにはどうしたらよいか、リノベーション施工会社に相談してみるといいでしょう。
間取り変更をする際のリノベーション費用相場
間取り変更のリノベーションには、さまざまな目的があります。それぞれの工事の予算感を知っておくことで、検討材料の一つとなるはず。下記に、それぞれの費用の目安を見ていきましょう。
間仕切り壁や内装工事の費用
間取り変更のリノベーションで一番多いのは、間仕切り壁を設置・撤去したり、それに伴う内装工事の費用です。変更する場所や工事内容の規模によってもかかる費用は大きく変わります。一般な費用相場だと、簡単なリフォームの費用は約5万円から、大がかりなフルリフォームでは約300万円ほどの費用がかかるといわれています。
間仕切りの設置・撤去
間仕切りの設置・撤去にかかる費用は、約5万円〜20万円が目安です。壁の設置・撤去をするだけの場合は1カ所あたり約5万円〜10万円程度、電気工事などの付随する工事が発生する場合は約10万円〜20万円程度が目安であると思っておくとよいでしょう。
ドアやクローゼットの設置
ドアやクローゼットの設置にかかる費用は、約15万円〜30万円が目安です。間取り変更によってスペースの用途などが変わる場合、必要な場所に新たに収納を設けることもあります。一般的な収納であれば15万円程度の費用で設置可能ですが、1枚の戸を操作すると残りの戸も連動して開閉することができる連動引き戸などを選ぶと、その分費用は上がります。
窓のサイズ変更や増設
窓のサイズ変更や増設にかかる費用は、サッシの種類で大きく変わりますが、目安としては1カ所あたり約40万円が目安です。戸建てで2階部分への窓の増設は、足場を組む費用などもかかります。
水まわり設備のリノベーション費用
水まわり設備のリノベーションにかかる費用は、内容により大きく変わりますが、約100万円~300万円が目安です。大きい金額ではありますが、間取り変更のリノベーションを行うタイミングで、水回り設備の入れ替えを検討するケースも多くあります。それは一見すると大きな問題がないように見える場合でも、ある程度の築年数が経っていると、目に見えない構造部分の腐食や劣化が進んでいる可能性も多くあるからです。
水まわり設備を交換する場合は、当然ですが、選ぶ設備のグレードや付随する工事の内容によって、かかる費用がかなり変わります。また、壁付け式のキッチンを対面式のキッチンにするなど、位置変更がともなう場合は、大工工事や配管工事、電気工事なども発生する大がかりな工事になり、費用はアップします。最低でも100万円程度の予算をみておく必要があるでしょう。
リノベーションで間取り変更するポイント
間取り変更して暮らしやすくするために、どんなポイントをおさえておけばよいのでしょうか。リノベーション前よりさらに性能をあげるために注意すべき点をまとめました。
生活動線
間取り変更のリノベーションを成功させるためにおさえておきたいのは、まずは生活の動線。生活する上でどんな動きをするか具体的にイメージすることで、暮らしやすいかそうでないかが、大きく変わってきます。
また意外と盲点なのが、空気の流れです。例えば、キッチンとダイニングの仕切り壁を撤去して、大きなダイニングキッチンとして広々と使うのは気持ちがいいですが、食事後のにおいが部屋全体に広がりやすいという点が気になる場合もあるでしょう。その場合は排気口の配置や換気扇の位置に工夫をして空気がスムーズに流れるように対策するなどで、暮らしやすくする工夫をしましょう。
採光
大きな1部屋を2部屋に分けることで、採光が取れなくなる場合もあります。その場合は、半透明のガラス戸やパネル扉を採用するのがおすすめです。窓の位置を変更ことにより、部屋が暗くなってしまうケースもあります。間取り変更のリノベーションをすることで採光に影響がないかを、リノベーション施工会社とよく相談するといいでしょう。
冷暖房
間取り変更のリノベーションによって壁を取り払って広い部屋にすることで、冷暖房が効きづらくなる場合があります。熱の出入りを少なくするために新しい壁に断熱材を取り付けたりすると、リノベーション後の生活がより快適なものとなるでしょう。
リノベーション費用の変動要因と予算調整のポイント
費用がかさみやすい工事を避けることで、リノベーションのコストをおさえることができます。
工事期間に伴い予算はかかる
水まわりの工事など、工事期間が長くなるような工事は人件費なども発生し、費用が高額になります。また、リノベーションの内容によっては、仮住まいを検討する必要もあります。工事期間が長くなるような工事は、仮住まいの居住費用もその分かかります。リノベーション費用を少しでもおさえたいという場合は、施工期間が短くなるような間取りを施工会社に相談してみるのも一つの手です。
設置する設備や資材のグレード
当然ながら、設置する設備や資材のグレードによってかかる費用は変わってきます。すべてをグレードの高いものにしたいのは当然ながら、どこを優先するかを決めておくことで予算をおさえることができます。こだわりがあまり強くない部分は低価格のものを選ぶなどして、予算配分をしっかりと検討することが大切です。譲れない部分とそうでない部分を家族間できちんと相談しておきましょう。
リノベーションの補助金活用
車いすで移動しやすいように廊下の幅を広げたり、階段に手すりをつけたりなども費用がかさみがちですが、バリアフリー化の場合は補助金が申請できるケースもあります。利用できる補助金や助成金などの制度を事前にチェックしておきましょう。
「先進的窓リノベ事業2024」といった、既存住宅の窓やドアを、省エネ効果の高い断熱窓や断熱ドアに改修することで交付される補助金などもあります。工事の内容等によって一戸あたり5万円あたりから、最大200万円の補助金が還元されることも。リノベーション施工業者や自治体に相談してみるといいでしょう。
水まわりや階段移動もコスト高
費用が高くなりやすいのが、キッチンや浴室などの水まわりのリノベーションです。キッチンや浴室などの水回りの配置変更は、給排水設備工事や電気配線工事、排気ダクト工事が必要となり、費用がかさみます。位置を変更せずに新しいキッチンやユニットバスへの入れ替えを検討すると予算をおさえることができます。
また、階段の位置を変えるという内容のリノベーションも施工範囲が広くなりやすく、リノベーション費用が高額になりやすいです。
相見積もりによる比較が重要
リノベーションを計画する際、費用をおさえるためには、面倒でも相見積もりをとることが絶対に必要です。見積もりは複数の業者に依頼するようにしましょう。業者によってできるプランも変わってきます。ただ希望の工事内容を伝えるだけでなく、どういったふうに改善したいのかなどをじっくりと相談してみるといいでしょう。
施工後のフォロー体制
間取り変更のリノベーションを検討する際は、施工して引き渡し後のフォロー体制がどうであるかもチェックしておくといいでしょう。アフターフォローがしっかりしている分多少見積もりが高くても、長い目で見ると安く済むというケースもあります。
間取り変更が制約されるケース
間取り変更のリノベーションは、戸建ての場合はRC(鉄筋コンクリート)造やS(鉄骨)造の住宅は、比較的自由に間取り変更することができますが、木造造りの場合は制約されることも多くあります。また、マンションの場合は構造上、戸建て住宅よりも間取り変更のリノベーションにともなう制約が多い傾向にあります。
マンションにおける間取り制限
マンションの場合は戸建住宅よりも制約が多く、間取り変更のリノベーションが自由にできないという場合も多くあります。その制約とは、構造による制限、配管による制限、開口部による制限、管理規約による制限など、さまざま。下記に詳しく見ていきましょう。
壁式構造や二重床でないケース
マンションの構造は、階数や規模によって、主に「ラーメン構造」と「壁式構造」の2つに分けられます。
「ラーメン構造」は、コンクリート躯体の柱や梁や床スラブで建物の荷重を支えるため、専有部分の外周に太い柱が出てきたり、天井を見上げると太い梁が通っています。
一方、築年数が古い物件に多い「壁式構造」は、5階建て以下の物件に採用されている構造で、専有部分の間仕切り壁の一部が耐力壁になっていて、壁そのもので荷重を支えています。そのため、撤去することは不可能です。
間取り変更のリノベーションを前提に中古マンションの購入を検討している場合などは、建物の構造がラーメン構造か壁式構造かを、購入以前に確認したほうがよいでしょう。
また、マンションの床の施工方法は、主に「直床工法」と「二重床工法」の2つがあります。
「直床工法」は、コンクリートスラブの上に直接仕上げを張る工法です。一方の「二重床工法」はコンクリートスラブの上に二重床の下地を組み、その上にフローリング材を張る工法です。
床下に空間がある二重床であれば電気配線や給排水管を通すことが可能なため、水まわりの配置変更が可能な場合がありますが、床下に空間がない場合はそれが難しいことがあります。
マンション共用部
マンションの場合、共用部分については間取りの変更はもちろんのこと、交換などの簡易なリフォームも認められていない場合がほとんどです。リノベーションできる範囲は、所有者の専有部分に限られます。このときに注意したいのは、どこまでが専有部分であるかということ。ドアや窓、ベランダなどは専有部分ではなく、共用部分であるという考え方をすることも多くあります。共用部分である場合は、所有者の判断で勝手にリノベーションやリフォームをすることはできません。
また、専有部分であるからといって、自由なリノベーションができるというわけではありません。下記に詳しく述べますが、共用部分だけでなく専有部分についてもさまざまなルールが定められており、間取り変更のリノベーションを検討する際は事前にプランなどを管理組合に共有し、事前に了解を得る必要があります。
スプリンクラーの位置にも注意
高層マンションの場合、消防法に基づいて住戸内にスプリンクラーが設置されている場合があります。面積や用途によってスプリンクラーの設置数や位置が決められており、間取り変更のリノベーションをすることにより部屋の広さや用途が変わる場合は、スプリンクラーの増設や移設が必要になることがあります。そのことで希望の間取り変更が制限されるということはまずないですが、スプリンクラーの増設や移設にともなう費用がかかる場合があるので注意が必要です。
マンションの管理規約
マンションにはそれぞれに管理規約や使用細則があることがほとんどです。共用部分だけでなく、専有部分についてもさまざまなルールが定められています。例えば、漏水事故を防ぐために水まわりの移動が禁じられている場合や、騒音トラブルを回避するために床材の仕様やフローリングの遮音等級などが定められている場合も。
マンションにおいて間取り変更のリノベーションを検討する際は、事前にプランなどを管理組合に共有し、了解を得る必要があります。リノベーション前提で中古マンションを購入する際も、この点に注意して、管理規約の内容をチェックする必要があるでしょう。
戸建てにおける間取り制限
マンションに比べると、戸建て物件は間取り変更のリノベーションの自由度は高いといえます。ただし下記の例の場合、構造上において間取り変更のリノベーションが難しいことがあります。
木造の2×4工法は注意が必要
木造の戸建ての場合、柱と梁で建物を支える「在来工法」と、壁で支える「2×4(ツーバイフォー)工法」があります。
2×4工法は壁自体で建物を支えているため、マンションの壁式構造の場合と同じように、耐力壁そのもので荷重を支えています。そのため、撤去することは不可能です。スケルトンリフォームでも、希望通りの間取りにできないことも。まずはリノベーション施工会社に希望の工事内容を伝えた上で、リノベーションができるかどうかを確認しましょう。
間取り変更のおすすめのリノベーション事例
経年による建物の老朽化や、家族のライフスタイルの変化によって住みにくさを感じるようになった場合にぜひ検討したいのが、間取り変更のリノベーション。間取り変更のリノベーションをすることで、住みにくさを感じていた空間が蘇るケースはたくさんあります。
また間取り変更に伴い、機能性や快適さが大幅に向上する最新の設備を取り入れるリノベーションを併せて検討してみるのもいいでしょう。キッチンや浴室などの水まわりのリノベーションも、その代表例の一つ。費用は多くかかりますが、長い目で見ると格段に暮らしやすくなり、「やってよかった」という声が多く上がるリノベーションです。
ここでは、KUJIRAが手がけたおすすめの間取り変更のリノベーション事例を紹介します。
ペットの安全を守るための独立キッチン
元々の間取りでは洋室が独立していましたが、壁を取り払うことでひと繋がりのLDKになりました。キッチンは猫ちゃんの誤飲を防ぐため、他の部屋と仕切って独立させています。壁には室内窓とガラス扉を使用することで、閉鎖的にならずダイニングでのお子さんの様子をしっかりと見守ることができます。
▶︎種別:中古戸建て
▶︎費用:2,000万円(税別)
▶︎間取り:6DK→4LDK
▶︎築年数:築34年
長屋を広くみせる1LDK
幼少期から親しんできた実家を、終の住処としてリノベーションしました。長屋特有の間口が狭く、奥に光が入りにくい構造。2部屋に分かれていた居室は1つにまとめ、階段室の壁はガラスにすることで視線を遮ることなく、部屋を広く感じさせます。
▶︎種別:長屋
▶︎費用:約1,200万円(税別)
▶︎間取り:2LDK→1LDK
▶︎築年数:約57年
まとめ
ライフスタイルに合わせて間取り変更リノベーションをすることで、格段に暮らしやすくなります。大がかりな工事となるために費用面の目安なども把握した上でこれからの暮らしをイメージし、リノベーション施工会社へ相談してみましょう。独自のワンストップリノベーション実績のある KUJIRAに、ぜひお気軽にお問い合わせください。