2026.04.06
最終更新日
2026.04.06
施主様インタビュー

壁に2つの大きな絵。理想の暮らしは広さより“誰と分かち合えるか”

好きな家具を飾りたい。友人を招きたい。でも、部屋が狭いと、希望する暮らしはいつも「そのうち……」に追いやられる。

ただ、住み替えだけが答えじゃない。“もうひとつの住まい”を持つ、セカンドハウスという選択肢がある。

大阪市内の一室で始まったのは、鳥羽山さんと友人たちの「共につくる」プロジェクト。裁判を経て得た、理想の暮らしを聞いた。

「憧れのセカンドハウス」も裁判で手付かずに

大阪・北摂地域のワンルームで一人暮らしをしている鳥羽山さん。企業に赴きビジネス英語や中国語、タイ語、韓国語などを教える語学講師をしている。

外資系企業に勤めていたこと、大学でタイ語を専攻していたこともあり、年に数回、アジアを中心に海外旅行をしていた。趣味は東洋アンティークを集めることで、友人は旅行仲間が多い。そんな生活は充実していたが、住まいに悩みを抱えていた。

「これまで集めてきた家具や雑貨、骨董は100点を超えます。ワンルームでは、せっかく買ってきても飾れない。日の目を見る場所が欲しかったし、友人たちが集える場所が欲しいと思っていました」

そこで浮かんだのが、“セカンドハウス”という選択肢。文字通り、第二の住まいを意味する。クジラと出会い、2021年に物件探しがスタート。みんなが集いやすい大阪市内で中古マンションの一室を購入し、リノベーションするための解体工事までは順調に進んだ。

しかし、海外のオンラインショップで購入した大型家具をはじめ、壁紙やタイルなどの資材が一向に届かない。リノベーションはそれらがないと始まらない。メーカーに問い合わせたところ、運送会社がすべて紛失したと言うのだ。

「人生で初めての、しかも海外での裁判が始まりました。長い時間をかけて一度勝訴しましたが、相手側に控訴され今も裁判は続いています。そんな出来事があり、何年も手付かずのままだったんです」

「友人たちと集える場所を」一からの再スタート

止まっていた時間が動き出したのは、2025年の始め。友人たちとの旅先で、新年の目標を語り合っていたときだった。

「“今年こそ、絶対家を完成させたほうがいい”と言われました。完成したら見に来てねとみんなに話していたので、自分でも重い腰を上げないとなとは思っていたんです。ちょうどその後、クジラさんから『計画を再開しませんか』と連絡があり、今しかないと心を決めました」

当時、このまま売却する提案も受けていたセカンドハウス。そんなときに浮かんだのは、友人たちの「楽しみにしてるよ」という言葉。しかし、計画を阻んだ海外企業相手の裁判は、明るく気さくな性格とは裏腹に、鳥羽山さんの心を蝕んでいた。そんな日々で忘れかけていたセカンドハウスをつくる意味。大好きな東洋アンティークに囲まれたい、友人たちと集える場所をつくりたい。

「それからの打ち合わせは本当に楽しかったです。あれしたい、これしたいって、夢しか語っていなくて。また一からのスタートにはなるけど、周囲の人が差し伸べてくれた手を大切に取っていこうと思いました」

山?クジラ?フリーハンドで描いた2つの丸

理想の空間を叶えるため、家具や資材も一から取り寄せることに。予算のことを考えて鳥羽山さんが選んだのは、“自分たちでつくる”ということ。

お風呂やトイレ、床や壁、天井を組むなどの専門的な施工はクジラが担当したが、壁や天井の表面は仕上げずに石膏ボード剥き出しの状態で引き渡された。広くて未完成な部屋。クジラ社員にも、完成イメージがまったくわからなかった。

「昔に壁塗りの経験があって、一人ではとても無理だけど、人と協力すればできると思っていたんです。予算のこともありますが、何よりみんなで過ごす場所だから、みんなと一緒に作りたかった」

ペンキと一緒に、思い出も塗られていく。DIYを通じて絆が深まったそう。

リビングに描かれた二つの大きな丸は、鳥羽山さんのフリーハンド。

「直線が好きじゃなくて、曲線を描きたいと思って。山みたいって言う人もいれば、おしりみたいって言う人もいました(笑)。クジラがいるねって言う人もいたんですよ」

友人にはいろんなタイプがいると言う。

「私みたいに大雑把な人もいれば、すごく几帳面な人もいる。得意不得意を補い合うことで、いい空間がつくれたと思います。自分一人じゃきっとできなかった」

失敗したら、塗り直せばいい。飽きたら、塗り替えればいい。やり直せるから、自由になれる。のびのびと描かれた壁の跡は、多少の歪さも「難しかったね」と笑い合える、思い出の栞のようになった。

次は語学教室ではなく“文化サロン”

家づくりを手伝ってくれたお礼に、キッシュやミートパイ、シュクメルリなど、世界各国の料理を振る舞ってきたそう。

「人をもてなすのが好きなんです。おいしいおいしいって喜んでくれたら、それが一番幸せ。外食で集まる選択肢もあるけど、一緒に食卓を囲みたい理由はそこにあるのかな」

セカンドハウスは名前の通り、第二の住まいを意味する。別荘やホテルとの違いは、そこに“暮らし”があるということ。ここでは非日常ではなく、日常が塗られていく。

そして、物理的な余白がもたらしたのは、精神的な余白。新たな夢が生まれた。

「ここで語学教室を開きたい。教室というより、文化サロンのような場所にしたくて。言語だけじゃなく、料理やインテリアも文化の一つ。単語や文法だけ勉強してもつまらないじゃないですか。暮らすことで、学ぶことの楽しさを知ってほしいんです」

鳥羽山さんにとってのセカンドハウスは、共に暮らし、育てていく場所。

ここで共存し繋がることで、彼だけでなく、訪れる人々の心を豊かにしていくのだろう。

 

 

WRITERこの記事を書いた人

上沼 祐樹

リノベーションの相談・各種ご予約はこちら