2024.09.19
最終更新日
2024.09.20
リノベーションのヒント

リノベーションと建て替えの違いやメリット・デメリットを比較

リノベーション後の戸建て

こんにちは!クジラ株式会社の菅原です!

Writer
菅原沙絵
デザイナー WORKS
2017年に新卒入社以来、住宅だけではなく店舗や宿泊施設のデザインも担当してきた。
お客様の理想を正確に捉え、ヒアリングを中心にデザインしていくことを得意としているデザイナー。
CREATOR’s STORY|菅原 沙絵

住まいとは築年数が経つにつれ老朽化し、住みにくさを感じてくるものです。より住みやすい家にするための選択肢として候補に上がるのが、「リノベーション」するか「建て替え」するかの二択ではないでしょうか。この二択は、まず悩むポイントでしょう。両者の大きな違いは、構造体を残すか壊すかですが、それ以外にも比較すべき点がたくさんあります。そこで今回の記事では、「リノベーション」と「建て替え」の違いや、メリット・デメリットについて見ていきましょう。

リノベーションと建て替えを理解しよう

リノベーションと建て替えの違い
「リノベーション」と「建て替え」の違いについてはなんとなく知っているつもりでいても、具体的にはどういった部分が違うのかについて、意外と理解していないこともたくさんあります。まず、「リノベーション」と「建て替え」で大きく違うのは、建物の構造体を残すかどうかです。それにともない、費用や工期、間取りの自由度など、さまざまな違いが出てきます。その違いを十分に理解することで、より家族のライフスタイルや予算に合ったほうを、賢く選択することができます。

リノベーションとは

「リノベーション」とは、既存の建物を壊さずに構造体を生かしつつ、大きな改装や改修を行うものです。設備の入れ替えや内外装の改装などの比較的小規模でおさめる「リノベーション」から、大幅な間取り変更や増築など大規模なリノベーションをする「フルリノベーション」まで、さまざまなケースがあります。「リノベーション」では、既存の建物を残したまま、新たな機能や付加価値をつけることができる点が、最大の特徴です。

「リノベーション」と似た言葉に、「リフォーム」があります。この違いは、リフォームが「マイナスの状態のものをゼロの状態に戻す」ことに対し、リノベーションが「プラスαで新たな機能や価値を向上させる」ことです。主要なリノベーション関連企業が加盟している「一般社団法人 リノベーション協議会」では、リフォームは「原状回復のための修繕・営繕、不具合箇所への部分的な対処」、リノベーションは「機能、価値の再生のための改修、その家での暮らし全体に対処した包括的な改修」と定義しています。

建て替えとは

一方で「建て替え」とは、既存の建物の構造体をすべて解体して一度土地を更地に戻し、新しく建て直すことです。「建て替え」の場合は、「建築確認申請」が必要です。建築確認申請とは、その建物が建築基準法や都市計画法等に適合しているかどうかを審査するものです。「建て替え」では、既存の住宅を一から新築で作りなおすため、当然のことながら、基礎から設備、内外装において、全てが新しくなります。

リノベーションと建て替えの特徴を比較

大きな違いは、「リノベーション」は建物を壊さないことが前提であること。単純に費用を抑えたいという場合には「リノベーション」を選ぶ場合が多いですが、大がかりな「リノベーション」となると、かかる費用が「建て替え」と変わらない場合もあります。また、既存の構造体の老朽化が大きく進んでいる場合は、コストや工期がかかってでも「建て替え」の方が長い目で見るといいこともあります。「リノベーション」と「建て替え」について、大きな違いを下記の表で比較してみましょう。

リノベーション建て替え
定義建物の構造体を残し部分的に改修建物の構造体を全て解体
費用(内容に準ずる)約1,000〜2,000万円約2,000〜4,000万円
工期(内容に準ずる)2~4ヵ月程度3~9ヵ月程度
間取り工法などにより制限あり制限なし
建築確認申請基本的に不要必要

まず、大きく違ってくるのが費用面です。「建て替え」に掛かる費用は、解体する家と新しく建てる家の状態により変動するため一概には言えませんが、約2,000〜4,000万円程度と大きなコストがかかります。まず、解体費用がかかります。その上でさらに、新築費用がかかります。新しい建物が木造であれば比較的安く済みますが、軽量鉄骨、重量鉄骨、2×4、コンクリート構造の場合だと値段が上がる傾向にあります。予算的に1,000万円以下で建て替えたいという場合もあるかもしれませんが、1,000万円以下という予算で「建て替え」を考えるのは、ほぼ不可能と言えます。

一方で「リノベーション」に掛かる費用は、「建て替え」よりも安く済む傾向にあります。リノベーションする内容によっても、費用の幅は大きく変わってきます。一般的には約1,000〜2,000万円のコストを考えておく場合が多いですが、それよりも費用を抑えたいという場合についても、リノベーションの内容次第では可能な場合もあります。

リノベーションか建て替えか、どっちが良い?

リノベーション 建て替え
「リノベーション」と「建て替え」の違いを比較した上でも、現在の建物の場合はどちらが最適かを迷う場合も多いでしょう。「リノベーション」と「建て替え」どちらを選択すべきか、どういったポイントで判断すればよいのでしょうか。まずはおさえておきたい、両者比較の判断の基準となるポイントを以下に見ていきましょう。

築年数による選択

「リノベーション」と「建て替え」を選ぶ際に、家の築年数は大きく関わってきます。一般的な目安として、築20年頃ぐらい経過している場合は「リノベーション」、築30年ぐらい経過している場合は「建て替え」を選択するのがいいと言われています。とはいえ、築20年ほどしか経っていなくてもシロアリ被害などで構造体の老朽化が大きく進んでいる場合や、逆に、築30年経っていても建物の構造体がしっかりしている場合もあります。構造体の状態に関しては、素人判断をするのはなかなか難しいものです。施工会社に相談し、専門家に住宅の基礎を診断してもらうとよいでしょう。

耐震基準による選択

「リノベーション」か「建て替え」か、どちらにするかを検討する上で、建物の耐震面も確認しておく必要があります。耐震性の基準は、1981年に改定されました。それ以前に建てられた建物は旧耐震基準であるため、現在の耐震基準と比べると不足が多いと言えます。1981年以前に建てられた家の場合は、耐震工事が必要となる場合も多くあります。耐震工事をするとなると工事が大がかりになり、コストもかかります。その場合は、「建て替え」を視野に入れてもよいでしょう。

予算・コストによる選択

やはり一番気になるのが、予算面です。「建て替え」は、既存の建物を基礎部分まですべて解体して一度土地を更地に戻し新しく建て直すため、当然ながら多くのコストがかかります。工事にかかるコストだけでなく、税金や確認申請等の諸費用なども発生します。こういったことから一般的には、「リノベーション」のほうがコストを抑えられる傾向にあります。とはいえ、リノベーションの度合いによっては、思ったよりも費用が多くかかることも考えられます。「リノベーション」の場合は、実際に工事が進んだ段階で、構造体の老朽化により耐震工事や断熱工事などの追加工事が必要になる場合もあり、追加費用が予測しにくいです。

予算を算出する際は、はじめに改修したい部分を明確にした上で、「建て替え」の場合と「リノベーション」の場合で見積もりを取り、比較することをオススメします。リノベーションコストが建て替えコストとあまり変わらないのであれば、住みやすさや資産価値の面などにおいて、全てを最新設備にできる「建て替え」のほうが、長い目で見ると賢い選択という場合もあるでしょう。

家族構成による選択

家とは、家族のライフステージによっても刻々と変化を遂げるものです。現在、そして直近の家族のライフステージによるライフスタイルを思い描きつつ、プランを立てるとよいでしょう。例えば、子どもたちが結婚してから二世帯住宅にする可能性があるのかどうか、など。また、子どもたちに住宅を引き継ぐ可能性がある場合は、多少コストがかかっても長期優良住宅として判断されやすい「建て替え」の方が、将来的に考えると相続がしやすいといったこともあります。引き継ぐ予定がないのなら、比較的コストを抑えられる「リノベーション」を選択するという場合も多いでしょう。

工法による選択

構造体がどのような工法で作られたものであるかも、「リノベーション」か「建て替え」を検討する上で重要です。日本の建築において古くから用いられている木造住宅である場合は、間取りの変更は比較的簡単にすることができます。一方で、軽量鉄骨、重量鉄骨、2×4、コンクリート構造である場合は、リノベーションにより部屋を拡大したり、窓を造作したりが難しい場合があります。間取りの変更をどこまでしたいかを伝えた上で、施工業者に相談しましょう。

リノベーションのメリット・デメリットを知ろう

リノベーション 耐震
「リノベーション」と「建て替え」のそれぞれのメリット・デメリットを具体的に知っておくことで、さらなる判断基準になります。既存の建物を壊さずに構造体を生かしつつ大きな改装や改修を行うことができる「リノベーション」。まずはそんな、「リノベーション」についてのメリット・デメリットについて、以下に具体的に見ていきましょう。

メリット

「リノベーション」の最大のメリットは、既存の建物の構造体を生かすことで費用を抑えられることです。既存の建物のいいところを生かしつつ、そのときのライフスタイルに合わせて住みやすい空間を作ることができます。それにともない工期も短いため、工事中の仮住まいにかかるコストも少なくて済みます。建て替え時にかかる不動産取得税や登録免許税などもかかりません。リノベーションする箇所を効率的に選べるのもメリットと言えます。ただし、複数回に分けて工事をすると費用が割高になるため、全体的に改修するのなら、一度にリノベーションを行う「フルリノベーション」がよいでしょう。

また、長い間暮らした住まいを生かしつつ改修できるため、思い入れのある我が家の形をそのままにできたり、築年数を活かした趣のあるデザインに仕上げることができたりするのもメリットと言えます。

「リノベーション」のメリットを、以下にまとめます。
・既存の建物の構造体を生かすため、工事費用を格段に抑えられる
・既存の建物のいいところを生かしつつ、済みやすい空間を作ることができる
・思い入れのある我が家を残すことができるため、住まいにより愛着が湧く
・築年数を活かしながら、趣のあるデザインに仕上げることができる
・工期が短期間で済むため、仮住まいなどの費用がかかりづらい

デメリット

「リノベーション」のデメリットは、先述した通り、建築物の工法などにより間取りを自由に変更できない場合があります。主に「リノベーション」は既存の建物をベースとするため、間取りに対する要望が叶わない場合があることです。また、実際に工事が進んでから躯体が老朽化していても、耐震工事や断熱工事などの追加工事が必要になる場合もあり、追加費用を予測しにくい点もデメリットと言えます。万が一の工事が発生する場合に備えて、余裕のある予算組みをする必要があります。

「リノベーション」のデメリットを、以下にまとめます。
・大幅に増築したいなどの場合は、間取りの要望が叶わない場合がある
・工事が進んで段階で追加工事が必要になる場合があり、予算組みがしづらい
・内容によっては、「建て替え」と変わらないコストがかかる場合がある

リノベーションが向いている場合

「リノベーション」が向いているのは、今ある建物に対して部分的な改修で済む場合です。そうすることでコストを抑えられ、工期も短く済みます。建物に安心できる耐震性や断熱性がある場合も、「リノベーション」で済ませるほうが効率的でしょう。また、将来的に子どもや孫に受け継ぐ予定が特に決まっていないという場合も、「リノベーション」がおすすめです。

「リノベーション」が向いているのは、以下のような場合です。

・現在の建物がしっかりしていて部分的な改修で十分な場合
・住み慣れた現在の住まいの趣を残したい場合
・できるだけ工事費用をおさえたい場合

建て替えのメリット・デメリットを知ろう

リノベーション 建て替え
「リノベーション」同様、「建て替え」にもメリット・デメリットがあります。既存の建物の構造体をすべて解体して一度土地を更地に戻し、新しく建て直す「建て替え」。次にそんな、「建て替え」についてのメリット・デメリットについて、以下に具体的に見ていきましょう。

メリット

「建て替え」のメリットは、なんといっても間取りの自由度です。新築住宅と同様に間取りを考えることができるため、理想の間取りを自由に実現することができます。今後の家族のライフスタイルを考えて部屋数を大幅に増減したい場合にも、もちろん対応が可能です。

「リノベーション」に比べて工事費用やその他の諸費用はかかる傾向にありますが、その分、長い目で見た資産価値も高まります。建て替えた住宅は新築扱いになり、地盤調査を再度しなおすため、耐震対策的にも安心です。そのため、建物自体の資産価値が上がります。担保評価が高まるため、余裕のある設定で住宅ローンを組みやすい点もメリットでしょう。

「建て替え」のメリットを、以下にまとめます。
・新築同様、自由に間取りを考えることができるため快適な暮らしにより近づける
・建物の資産価値があがるので、子どもや孫に相続しやすい
・担保評価が高まるため、余裕のある設定で住宅ローンを組みやすい
・耐震を強化することができるため、これから先長い間安心して住むことができる
・断熱化やバリアフリー化、省エネルギー化にも柔軟に対応できる

デメリット

「建て替え」の大きなデメリットは、なんといっても費用がかかることです。工事費だけでなく、一度更地にするため解体のための費用、建築確認申請にかかる費用、不動産取得税や登録免許税の納付も必要です。それにともない、そのための手続きに必要な時間も当然多くかかります。建物の評価額も上がるため、毎年の固定資産税・都市計画税も増額になります。解体工事・地盤調査・基礎工事・建て方工事なども必要になり工期が長くなるため、仮住まいにかかる費用もカウントしなければなりません。

また、そもそも、建築基準法の基準を満たしていないと建て替えが不可能な場合や、建て替えることで現在の建物より小さな面積の家しか建てられないケースがあります。これは「再建築不可物件」と呼ばれ、接道の幅や間口が基準を満たしていない場合や、敷地内に昔に建てられた建築確認を取っていない建物がある場合です。「建て替え」を希望するにあたってはまず現在の建物た建っている敷地の調査を行う必要があります。その上で、現在の建築基準法を満たした住宅を建てられるかを確認する必要があります。「建て替え」の場合は、そういった確認作業にも時間が取られることを抑えておくべきでしょう。

「建て替え」のデメリットを、以下にまとめます。
・一度更地へと解体するため、当然のことながら多くの費用がかかる
・工期がかかるため、長く住める仮住まいを探す必要がありコストもかかる
・建て替えが不可能な場合や、今より小さい家しか建てられない場合がある

建て替えが向いている場合

「建て替え」が向いているのは、将来家を引き継ぐ人が決まっているなど、長期的なスパンで見たときに大規模な修繕が必要な場合です。また、見積もりをとった場合に希望する内容のリノベーションと費用面であまり変わらないという場合は、資産価値が高まる「建て替え」のほうが将来的にいい場合があります。家族と話し合い、ライフプランを考えながら決定するとよいでしょう。

「建て替え」が向いているのは、以下のような場合です。

・現在の建物の構造体に不安がある場合
・将来家を引き継ぐなど長く済む場合
・資産価値を高めたい場合

まとめ

「リノベーション」は構造体を残しながら大部分を修繕すること、「建て替え」は一度更地にして構造体を壊し新たに新築として建て直すことです。かかる費用としては、一般的には「建て替え」の方が多くの費用がかかりますが、長い目で見た場合は、資産価値の高まる「建て替え」のほうが将来への投資という意味では適している場合もあります。

当然のことながら、「リノベーション」も「建て替え」もそれぞれに、メリット・デメリットがあります。家族のライフステージに照らし合わせて住みやすい住まいを検討する場合、まずは、記事で紹介する判断材料をもとに検討してみてください。ある程度希望を整理した上で、施工会社に相談しプロの目線で判断してもらうのがよいでしょう。

KUJIRAでは、「フルリノベーション」および「建て替え」の実績が豊富にあります。「リノベーション」か「建て替え」かで迷う場合は、まずは独自のワンストップリノベーション実績のあるkujiraにご相談ください。

WRITERこの記事を書いた人

デザイナー

菅原 沙絵SAE SUGAHARA

設計 / 大阪府大阪市出身 / 普段からデザインを意識的に見て、自分ならどうするのか考えるようにしてます / インテリア雑貨が好きでナチュラル・シンプルなものを集めることにはまっています

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