建築の躯体とは?コンクリートとの関わりや躯体工事の種類についても紹介

こんにちは!クジラ株式会社の藤本です。
![]() | Writer 藤本恭好 デザイナーWORKS 何事もバランスが大事! を念頭に相談者さまの頭の中を整理するデザイン提案を心がけています。誰かに喜んでいただく事がまわりの人・地域・社会へ伝播することを信じています。 |
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家を建てる際は目に見える建築デザインばかりが気になりがちですが、建てる上で忘れてはならないのは、建物を支える基本構造である「躯体」です。躯体とは、構造的に建物全体を支える骨組みの部分で、建物の安定性や強度を確保する最も重要な部分。
躯体は、使用される素材や工法により、いくつかの種類に分類されます。本記事では躯体の種類や、躯体工事の主な内容について見ていきましょう。
目次
躯体とは何か?その役割と基本を理解しよう
躯体(くたい)とは、建物を支える基本構造のことです。内外装の仕上げや設備機器以外の建物の強度にかかわる部分で、建物の安定性や強度を確保する最も重要な部分です。
具体的には、建築物を構成する主要な部分である基礎や柱、梁、壁、柱などを指し、窓や戸、建具などの付属物や設備類は除きます。
「躯体」とは?建築における基本構造の意味
躯体とは建築基準法で定義される基本構造で、主要構造部とも言われます。主要構造部とは、防火や安全、衛生上重要な建物の部位を示す用語です。耐火建築物の建物を建築する際には、延焼・火災拡大・倒壊防止などのために主要構造部を耐火構造とする必要があり、建物の用途や規模などに応じて厳密な制限が設けられています。
躯体と構造形式ごとの特徴
躯体は力を支える構造体に使う材料によって、いくつかの種類に区別されます。自然素材である木の特性を活かした温かみのある質感が特徴の木造は、柔軟性が高く軽量かつ施工が簡単であることから、広い範囲での建造物に利用されています。
軽量で耐久性があり設計の自由度が高いS造(鉄骨造)は、高層の建築や広い施設に適しています。
鉄筋で補強されたコンクリートであるRC造(鉄筋コンクリート造)は耐震性にも優れ強度が高く、幅広く利用されています。
RC造の強度と鉄骨の自由度を兼ね備えたSRC造(鉄筋鉄骨コンクリート造)は、より強固な構造に対応が可能です。それぞれの構造形式の特徴について、以下に詳しく見ていきましょう。
木造 – 柔軟性と温かみのある構造
自然素材である木の特性を活かした木造は、柔軟性があり温かみのある空間を生み出すことができます。軽量でありつつも高い強度を誇り施工も比較的容易であるため、さまざまな形状やデザインにも対応でき、設計の自由度が高い点が魅力です。木の質感や温もりは、居住空間に心地よさをもたらすため、住宅で採用されることが多い構造形式です。
デメリットは、湿気や虫害に対してあまり強くないという点。ここをきちんと理解した上で防腐や防虫の対策など適切なメンテナンスをすることで、持続可能な建築となります。
S造 (鉄骨造)– 軽量で自由度の高い設計
鉄骨造は、軽量でありながらも自由度が高い設計が可能です。加工が容易なため汎用性の高いデザインを実現することができ、デザインの自由度が高いため多く利用されています。
さらに、鋼材を使用しているため強度が高いことや、軽量で基礎部分の負担が軽減されるため地盤の条件に応じた設計がしやすいことから、耐震性が求められる建築の場合に選択されることが多いです。
特に高層ビルや倉庫や体育館、工場など大きなスパン(柱と柱の間隔)を要する建物に適しています。比較的短期間での施工も可能なので、工期を短縮させたい場合にも効果的です。
RC造(鉄筋コンクリート造)– 耐久性と強度の両立
RCとは、鉄筋コンクリートの英訳「Reinforced Concrete」の頭文字をとったもの。鉄筋コンクリート造の略称で、耐久性と強度を兼ね備えた構造形式です。耐火性にも優れているため、火災に対する防御性能が高いのも特徴です。コンクリートの形状が自由に設計できるため、多様なデザインに対応できるという利点もあります。
デメリットとしては木造やS造と比べるとコンクリートを流し込む工数が増えるため、コストが高くなりがちな点です。
SRC造(鉄筋鉄骨コンクリート造)– RC造と鉄骨の強みを活かした設計
SRC造は、鉄筋コンクリート造(RC造)と鉄骨造(S造)のメリットを融合させた構造形式です。2つの良さを併せ持ち、多様な建築ニーズに対応します。RC造よりも細い柱や梁で強度の高い構造物を造ることが可能で、高層ビルやタワーマンションなどの大規模な建物にも多く用いられています。法定耐用年数は47年とされていますが、適切なメンテナンスがされていれば、さらに耐用年数を超えても住み続けられるという丈夫さがあります。
躯体工事について詳しく知ろう
躯体を作る工事は「躯体工事」と呼ばれます。建物の耐久性や安全性を確保する骨組みとなる躯体工事は、建物の基本を形成する重要な工事です。躯体工事は全体の7割以上を占めることも多く、いかなる建物においても重要な工程です。
躯体工事の種類と施工工程
躯体工事は、基礎工事と本体工事の2つの工事で構成されます。
基礎工事
建物と地盤のつなぎ目となる基礎(土台)を作る工事で、建物全体の耐震性や耐久性などの安全性を左右する、建築において大変重要な工程です。
地盤の状態や建物の性質に応じて、杭打ち・布基礎・ベタ基礎などの工法が採用され、地震や地盤沈下に対する耐久性を高めます。しっかりとした地盤の場合でも鉄筋コンクリートで基礎を作ることもあり、地盤が弱い場合は地盤改良などで補強する工事をします。
本体工事
基礎工事が終わったあとに行われる建物の骨組みを組み立てる工事のことです。建物の骨組みとなる、壁・梁・床・柱・屋根などの主要構造部を作ります。
また、施工管理者は現場で工事の立会いや検査を行い、施工図や提出書類の確認を行わなければなりません。本体工事が完了後、木工事・塗装工事などの内外装の工事が行えるようになります。
躯体工事の種類としては主に、とび工事・鉄骨工事・鉄筋工事・型枠工事・コンクリート圧送工事があります。各工事には専門的な技術が求められ、その精度が建物の安全性や耐久性を大きく左右する大切な工程です。それぞれの特徴について、以下に詳しく見ていきましょう。
とび工事 – 高所作業での基盤づくり
とび工事は、足場を設置して作業空間を確保する工事のこと。作業員が安全かつ効率的に高所で作業できる環境を整備するための必要不可欠な工程であり、そのため、適切な材料の選定や施工技術が求められ、厳しい基準に従って実施されます。足場の安定性はもちろん、高所での作業の安全性を確保するための仮設工事も含まれます。
鉄骨工事 – 強度を支える鋼材の設置
鉄骨工事は、鉄骨を用いて柱や梁を組み立て溶接や接合を行う、耐震性や耐久性をより強化する工事です。鉄筋工事や型枠工事と異なり、鉄骨工事は単独で躯体を造ることが可能です。柱がない大空間を演出することもできるので、デザイン性の高い工事を行う際に用いられます。
鉄筋工事 – 建物の骨組みを構築する工事
躯体の骨格を形成する工事である鉄筋工事は、設計図に基づいて鉄筋を配置し、必要に応じた現場での調整も行います。工事全体の品質が左右されるため精密な計測や作業が求められ、設計図や仕様書に基づいて正確に施工される必要があります。鉄筋の配置や加工には厳格な基準があり、新工法やJISに即しているかを確認しなければなりません。
鉄筋は、施工中にコンクリートと一体化されることで、引っ張り強度を向上させ、地震などの外的な力に対する耐性を高めます。
型枠工事 – コンクリート構造の枠を形成
型枠工事は、コンクリート構造物を形成するための重要な工程です。この工程では、コンクリートを流し込むための枠を設置します。躯体工事の一環として行われる型枠工事では、まず設計図に基づいて型枠を組み立て、その後コンクリートを注入します。
型枠がしっかりと固定されていない場合、コンクリートが流れてしまったり、形状が崩れたりする可能性があるため、正確な作業が必要です。型枠は建物の形状を決定づけるため、適切な品質が求められます。施工完了後、コンクリートが硬化し型枠を外すことで、建物の躯体が完成します。この工程は、躯体工事全体の耐久性や強度に直接影響を与えるため、非常に重要です。
コンクリート圧送工事 – コンクリート流し込み
コンクリート圧送工事は、高圧でコンクリートを流し込む工事です。型枠が設計図通りの寸法になっていることや、型枠が変形しないようにしっかりとサポートされていることが重要となります。
また、コンクリートの適切な混合比や添加剤の使用が強度や耐久性に直結するため、流し込むコンクリートの品質管理も大切です。コンクリートの流し込むスピードと量を調整しながら、全体の均一性を保ちつつ行われます。
さらに「バイブレーター」と呼ばれる機材を使い、型枠に流し込んだ生コンクリートに気泡が発生しないように型枠の隅までまんべんなく行き渡らせ、コンクリートの表面をコテなどを使ってきれいにならします。流し込んだコンクリートが固まると、型枠を外すことが可能になります。
躯体工事の重要性
躯体工事は、建物の基本構造を形成する重要な工程です。この過程をきちんと行うことで、安全かつ耐久性のある建物が実現します。 躯体工事は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造において特に重要であり、建物の強度や安定性を確保するために必要な作業です。型枠工事や鉄筋工事、コンクリート圧送工事など、一連のプロセスが連携して、躯体が構築されます。これにより、建物が外的な力に対しても耐え得ることが可能となります。
また、躯体工事はエネルギー効率や使用素材にも影響を与えるため、設計段階から慎重に計画されるべきです。
まとめ:躯体と工事の基本を押さえて建築を理解しよう
家を建てる際には、建物の主要な構造部分であり耐久性や安全性を担保する役割を果たす「躯体」が重要です。躯体の種類や躯体工事の基本を押さえておき理解を深めておくことで、より理想に近い建築物の構築を実現させることができるでしょう。
主な構造形式には、木造、S造(鉄骨造)、RC造(鉄筋コンクリート造)、SRC造(鉄筋鉄骨コンクリート造)があり、そのメリット・デメリットを理解しておくことも大切です。躯体工事にはいくつかの種類があり、各工程は建物の安全性と品質を確保するために不可欠。概要を知っておくだけでも、目指す建築物への理解が深まり、より納得した建築物を完成させることができるでしょう。