リフォームによる用途変更「コンバージョン」とは?確認申請が必要なケースも

こんにちは!クジラ株式会社の片山です!
![]() | Writer 片山飛翔 デザイナーWORKS バランスの取れた色彩感覚と暮らしやすさを考えた動線計画で、女性からも人気のあるデザイナー。休日は料理とキャンプをするのが定番です。 CREATOR’s STORY|片山 飛翔 |
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最近では、少子高齢化や都市構造の変化により、使われなくなった建物が各地で増えつつあります。そういった「空きスペース」に新たな命を吹き込む方法として注目されているのが、「コンバージョン」と呼ばれるリフォーム手法です。単なる内装変更ではなく、建物の用途自体をガラリと変える方法です。
目次
コンバージョンとは
コンバージョンとは、既存の建物の「用途」を変更するリフォームのことを指します。たとえば、オフィスビルを住宅に改修したり、倉庫を店舗にしたりと、建物の機能そのものを変える点が特徴です。採算が悪化した物件の再生や、地域ニーズの変化に対応する有効な手段として近年注目されており、「遊休不動産」の有効活用や資産価値の向上につながるケースも増えています。
なお、単なる改修やリノベーションとは異なり、用途変更を伴うコンバージョンでは、建築基準法に基づいた確認申請などの手続きが必要になる場合があります。安全性や法規制への対応も含め、専門的な視点での検討が求められます。
コンバージョンの定義
コンバージョンとは、既存の建物の用途をまったく別の用途に変更することを指します。単なるリフォームやリノベーションとは異なり、建物の使い方そのものを変える点が大きな特徴です。
たとえば、オフィスビルをマンションに、倉庫を店舗に改修するといったケースがこれにあたります。
構造躯体など再利用可能な部分はそのまま活かすことが多く、建て替えに比べてコストや工期を抑えやすいというメリットも。
さらに、既存ストックを活用するため、環境への負荷が少ないサステナブルな建築手法としても注目を集めています。空き家や使われなくなった建物を再生し、新たな価値を創出する手段として、今後ますます広がりを見せていくでしょう。
リフォーム・リノベーションとの違い
コンバージョンとリフォーム、リノベーションは、いずれも既存の建物に手を加える点では共通していますが、その目的や工事の規模・内容には明確な違いがあります。
まず、リフォームは老朽化した設備や内装などを、新築時の状態に近づける「原状回復」が目的。比較的小規模な修繕が中心で、住まいの快適さを維持するための日常的なメンテナンスに位置づけられます。
一方で、リノベーションは建物の性能や価値を向上させるための大規模な改修を指し、間取りの変更や機能の刷新などを伴うことも少なくありません。既存の枠組みを活かしつつ、新しいライフスタイルに合わせた空間づくりが可能です。
そしてコンバージョンは、このリノベーションの一種でありながら、用途自体を変更するという点が特徴的です。
たとえば、オフィスビルをマンションに、倉庫をカフェにするなど、建物の使い方そのものを転換する改修工事が該当します。構造を活かしつつ新たな役割を与えることで、建物の再生と地域の活性化を同時に実現できる手法として注目されています。
用途変更時に確認申請が必要な場合
建築物の用途を変更する際には、変更後の用途や規模に応じて、建築確認申請が必要になる場合があります。これは、建築基準法に基づき、建物の安全性や周辺環境との調和を確保することを目的としています。
とくに注意が必要なのは、不特定多数の人が利用する特殊建築物(たとえば飲食店、ホテル、病院、学校など)への用途変更や、一定以上の規模の改修を伴う場合です。一般的には、変更する部分の床面積が200平方メートルを超えるかどうかが、一つの判断基準となります。
なお、似た用途への変更で、構造や避難経路に大きな影響がないケースでは、確認申請が不要となることもあります。
ただし、実際に申請が必要かどうかは個別の状況によって異なるため、事前に自治体や建築士などの専門家に相談することが望ましいでしょう。
特殊建築物への変更
特殊建築物とは、学校や病院、劇場、ホテル、百貨店、工場など、不特定多数の人が利用する公共性の高い建物のことを指します。こうした建物は、多くの人の出入りがあるため、一般の住宅や事務所に比べて安全性や避難経路の確保といった面で、より厳しい基準が求められます。
このため、既存の建物を特殊建築物へと用途変更し、その用途に供する部分の床面積が200平方メートルを超える場合には、建築基準法に基づき確認申請の手続きが必要となります。これは、利用者が安心して施設を利用できるよう、建物の構造や設備が法的基準を満たしているかどうかを事前に確認するための制度です。
類似用途に該当しない場合
用途変更にあたっては、すべてのケースで確認申請が必要になるわけではありません。変更前後の用途が、建築基準法で定める「類似用途」に該当する場合は、確認申請が不要となることがあります。
ただし、この類似用途に該当しない場合には、原則として確認申請が必要です。
たとえば、これまで店舗として使われていた建物を飲食店として使う場合や、工場や倉庫を飲食店、住宅などに用途変更する場合は、類似用途とみなされない可能性があります。
こうしたケースでは、事前に建築士や自治体の建築指導課など、専門家に相談し、確認申請が必要かどうかをしっかりと判断することが大切です。誤って申請を行わずに工事を進めると、後々是正措置が求められることもあるため、注意が必要です。
用途変更する部分の面積
建築基準法では、用途変更を行う部分の面積によって、建築確認申請の必要性が判断されます。2019年6月25日の法改正により、特殊建築物への用途変更の場合、その用途に供する部分の床面積の合計が200平方メートルを超えるときに確認申請が必要と定められました。以前は100平方メートル超で申請が必要でしたが、この基準が見直されています。
ただし、確認申請が不要となる面積の場合でも、建築基準法の各種規定には適合させる必要があるため、用途変更の際は注意が必要です。安全性や法令遵守の観点から、専門家への相談や事前の検討が推奨されます。
建築基準法の改正と緩和
近年の建築基準法の改正により、用途変更に関する規制が緩和されています。特に2019年の改正では、用途変更時に建築確認申請が必要となる床面積の基準が、従来の100平方メートル超から200平方メートル超へ引き上げられました。これにより、比較的小規模な建築物では、用途変更の際の手続きが簡素化されるケースが増えています。
また、戸建て住宅から福祉施設への用途変更においても、一定の条件を満たせば耐火建築物とする義務が免除されるなど、安全基準の合理化が進められています。これらの緩和措置は、既存の建築ストックを有効活用しやすくすることを目的としており、建物の再生や地域活性化に寄与しています。
建築基準法改正による変更点
2019年6月25日に建築基準法が改正され、用途変更に関わる規制も見直されました。主な変更点としては、用途変更する部分の面積が200平方メートル以下の場合、原則として建築確認申請が不要となったことが挙げられます。
さらに、延べ面積200平方メートル未満かつ3階建て以下の建物を特殊建築物へ用途変更する際には、一定の条件を満たせば、建物全体を耐火建築物とする義務が免除されるようになりました。
これらの改正は、既存の建築ストックを有効に活用しやすくすることを目的としており、用途変更の手続きやコスト面の負担軽減に繋がっています。
戸建て住宅の用途変更に関する緩和措置
2019年の建築基準法改正により、戸建て住宅の用途変更に関する規制が緩和されました。特に、延べ面積200平方メートル未満かつ3階建て以下の戸建て住宅を福祉施設などに用途変更する場合、一定の避難確保措置を講じることを条件に、耐火建築物とする義務が不要となりました。
また、用途変更に伴い建築確認申請が必要となる規模の基準も見直され、従来の100平方メートル超から200平方メートル超へ引き上げられています。この改正により、空き家となっている戸建て住宅を含む既存建築物の活用が促進され、多様な用途への転用が期待されています。
用途変更リノベーションの利点
用途変更を伴うリノベーションには、建物の資産価値を高めたり、新たな収益を生み出したり、安全性を向上させたりといったメリットがあります。
例えば、使われなくなった建物を店舗や宿泊施設に転用することで、不動産としての価値が向上し、賃貸や売却による収益機会を生み出せます。
また、用途変更に合わせた改修によって、建物の耐震性や防火性能を強化することも可能です。これにより、法規制に適合した安心・安全な建物へと再生できるため、利用者にとっても安心感が高まります。
不動産の価値向上
既存の建物の用途を変更することで、不動産の価値が向上します。用途変更やコンバージョンを通じて、古くなった建物に新しい機能や魅力を付加することで、より多くの人に利用されやすくなり、賃料や売却価格の上昇が期待できます。例えば、需要が低下したオフィスを住宅や宿泊施設に転用すれば、その地域のニーズに合った用途となり、不動産としての競争力が高まります。
また、耐震性や省エネ性能の向上といった安全性や快適性の改善も、価値向上に寄与します。結果として、不動産の資産価値が増し、オーナーにとっての収益機会が拡大するのです。
新たな収益創出につながる
用途変更を伴うリノベーションは、建物の現在の用途を変えることで、新たな収益を生み出す可能性を秘めています。
たとえば、需要が低下したオフィスビルをホテルやマンションに転用したり、空き家を店舗や福祉施設として活用したりするケースが考えられます。こうした時代や地域のニーズに即した用途変更によって、稼働率や収益性の向上が期待できるほか、既存の建物を活用するため、建て替えに比べてコストや工期を抑えられる点も大きなメリットです。
法規制適合による安全性向上
建物の用途を変更する際には、新しい用途に応じて建築基準法や関連法規への適合が求められます。これらの適合改修を行うことで、耐震性や防火性能、設備の安全性が向上し、利用者が安心して安全に過ごせる空間が実現します。
とくに、不特定多数の人が利用する特殊建築物へ用途変更する場合は、より厳しい安全基準が適用されるため、徹底した対策が必要です。
用途変更手続きの流れ
用途変更の手続きは、まず計画と事前調査から始まります。建物の現状を詳しく調査し、新しい用途に合わせた設計を行います。この段階では、建築基準法だけでなく、消防法など関連する法令への適合性も確認することが重要です。既存不適格建築物の場合は、現行法に適合させるための改修が必要となるケースもあります。
次に、確認申請が必要な場合は、申請書や設計図面を作成して行政機関または指定確認検査機関に提出します。審査の過程で指摘事項があれば修正を行い、承認されると建築許可が交付されます。許可が下りた後に工事を開始し、完了後には工事完了届を提出して手続きが終了します。
計画と事前の調査
用途変更リノベーションの最初のステップは、事前の調査と計画です。まず、建物の現状を正確に把握し、どのような用途に変更するのか具体的な計画を立てます。その際、変更後の用途が建築基準法や消防法など、各種法令に適合しているかどうかを確認することが重要です。
とくに、特殊建築物への変更や、200平方メートルを超える用途変更の場合は、建築確認申請が必要になる可能性が高いため、早い段階での確認が求められます。また、既存建物の図面や完了検査済証の有無などをあらかじめ確認しておくと、その後の手続きがスムーズに進みます。
完了後は完了報告書を提出
リフォーム工事が完了したら、確認申請を行った行政庁または指定確認検査機関に対して、完了報告書(工事完了届)を提出します。ただし、用途変更に伴う工事においては、新築時のように完了検査が義務付けられているわけではありません。そのため、工事が設計図や申請内容に沿って適切に行われたかどうかは、自主的に確認する必要があります。
なお、工事完了届は、工事が完了してから4日以内に提出する必要があるため、提出のタイミングにも注意が必要です。
審査後に建築許可を取得
確認申請を提出し、審査の結果、建築基準法や関連法令に適合していると認められると、「確認済証」が交付されます。これは、計画内容が法令に適合していることを証明する書類であり、この交付を受けることで、用途変更に伴う建築工事に着工することが可能になります。
なお、審査の過程で設計内容に不備や不足がある場合は、修正や補足を求められることもあります。スムーズに工事へ進めるよう、あらかじめ法規への適合性をしっかり確認し、丁寧な書類作成を行うことが大切です。
工事の実施と完了手続き
確認申請が許可され、「確認済証」が交付されたら、いよいよ工事に着工することができます。工事が完了したあとは、建築主事(または指定確認検査機関)へ工事完了届を提出します。これは、確認申請を行った場合に必要となる手続きで、工事が適切に完了したことを報告するものです。
また、用途変更の内容によっては、消防法やその他の関連法令に基づく手続きや検査が別途必要になる場合があります。たとえば、飲食店や福祉施設など、不特定多数の人が利用する用途に変更する際には、防火設備や避難経路の確認などが求められることもあるため、事前に関係機関への確認を行っておくと安心です。
用途変更における注意点
用途変更を行う際には、いくつかの重要な注意点があります。まず、建築基準法だけでなく、その他の関連法令にも適合させる必要があります。たとえば、飲食店に変更する場合は食品衛生法、ホテルであれば旅館業法に基づく許可が必要になります。
また、都市計画法や各自治体の条例によって、用途の変更が制限されているケースもあるため、事前の確認が欠かせません。
さらに注意すべきなのが、「既存不適格建築物」の存在です。これは、建築当時の法令には適合していたものの、その後の法改正により現行の建築基準法に適合しなくなった建物を指します。こうした建物の場合、用途変更にあたっては現行法に適合させるための改修工事が求められることがあります。用途変更の計画を進める際には、建築士などの専門家に相談し、法令や構造の面から丁寧な事前調査と計画を行うことが重要です。
既存不適格建築物の場合
建築時には適法だったものの、その後の法改正などによって現行の建築基準法に適合しなくなった建物は、「既存不適格建築物」と呼ばれます。用途変更を行う際、この既存不適格な部分については、必要に応じて現行法に適合させるための改修工事が求められることがあります。
とくに建築確認申請が必要なケースでは、申請前に「既存不適格調書」を作成し、その建物が建築当時には適法だったことを確認する必要があります。そのため、事前の調査や図面・記録の収集が非常に重要です。
また、用途変更の規模や内容によっては、現行法への適合だけでなく、構造の安全性の検証や、消防法など他の法令への適合も求められる場合があります。安全性と法令遵守を確保するためにも、専門家と連携しながら慎重に進めることが大切です。
建築基準法以外の法令
用途変更を伴うリノベーションでは、建築基準法だけでなく、さまざまな関連法令への適合が求められます。
たとえば、消防法や都市計画法、さらには各自治体の条例なども遵守する必要があります。
さらに、変更後の用途によっては、個別の法令に基づく許可や手続きが必要になるケースもあります。たとえば、飲食店に変更する場合は食品衛生法、ホテルなどの宿泊施設であれば旅館業法に基づく営業許可が必要です。
こうした手続きは専門的な知識を要することが多いため、行政書士などの専門家に相談したり、代行を依頼したりするのも一つの方法です。リノベーションを円滑に進めるためには、建築基準法に加えて関係する各種法令への適合状況を丁寧に確認し、計画段階からしっかりと準備することが重要です。
まとめ
コンバージョンとは、用途変更を伴うリノベーション。使われなくなった建物に新たな命を吹き込み、資産価値や収益性を高める有効な手段です。法令への適合や手続きには慎重な対応が求められますが、適切な計画と専門家の力を借りることで、建物の可能性は大きく広がります。時代のニーズに応じた柔軟な発想で、建築ストックを活かす選択肢として、今後ますます注目されていくことでしょう。