「お客さんが気遣わない“家バル”カウンター」の秘密【KUJIRAメソッド⑪】

こんにちは、クジラ株式会社の三輪です。
![]() | Writer 三輪海斗 ディレクターWORKS 2018年に新卒入社後、住宅・店舗・オフィスなど幅広く担当。住宅ローンの工面など難しい状況でもお客様に寄り添ってサポート。 |
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前回は「光と風がめぐる間取り」についてお話ししましたが、同じ物件の中で、もうひとつ大きなテーマになったのが、“キッチンまわりの“空気感”です。
今回ご紹介するのは、「招かれた方も気をつかわないカウンタースペース」のつくり方について。お酒を片手に料理を楽しみながら、友人たちとゆるく会話が交差していく。そんな“家バル”のような空気を、どのように設計でつくっていったのかをお話しします。
目次
オープンキッチン+カウンターがつくる家バル
この住まいのキッチンは、フルオープンタイプ。リビング・ダイニングに向かって、カウンターを造作しています。オープンキッチンにカウンターを取り付けるのは、実は施工的にはなかなか難しい仕事です。
「どこで荷重を受けるか」「どこまで跳ね出せるか」「どの高さ・奥行きが一番使いやすいか」。設計・施工管理と何度も打ち合わせを重ねながら、構造的な安定と使い勝手のちょうどいいバランスを探りました。

カウンターの役割は、大きく三つあります。
1.キッチン側とリビング側を“つなぐ”ステージ
2.手元をさりげなく隠しつつ、料理を受け渡す“カウンター席”
3.立ち飲みにも、軽食にも、作業にも使える“第三のテーブル”
壁ではなく、カウンターで仕切ることで、
「キッチンの中」と「リビングの外」が、気持ちの上ではひとつながりの場所になります。
「料理をしながら飲みたい」から逆算する
このカウンタースペースの起点になったのは、旦那様のこんな一言でした。
「料理をしながらお酒を飲んで、キッチンから友人に料理を出して、そのままお喋りも楽しみたいんです。」
つまり、“キッチンに立つ人が主役”になる場所が欲しい、ということ。
そこで、
・キッチン側からは、料理をサーブしやすい高さ・奥行きに
・リビング側からは、腰掛けやすく、ドリンクを置きやすい寸法に
という両側の使い方を想定して、カウンターのサイズを決めていきました。さらに大事な要素が、賃貸時代から使っていた「畳ベンチ」です。「できれば、この畳ベンチを新居でも使いたい」というご要望があり、このベンチが自然に収まるように、カウンターの寸法・位置を微調整しました。
“新しくつくるもの”だけで構成するのではなく、“すでに暮らしの一部になっているもの”をどう生かすか。それもまた、KUJIRAの設計で大切にしている視点です。


照明と素材でつくる「気をつかわなくていい」空気
空間の“空気感”を決めるのは、間取りだけではありません。このキッチンエリアでは、照明と素材感もこだわって整えています。

・天井にはスポットライトを配置し、必要な場所だけをそっと照らす
・カウンター周りには間接照明を仕込み、夜は柔らかい光で包み込む
・キッチン背面はクロスではなく塗装仕上げにし、少しムラのある質感で、バーのような落ち着いた雰囲気を演出
・カップボードも既製品ではなく造作にすることで、全体のトーンやラインを空間に合わせてコントロール
これらの積み重ねによって、明るすぎず、暗すぎない、ちょうどいい“半分プライベートな場所”が生まれています。
ここで大切にしたかったのは、「招かれた友人が、かしこまらなくていいこと」。
・ダイニングテーブルで正面向かい合うと、会話が“ちゃんとしなきゃ”になる
・カウンターで斜めに座ると、会話がふっと軽くなる
この差を、照明とレイアウトでさりげなく後押ししています。
「全員でひとつの会話をしなくていい」という贅沢
お引き渡し後、施主の衣川さんから、こんなお話を聞きました。
「友人を招いて食事をしたとき、みんなで同じ話題を話すんじゃなくて、カウンターの隣同士で別々の会話が始まっていて。それぞれが気をつかわずに過ごせる感じがすごく良かったんです。
これは、この家のキッチンが「中心」だけれど「支配的ではない」ことの証拠だと感じました。
・ひとつのテーブルで、全員が同じ話題を共有しなくていい
・それぞれのペアやグループが、それぞれのペースで会話していい
・キッチンに立つ人も、席に座る人も、同じ温度でその場にいられる
そんな“ゆるやかな並列”が許される空間は、招かれた側にとっても、実はとても居心地のいい場所です。
「ちゃんと盛り上げなきゃ」「ホストに合わせなきゃ」といったプレッシャーではなく、その場そのときの距離感のままに過ごしていい。
この“気をつかわなくていい感じ”こそ、衣川さんご夫妻のライフスタイルと、今回のカウンターデザインがぴったり重なった部分だと思っています。
キッチンとリビング、ホストとゲスト、仕事モードとくつろぎモード。そのあいだに、カウンターという“ちいさな場”をひとつ挟むことで、空間の空気は大きく変わります。
「料理をしながら飲みたい」「友人に気をつかわせたくない」そんな願いを、寸法と素材と照明で具体的な形にしていくこと。それもまた、KUJIRAの“メソッド”です。





