リノベーションの固定資産税が上がる・下がるケースをわかりやすく解説
こんにちは!クジラ株式会社の山根です!
Writer 山根広大 ディレクターWORKS 宅地建物取引士。大学で建築を学び、人の暮らしにより幅広く関わりたいと思い不動産業界を志望。2019年にクジラ株式会社に入社。不動産・建築の両面からワンストップでリノベーションをサポートするのが得意。 |
自宅や所有物件をリノベーションすると、固定資産税が上がるのではないかと心配する方は多いでしょう。実際、リノベーションの内容次第で税額が増える場合もあれば、まったく変わらないケースや、逆に減税される場合もあります。
この記事では、固定資産税がどのように計算され、リノベーションがどの程度その評価額に影響するのかを具体的に解説します。リノベーションを検討する際に、費用だけでなく税額の変動も予測しておくことで、より賢く計画を立てましょう。
目次
固定資産税の基本概要
固定資産税は、不動産(土地や建物)を所有している人に毎年課される税金です。税額は各自治体が決定し、基本的には「固定資産評価額」に基づいて計算されます。評価額は、建物の構造や年数、用途に応じて自治体が評価し、原則として3年に一度見直されるため、経年劣化や改修工事の影響を受けます。
計算式は「固定資産税=固定資産評価額×1.4%」が一般的ですが、自治体ごとに税率が異なる場合もあるでしょう。
また、耐震・断熱性能を向上させるようなリノベーションに対しては、特定の減税制度が適用されることもあります。リノベーション後の税額を予測するには、こうした税制優遇措置も考慮に入れる必要があるのです。
リノベーション後の固定資産税の変動ポイント
リノベーションを行うと、その内容によって建物の価値が上がったり、特定の税制優遇を受けられる可能性があります。一方で、すべてのリノベーションが固定資産税に影響するわけではありません。ここでは、税額が変わるケースと変わらないケースについて詳しく見ていきましょう。
建築確認申請書が必要な場合
リノベーションで大規模な工事を行う際は、建築確認申請が必要になるケースがあります。たとえば、床面積を増築したり、建物の構造部分を大きく変更したりする工事です。こうした工事は、建物の評価額を引き上げるため、固定資産税が上がる可能性が高いでしょう。
具体例としては、以下のようなリノベーションが該当します。
- ・増築:部屋を増やし、床面積が広がった場合
- ・構造変更:一部の壁を取り払って間取りを変更し、建物全体の価値が上がった場合
- ・屋根や外壁の全面改修:外観や耐久性が向上したと自治体が判断するケース
これらの工事を行った場合、完成後に自治体が再評価を行い、新しい固定資産評価額が決定されます。評価額が上がると、その分税額も増えるため、事前に見積もりを取っておくと安心でしょう。
固定資産税が変わらないケースもある
リノベーションを行ったとしても、必ずしも固定資産税が上がるとは限りません。たとえば、経年劣化した設備や内装の原状回復にとどまる工事では、評価額は上がらないでしょう。
具体的には以下のような工事です。
- ・内装の張り替え(壁紙、床材などの交換)
- ・キッチンや浴室のリフォーム(位置や大きさを変えず、同等品に交換する場合)
- ・屋根の一部補修(全体の交換ではなく、部分的な修理)
このような工事では、建物の価値が「上がる」わけではなく、「元に戻る」と見なされます。そのため、固定資産税もこれまでどおりで変わらないことが多いです。ただし、修理や更新が完了してから再評価までのタイミングによっては、何らかの影響が出ることもありますので、気になる方は事前に自治体に確認するとよいですね。
必要最低限のリノベーション
建物の安全性や基本性能を維持するための最低限のリノベーションも、固定資産税には大きく影響しません。たとえば、耐震補強や断熱性能を向上させる工事は、評価額に反映されないか、むしろ減税対象となることが多いでしょう。これは、これらの工事が建物の価値向上というよりも、住まいの安心・安全を目的としているからです。
- ・耐震補強:耐震基準を満たすための補強工事
- ・断熱工事:エコ住宅化に向けた断熱材の追加
また、こうした工事は自治体や国からの補助金を受けられるケースもあります。リノベーションを計画する際は、あわせて補助金制度を調べておくと良いでしょう。エコ住宅に関する税制優遇措置を受ければ、固定資産税が一定期間減額されることもあります。
さらに、施工業者によっては、補助金の申請手続きをサポートしてくれるところもありますので、気軽に相談してみると良いでしょう。これにより、経済的な負担を軽減できる可能性があります。
小規模なリノベーション
小規模なリノベーションも、通常は固定資産税の評価にほとんど影響しません。たとえば、以下のような部分的な改修が該当します。
- ・トイレの交換:位置を変えずに便器のみを新しいものに交換
- ・照明の変更:LEDに交換するなどのエネルギー効率改善
- ・バルコニーの設置:簡易なウッドデッキを追加する程度
このような工事は、建物全体の価値を大きく左右しないため、評価額も変わらないケースが多いでしょう。また、小規模なリノベーションは建築確認申請も不要で、工事後の再評価の対象になりにくいため、税額への影響はごくわずかです。
ただし、これらの小規模な改修でも、全体の居住性や利便性を向上させることができるため、将来的に大規模なリノベーションを考える際の足がかりになるかもしれません。定期的に小さな改修を行うことで、長期的には快適な住環境を維持することにつながります。
リノベーション後の固定資産税が上がる可能性があるケース
リノベーションを行った結果、建物の評価額が上がり、それに伴って固定資産税が増えるケースもあります。特に、物理的な変更や法律上の変更を伴う大規模なリノベーションでは、税額の上昇が見込まれるでしょう。ここでは、税額が上がりやすい具体的なリノベーション例を紹介します。
床面積の増加
床面積が増加するリノベーションでは、固定資産税が上がる可能性が高いです。たとえば、リビングを広げるための増築や、屋根裏部屋を居住スペースとして使えるようにする工事が該当します。建物の価値は、面積が大きいほど評価が高くなる傾向があるため、税額に直接影響するでしょう。
具体例としては、以下のような工事が該当します。
- ・1階の一部を増築し、部屋を追加する
- ・既存のガレージを居室としてリフォームする
- ・バルコニーを取り込んで部屋を拡張する
このように、面積の拡大が伴うリノベーションは、工事完了後に自治体による再評価が行われ、新たな評価額が設定されます。税額の増加が気になる場合、工事前にどれだけの増築が税額に影響するかを自治体に相談しておくとよいですね。
構造に関わる大幅なリノベーション
建物の構造に影響を与えるリノベーションも、評価額を引き上げる要因となります。たとえば、木造から鉄骨造への変更や、柱や梁の位置を移動するような大幅な改修が該当します。こうした工事によって、建物の耐久性や安全性が向上するため、結果的に建物の価値が上がるのです。
具体例としては、以下のようなリノベーションが該当します。
- ・一戸建ての木造部分を鉄骨に変更する
- ・大規模な間取り変更で壁や柱の位置を調整する
- ・古い建物をフルリノベーションし、構造を強化する
大幅な構造変更は、リノベーション後に固定資産税の再評価が行われる可能性が非常に高いです。税額が大幅に上がることを避けたい場合、施工業者と相談し、必要最小限の工事で目的を達成する方法を検討するのも良いでしょう。
用途変更
建物の用途変更も、固定資産税の増加要因になります。例えば、住宅を店舗や事務所に変更する場合、建物の用途が「住宅用」から「商業用」に変わります。商業用不動産の評価額は住宅よりも高く設定されることが多いため、税額が上がりやすいでしょう。
具体例としては、以下のような場合が該当します。
- ・一戸建てをカフェに改装する
- ・自宅の一部を事務所やレンタルスペースとして使用する
- ・賃貸アパートの一室を店舗にする
用途変更を検討する際は、税額がどれほど変わるのかを事前に把握することが重要です。さらに、自治体により用途ごとの税率が異なる場合もあるため、確認しておくと良いでしょう。
スケルトンリノベーション
スケルトンリノベーションとは、建物の内装を全て取り払って骨組みだけを残し、内部を一から作り直す工事を指します。このような大規模な工事では、内装が一新されるため、建物全体の価値が向上し、固定資産税が上がるケースが多いです。
具体例としては、以下のようなリノベーションが該当します。
- ・築年数の古いマンションの内部を全て解体し、新築同様にする
- ・一戸建ての内装を取り壊して、間取りから全て作り直す
スケルトンリノベーションは、実質的に「新築同様」の状態にするため、自治体の評価も厳しくなりがちです。税額の上昇が懸念される場合、施工前に見積もりを出してもらい、リスクを把握しておくとよいですね。
リノベーション後の固定資産税が下がる可能性のあるケース
一方で、リノベーションによって固定資産税が下がるケースもあります。これは、耐震や省エネ、バリアフリーといった社会的価値の高い改修が行われた場合です。こうした工事では、税制優遇が適用されるため、一定期間の減税が受けられることがあります。
これらの優遇措置は、政府や自治体が住宅の安全性や環境性能の向上を促進するために用意しています。特に省エネや耐震対応の工事は、国の補助金と組み合わせることで大幅なコストダウンが見込めるでしょう。事前の調査と申請準備を入念に行い、タイミングを逃さないことが重要です。
耐震改修工事を目的としたリノベーション
地震への備えとして耐震改修を行う場合、固定資産税が一時的に減額されることがあります。特に、1981年以前に建築された旧耐震基準の住宅を対象にした改修では、自治体からの助成金が出ることもあるでしょう。
具体例としては、以下のようなリノベーションが該当します。
- ・耐震壁や耐震ブレースの設置
- ・基礎部分の補強工事
- ・屋根の軽量化
耐震改修による減税措置は、自治体ごとに異なりますが、一定期間の固定資産税が半額になる制度などが代表的です。こうした制度を活用することで、負担を軽減できるでしょう。
また、耐震改修の効果は資産価値の維持にも寄与するため、長期的に見ても有益な選択です。改修に伴う補助金を利用できる場合もあるため、早めの計画が肝心ですね。
より詳細が気になる方はこちらも確認してみましょう。
耐震耐修工事をした場合(住宅耐震耐修特別控除)
省エネ改修工事を目的としたリノベーション
省エネ改修も、固定資産税の減額対象となるケースがあります。たとえば、高性能な断熱材を用いたり、省エネ性能の高い窓を設置する工事がこれに当たります。こうした工事は、エネルギー消費の削減を目的としており、税制優遇が受けられることが多いのです。
具体例としては、以下のような工事が該当します。
- ・窓を断熱性能の高いものに交換する
- ・屋根や外壁に断熱材を追加する
- ・太陽光発電システムを設置する
省エネ改修に対する減税制度は「先進的窓リノベ2024事業」などの補助金とも併用できる場合があります。事前に自治体のホームページで詳細を確認すると良いでしょう。
また、省エネ改修には自治体ごとの独自の助成制度も存在するため、地域の条件を踏まえた調査も欠かせません。減税措置の対象期間が決まっていることも多いため、申請は早めに進めるのが得策です。
より詳細が気になる方はこちらも確認してみましょう。
省エネ改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)
バリアフリー改修工事を目的としたリノベーション
バリアフリー改修も、固定資産税の減額対象になることが多いです。高齢者や障がい者が暮らしやすい環境を整えるための改修は、社会的意義が高いとされ、各種税制優遇が適用されます。
具体例としては、以下のようなリノベーションが該当します。
- ・段差の解消
- ・手すりの設置
- ・バリアフリー対応の浴室への改修
バリアフリー工事は「介護・バリアフリーリフォーム補助金」などの支援制度も利用できる場合があります。減税措置と合わせて活用することで、工事後の税負担を抑えることができるでしょう。
また、バリアフリー工事は長期優良住宅化リフォーム推進事業など、国の他の支援事業とも併用できる場合があるため、多角的なサポートが期待できます。改修後の快適性も向上し、資産価値の維持にもつながりますね。
より詳細が気になる方はこちらも確認してみましょう。
バリアフリー改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)
ケース別の固定資産税変動の具体例
リノベーション後の固定資産税がどう変わるかは、工事の内容や建物の種別によって異なります。リフォーム内容が建物の価値を高める場合は税額が増え、逆に社会的なニーズに沿った改修は減税措置が適用されることもあります。ここでは、いくつかの具体的なケースについて解説します。
リノベーションで固定資産税はどれくらい変わる?
リノベーションの内容によって固定資産税が上がるかどうかは大きく異なります。たとえば、建物の一部を増築し面積が増えると、評価額の上昇により税額が増えることが多いですね。一方、耐震・省エネ改修のような工事では減税が期待できるでしょう。
税額が増える例
- ・延床面積が30㎡増えた場合、年間で1万~2万円ほどの増額
- ・内装や設備を高級品に替えたことで、5千~1万円程度の増額
税額が減る例
- ・耐震改修で数年間、固定資産税が半額に
- ・省エネ窓の設置により、年間の税額が3,000円減少
リノベーションによる税額変動の幅は工事内容や地域の評価基準によりますが、思った以上に負担が変わることがあるため、計画段階から税額シミュレーションを行っておくと安心です。
マンションと戸建てのリノベーション比較
マンションと戸建て住宅では、リノベーションによる固定資産税への影響に違いがあります。戸建ての場合、建物全体が評価対象となるため、大規模な工事ほど税額の変動が大きくなるでしょう。一方、マンションでは専有部分の工事が対象になるため、税額への影響は比較的小さいです。
マンションの例
- ・内装の張り替え程度では固定資産税はほとんど変わらない
- ・専有部分でのスケルトンリノベーションは税額が上がる可能性あり
戸建ての例
- ・庭の一部を増築してリビングにした場合、年間1~2万円程度の増額
- ・屋根を軽量化し耐震性能を高めると、減税措置が適用されることも
マンションの管理規約によっては工事内容が制限されるため、税額への影響も少ないことが多いです。それに対し、戸建て住宅は構造や用途を自由に変更できるため、リノベーションの計画次第で税負担に大きな違いが出ますね。
中古住宅リフォームの固定資産税
中古住宅を購入してリフォームする場合も、固定資産税に影響が出ることがあります。築年数が古い住宅は評価額が低く抑えられているため、大規模なリフォームを行うと評価額が上がり、結果として税額が増えることがあるのです。
税額増加のケース
- ・築30年以上の木造住宅をリノベーションし、内装を一新
- ・屋根や外壁を新しい素材に交換することで、税額が上がることも
減税のチャンス
- ・築25年以上の中古住宅で耐震改修を行えば、一定期間税額が半減する制度が適用されることがある
- ・省エネリフォームを行うことで、補助金と減税を併用することが可能も
中古住宅は購入価格が抑えられる一方で、リフォームの影響で税額が増えるリスクもあります。自治体の助成制度や減税制度をうまく活用することで、負担を軽減できるでしょう。
新築住宅とリノベーションの違い
新築住宅とリノベーションでは、固定資産税の評価方法が異なります。新築の場合、建物が完成した時点での評価額に基づいて税額が決定されますが、リノベーションは既存の評価額に工事内容を加味して再評価されます。
新築住宅の税額
- ・評価額が高く、固定資産税も初年度から高くなる傾向
- ・新築住宅の場合、3~5年間の税額軽減措置が適用される
リノベーション住宅の税額
- ・工事内容次第で評価額が変わり、増減が発生する
- ・一部の工事には減税措置が適用されるため、税負担を抑えることも可能
新築住宅の方が税負担が高くなる一方、リノベーションは工夫次第で税額をコントロールできる場合があります。既存住宅を再活用するリノベーションは、環境面のメリットも大きいですね。
リノベーション後の固定資産税確定までの流れ
リノベーションを行った後、固定資産税の確定までにはいくつかのステップがあります。まず、工事完了後に自治体へ必要な書類を提出し、評価の見直しが行われます。評価結果は翌年度の税額に反映されます。
- 1.工事完了の報告
工事が終わったら、自治体へ完了報告を行います。建築確認申請が必要な場合は、その証明書も提出します。
- 2.自治体の評価調査
専門の職員が建物を訪れ、工事内容を確認します。必要に応じて現地調査が行われるでしょう。
- 3.評価額の決定
調査結果をもとに、新たな評価額が決定されます。評価額の通知は通常、税額が反映される前年度末に送られます。
- 4.固定資産税の通知
新しい税額は翌年度の固定資産税通知書に記載され、自治体から送付されます。
このように、リノベーション後の税額確定には時間がかかることがあります。工事後すぐに税額が変わるわけではないため、計画を立てる際にはスケジュールにも注意が必要ですね。
まとめ:計画段階で自治体の助成制度や減税措置についてチェック
リノベーションによる固定資産税の変動は、工事内容や建物の種類によって異なります。床面積の増加や用途変更などで税額が増えるケースもあれば、耐震や省エネ改修によって減税されるケースもあります。税額への影響を抑えるためには、計画段階で自治体の助成制度や減税措置について確認しておくことが重要でしょう。
さらに、工事完了後の評価プロセスにも理解を深め、予算管理を徹底することで安心してリノベーションを進めることができるでしょう。
また、各種助成金制度は「先進的窓リノベ2024事業」や「給湯省エネ2024事業」など国の補助金とも併用できる場合があります。工事を依頼するリフォーム業者と相談し、申請手続きも含めたスケジュールを立てることが大切ですね。特に、補助金や減税は「早い者勝ち」の制度も多いため、工事開始前に必ず自治体の最新情報を確認しましょう。こうした準備が、長期的な税負担の最小化につながるでしょう。