制約を魅力に変えるLDK導入【KUJIRAメソッド⑥】

こんにちは、クジラ営業ディレクターの三輪です。
![]() | Writer 三輪海斗 ディレクターWORKS 2018年に新卒入社後、住宅・店舗・オフィスなど幅広く担当。住宅ローンの工面など難しい状況でもお客様に寄り添ってサポート。 |
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今日は、「制約」からはじまった松尾邸のLDKリノベーションの物語を、一緒に見ていきたいと思います。解体してみなければ分からない現場の“見えない線”を、いかに暮らしのなかで“居場所”へと昇華させたか――その過程が、僕たちのメソッドのひとつです。
目次
解体前には見えない制約がある
リノベーションでは、図面の上の美しいアイデアを遂行させるため、一度、解体して家の構造を確かめる必要があります。すると、想定外がおきることがしばしばあります。今回の松尾邸でも、解体が進むにつれて、構造的な制約が次々と姿を現しました。
まず、柱間の筋交いをブレス構造に変える案を考えていたのですが、強度面で許されず断念。さらに、小上がり部分は当初、開閉できる扉で仕切る案も立てていたものの、それも実現できなくなりました。
「できないもの」が明らかになるとき、多くの人はそこで案を削りはじめます。ですが、僕たちは、その“できない”を単なる障害とだけは見なさないことにします。
制約を縦糸・横糸に紡ぐデザイン
松尾邸で僕たちが選んだのは、「制約そのものを空間の構成要素として編むこと」。見せ方を変えることで、“あっても存在が軽やかな”場所をつくる方向へと舵を切りました。
◾️壁・筋交・開口を再構築する
壁をただ仕切りとして使うのではなく、開口や筋交を使って視線を導く。LDKに抜けをつくる開口、お子さんや猫ちゃんが楽しめるように考えた開口の位置、小物が置ける台――それらが、「見る/見られる」「閉ざす/開く」を絶妙なバランスでつくります。

◾️小上がりデスクの再定義
「仕切る」「隠す」ことを諦めた代わりに、そこを“見守る場所”“家族を感じる場所”としました。座っている子どもがLDKの気配を感じられ、ご主人がどこにいてもその存在を感じられるような位置関係。

◾️視線の重なりと距離感
LDKの中で、異なる場所にいても“お互いを感じることができる距離”を設けること。たとえば、小上がりに座ったとき、キャットウォークから見下ろしたとき、キッチンに立ったとき、それぞれの視線が途切れず重なり合う設計を重視しました。

このように設計が形をなしたあとで、暮らしの変化が少しずつ、でも確かに訪れます。小さなフォトスポットのような場所ができて、子どもたちが自然とそこへ集うようになりました。「この場所が好きだな」と思う瞬間が日常に生まれる。LDKの中で場所を移していても、互いの存在を感じられる――その“気配”が、ただ居るだけで心地いいものになっていくのです。
この松尾邸の経験から、僕たちが大切にしたいことを以下にまとめます:
・制約をまず「確かな事実」として受け入れる。
・そこから逆算するのではなく、そこを起点に「居場所」を編む。
・見せる・隠す・距離をつくる・重なりをつくる。視線と光と気配が交差する空間をデザインする。そして、暮らし始めてから“使われ方”が育つ余白を残す。
松尾邸のLDKは、デザインの華やかさよりも、使われ方の豊かさを教えてくれる空間となりました。制約は決してネガティブではない。むしろ、そこからしか生まれない個性と居心地があるのだと、改めて実感しています。

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