2025.07.29
最終更新日
2025.07.31
リノベーションのヒント

後付けも可能!リノベーションでの“24時間換気システム”について解説

24時間換気システム 換気口

こんにちは!クジラ株式会社の片山です!

Writer
片山飛翔
デザイナーWORKS
バランスの取れた色彩感覚と暮らしやすさを考えた動線計画で、女性からも人気のあるデザイナー。休日は料理とキャンプをするのが定番です。
CREATOR’s STORY|片山 飛翔

24時間換気システムとは、窓を開けることなく常に室内の空気をきれいに保てるシステムのこと。ここでは、リノフォーム・リノベーションを機に24時間換気システムの設置を検討されている方や、すでに設置されている方に向けて、その必要性やメリット、種類、後付けに関する情報などを詳しく解説します。

24時間換気システムとは

中古戸建のリノベーション施工事例
24時間換気システムは、建築基準法の改正により設置が義務付けられている、快適で健康的な室内環境を維持するための重要な設備です。ここでは、その基本的な仕組みと設置が義務付けられた背景について解説します。

常時稼働する換気設備のこと

24時間換気システムとは、文字通り24時間、機械によって住宅全体の空気を計画的に入れ替える換気設備です。窓を開ける換気とは異なり、常に一定量の新鮮な外気を室内に取り込み、汚れた室内の空気を排出することで、室内の空気環境を良好に保ちます。

このシステムは、高気密・高断熱化が進んだ現代の住宅において、十分な換気を確保し、快適な室内環境を維持するために不可欠な役割を果たしています。具体的には、1時間に家全体の空気の半分以上が入れ替わるような換気量が必要とされています。

法律によって設置が義務付けられている

24時間換気システムの設置は、2003年7月1日の建築基準法改正により義務付けられました。これは、住宅の高気密化に伴い、建材や家具から発生する化学物質によるシックハウス症候群が問題となったためです。シックハウス症候群は、めまいや頭痛などの健康被害を引き起こす可能性があり、これを予防するためには計画的な換気が不可欠とされました。

この法改正により、原則としてすべての建築物に機械換気設備の設置が義務付けられています。したがって、2003年以降に建てられた住宅には基本的に24時間換気システムが備わっていますが、それ以前の建物には設置されていない場合もあります。

リノベーションで24時間換気システムを設置するメリット

メリット デメリット
リフォーム時に24時間換気システムを設置することには、様々なメリットがあります。単に法律で義務付けられているからというだけでなく、日々の生活の質を向上させるために非常に有効な設備です。

室内の空気環境を改善する効果

24時間換気システムは、常に新鮮な外気を室内に取り込み、二酸化炭素や生活臭、建材から発生する化学物質などを含んだ室内の空気を排出します。これにより、室内の空気の淀みを解消し、きれいな空気環境を保つことが可能です。特に高気密な住宅では、自然換気だけでは十分な空気の入れ替えが難しいため、機械による計画的な換気が重要となります。換気によって空気中の汚染物質の濃度を低減し、快適な室内環境を実現できるのです。

シックハウス症候群の抑制・防止

シックハウス症候群は、建材や家具に含まれる化学物質などが原因で引き起こされる健康被害です。24時間換気システムは、これらの化学物質やアレルギーの原因となるダニ・ホコリなどを室外に排出することで、シックハウス症候群の発症リスクを低減する効果が期待できます

常に空気が循環し、有害物質が室内に蓄積するのを防ぐため、特に小さなお子さんやアレルギー体質の方がいるご家庭にとって、健康を守る上で非常に重要な役割を果たします。

建物の劣化を防ぐ効果

室内に湿気がこもると、壁の内部などで結露が発生しやすくなります。壁内結露は、建材の腐食やシロアリの発生につながり、建物の耐久性を低下させる原因となります。24時間換気システムは、室内の湿気を含んだ空気を排出し、新鮮な空気を取り込むことで、結露の発生を抑制し、建物の劣化を防ぐ効果も期待できます

結露の抑制・防止

高気密な住宅では、室外との温度差によって窓や壁に結露が発生しやすくなります。結露はカビやダニの発生の原因となり、建材の劣化や健康被害につながる可能性があります。24時間換気システムは、室内の湿った空気を排出し、空気の流れを作ることで、結露の発生を抑制・防止します。特に冬場の窓の結露にお悩みの場合、24時間換気システムを適切に稼働させることで、その改善が期待できます。

24時間換気システムの種類

24時間換気システムには、給気と排気の方法によっていくつかの種類があります。それぞれの特徴を理解し、ご自身の住まいやライフスタイルに合ったシステムを選ぶことが重要です。

換気方式は3種類。それぞれの特徴について

24時間換気システムは、主に「第一種換気」「第二種換気」「第三種換気」の3つの方式に分けられます。それぞれの方式には給気と排気の仕組みに違いがあり、メリット・デメリットが存在します。

第一種換気

第一種換気は、給気・排気ともに機械(換気扇など)で行う方式。機械で強制的に給排気を行うため、計画的で安定した換気が可能であり、空気の流れをコントロールしやすいという特徴があります。熱交換器を搭載することで、排気する空気から熱を回収し、取り込む外気に熱を移すことができるため、室温の変化を抑えながら換気できるメリットもあります。一方で、設備費用や電気代が他の方式に比べて高くなる傾向があります。

第二種換気

第二種換気は、給気のみを機械で行い、排気は自然に行う方式です。室内の気圧が外気より高くなる「正圧」の状態を作り出すため、外部からの汚染物質の侵入を防ぐのに効果的です。病院の手術室やクリーンルームなど、高い清浄度を求められる場所で採用されることが多いですが、湿気がこもりやすく結露しやすいというデメリットもあり、一般住宅で採用されることはほとんどありません

第三種換気

第三種換気は、給気は自然に行い、排気のみを機械で行う方式です。室内の気圧が外気より低くなる「負圧」の状態を作り出し、排気口から汚れた空気を強制的に排出し、給気口から新鮮な外気を自然に取り込みます。設備費用や電気代が比較的安く、コストを抑えられる点がメリットです。一方で、外気の影響を受けやすく、冬場は冷たい空気がそのまま入ってくるため寒さを感じやすいというデメリットや、給気量が外気の状況に左右されやすくコントロールが難しいという側面もあります。一般的な戸建て住宅やマンションで多く採用されている方式です

リノベーションで24時間換気システムを後付けする際の考慮点

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築年数の古い住宅やマンションなど、24時間換気システムが設置されていない建物にリフォームで後付けする場合、いくつかの考慮すべき点があります。

設置工事の内容

24時間換気システムを後付けする場合、設置する換気方式によって工事内容が異なります。一般的に、給気口や排気口を壁や天井に設ける必要があり、その際に壁に穴を開ける工事が発生することがあります。特に第一種換気システムなど、ダクト式のシステムを導入する場合は、各部屋にダクトを配管する工事が必要となり、比較的規模の大きな工事になる可能性があります。

一方、第三種換気システムなど、ダクトレスのタイプであれば、壁に本体を設置する比較的簡易な工事で済む場合もあります。どのようなシステムを導入するかによって工事の規模や費用が変わるため、事前に専門業者に相談し、見積もりを取ることが重要です。

マンションへの設置について

マンションに24時間換気システムを後付けする場合、戸建てとは異なる考慮点があります。マンションは集合住宅であるため、共用部分に関わる工事や、建物の構造に関わる工事には管理規約による制限がある場合があります。壁に穴を開ける必要がある場合は、事前に管理組合の許可が必要となることが一般的。

また、マンションの気密性は建物によって異なり、特に古いマンションでは気密性が低い場合があります。気密性が低いと、せっかく換気システムを設置しても、計画通りの空気の流れが作れず、十分な換気効果が得られない可能性があります。マンションに後付けを検討する際は、まず管理規約を確認し、専門業者に相談して、建物の構造や気密性を踏まえた上で最適なシステムや設置方法を検討することが重要です。

24時間換気システムの注意点

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24時間換気システムは快適な室内環境のために重要ですが、運用やメンテナンスにおいていくつかの注意点があります。これらを理解しておくことで、システムの効果を最大限に引き出し、快適な状態を維持できます。

騒音への対応策

24時間換気システムの稼働音を気にされる方もいますが、騒音の原因としては、換気風量に対して排気口の面積が小さい場合や、ダクトの途中に障害物がある場合、そしてファンモーターの劣化などが考えられます。対策としては、適切な設計・施工により換気経路を確保することや、静音性の高い機種を選ぶことが挙げられます

また、定期的な清掃やメンテナンスによって、ファンやフィルターの目詰まりを防ぐことも騒音の抑制につながります。

室温への影響と対策

換気システムは外気を室内に取り込むため、冬場は寒く、夏場は暑く感じることがあります。特に第三種換気方式は外気がそのまま入ってくるため、この影響を受けやすい傾向があります。対策としては、熱交換機能付きの第一種換気システムを導入することで、外気の温度を室温に近づけてから取り込むことが可能です

また、給気口に風向きを調整できるカバーを取り付けたり、給気口付近に家具などを配置しないようにしたりすることも、冷気や熱気が直接当たるのを軽減するのに有効です。

電気代について

24時間換気システムは常に稼働しているため、電気代がかかります。システムの種類によって電気代は異なりますが、一般的に第一種換気は給排気ともに機械で行うため、他の方式よりも電気代が高くなる傾向があります。

しかし、多くのシステムでは消費電力はそれほど大きくなく、月々の電気代は数百円から千円程度の場合が多いようです。省エネ性の高い機種を選んだり、熱交換機能によって冷暖房の効率を上げたりすることで、ランニングコストを抑えることも可能ですよ。

システムは基本的に停止しない

24時間換気システムは、原則として常に稼働させておく必要があります。これは、室内の空気は常に汚染されており、システムを停止すると空気の入れ替えが行われず、シックハウス症候群の原因となる化学物質や湿気、二酸化炭素などが室内に滞留してしまうためです。

窓を開けて換気する場合でも、システムは停止せずに併用することが推奨されます。システムを停止するのは、フィルターの掃除など、メンテナンスを行う短時間のみにとどめましょう。

定期的なメンテナンスの必要性

24時間換気システムは、その効果を維持するために定期的なメンテナンスが必要です。主なメンテナンスは、給気口や排気口、フィルターの清掃です。フィルターにホコリや汚れが溜まると、換気効率が低下したり、異音や異臭の原因となったりするだけでなく、汚れた空気を室内にまき散らすことにもつながります

フィルターの清掃頻度は機種によって異なりますが、取扱説明書を確認し、定期的にお手入れを行うことが重要です。また、数年に一度は専門業者による点検や清掃を行うことで、システムを長く快適に使用することができます。

24時間換気システムは騒音や室温への対策を!

リノベーションを機に24時間換気システムを設置することは、健康で快適な室内環境を実現するために非常に有効です。2003年の建築基準法改正により設置が義務付けられているこのシステムは、シックハウス症候群の対策や建物の結露防止に役立ちます。

換気方式には第一種、第二種、第三種の3種類があり、それぞれに特徴とメリット・デメリットがあります。既存住宅への後付けも可能ですが、設置工事の内容やマンションの場合は管理規約の確認、建物の気密性などを考慮する必要があります。

また、システムの効果を最大限に引き出すためには、騒音や室温への対策、そして定期的なメンテナンスが不可欠です。これらの情報を参考に、ご自身の住まいに最適な24時間換気システムを検討し、快適な暮らしを実現してください。

WRITERこの記事を書いた人

デザイナー

片山 飛翔TSUBASA KATAYAMA

設計 / 兵庫県三田市出身 / お客様の空想をより良い形で体現する事を常に意識しています / 料理が得意です。お客様とプライベートでも遊べる仲になる事が夢です

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