2025.12.16
最終更新日
2025.12.15
リノベーションのヒント

サステナブル建材とは? 特徴や代表的な種類、選ぶメリットを紹介

サスティナブル建材を使用したリノベーション事例

こんにちは!クジラ株式会社の髙橋です!

Writer
髙橋桃子
デザイナー WORKS
2016年に入社したスタッフの中で最もクジラ歴の長いメンバー。住宅のみならずオフィスリノベーションも得意としている。趣味は美味しいものを食べること。
CREATOR’s STORY|髙橋 桃子

近年、地球環境への配慮が不可欠な時代となり、私たちの暮らしやビジネスにおいて「サステナブル」という言葉を耳にする機会が増えています。

特に建築業界では、建物のライフサイクル全体を通して環境負荷を低減する「サステナブル建築」への関心が高まっており、その中で注目を集めているのが「サステナブル建材」です。サステナブル建材は、製造から廃棄に至るまで環境への影響を最小限に抑え、さらに人々の健康や快適性にも配慮した建材を指します。

本記事では、サステナブル建材が持つ多様な特徴や代表的な種類、そして選ぶことで得られるメリットについて詳しくご紹介します。

そもそもサステナブル建材とは?

サステナブル素材 イメージ
「サステナブル建材とは」、社会的・経済的・地球環境的な視点から、持続可能性を考慮して製造・使用される建築材料のことを指します。地球資源の保全やCO2排出削減を目的としており、資源の再利用や低エネルギー製造プロセスなどを通じて、環境負荷の軽減に貢献する建材です。
具体的には、製造から廃棄までのライフサイクル全体で環境負荷を低減し、長く使えるように設計されているのが特徴です。

また、リサイクルや再利用がしやすい素材であることや、人と地球に優しい安全な素材であることも重視されます。

なぜ今、サステナブル建材が注目されているのか?

サステナブル素材
近年、サステナブル建材への注目が高まっている背景には、地球環境問題の深刻化とSDGsへの意識向上があります。気候変動や資源枯渇といった課題に対し、建築業界では建物のライフサイクル全体で環境負荷を低減する取り組みが求められています。サステナブル建材は、CO2排出量の削減や資源の有効活用など、持続可能な社会の実現に貢献できるため、その需要が増加しているのです。

また、企業価値の向上という観点からも注目されています。サステナブルな取り組みは、消費者や取引先へのアピールにつながり、企業のイメージやブランド価値を高める効果も期待できるでしょう。

サステナブル建材が持つ4つの特徴

サステナブル素材 事例
サステナブル建材には主に4つの特徴があります。環境に配慮した資源から作られていること、製造から廃棄までのエネルギー消費が少ないこと、人と地球に優しい安全な素材であること、そして長期間利用でき、リサイクルや再利用がしやすいことなどが挙げられます。
これらの特徴は、地球環境の保護と持続可能な社会の実現に貢献します。
ここでは、それぞれの特徴について詳しく解説いたします。

環境に配慮した資源から作られている

サステナブル建材は、地球環境への影響を最小限に抑えるため、再生資源や天然素材を原材料として使用しています。限りある資源を大切に利用し、未来へ繋ぐことを目標にしているため、廃棄物や副産物を有効活用したリサイクル材やアップサイクル材なども含まれます。製造から廃棄まで、ライフサイクル全体で環境負荷を軽減できるよう考慮されていることが特徴です。
そのため、CO2排出量の削減や自然資源の循環利用に貢献します。

製造から廃棄までのエネルギー消費が少ない

サステナブル建材は、製造時だけでなく、運搬、建築、使用、廃棄にいたるまでのライフサイクル全体でエネルギー消費を抑えるように設計されています。

たとえば、木材は製造時のCO2排出量が鉄やコンクリートに比べて少なく、再植林により持続的な利用が可能です。
リサイクル材は、廃棄物の削減に加え、新たな資源の採掘抑制や製造時のエネルギー消費の削減に貢献します。このような建材の選定は、地球環境への負荷を軽減し、持続可能な社会の実現に不可欠な「サステナビリティ」の向上に大きく貢献します。

また、ライフサイクルアセスメント(LCA)という手法を用いて、建材の製造から廃棄までの環境負荷を定量的に評価し、より環境に配慮した選択をすることも重要です。

人と地球に優しい安全な素材である

サステナブル建材は、製造工程で有害物質を排出せず、使用時も人体に悪影響を与えない素材が多く存在します。

例えば、自然素材由来の接着剤や塗料、無垢材などは、シックハウス症候群の原因となる化学物質の発生を抑えることが可能です。

また、製造過程で水質汚染や土壌汚染を引き起こさないよう配慮された建材も多く開発されています。

長期間利用でき、リサイクルや再利用もしやすい

サステナブル建材は、高い耐久性によって建物の長寿命化を可能にし、「つくっては壊す」社会からの転換を促します。
これにより、製造から廃棄までのライフサイクル全体で省エネルギー化に貢献できるのです。

また、サステナブル建材はリサイクルや再利用がしやすい特性も持ち合わせています。廃材を再利用して作られた建材や、使用後に再び建材として循環できる素材を用いることで、廃棄物の削減や新たな資源の採取抑制に繋がります。

このように、長期間利用できてリサイクルしやすいことは、資源の有効活用や環境負荷の軽減という点で、サステナビリティに大きく貢献するといえるでしょう。

代表的なサステナブル建材の種類を紹介

サステナブル 素材
サステナブル建材には、環境負荷の低減や資源の有効活用を目指して、様々な種類があります。ここでは、代表的なサステナブル建材を4つのカテゴリーに分けてご紹介します。それぞれの建材が持つ独自の特性やメリットを理解し、建物の用途や設計思想に合わせて選択することが重要です。

森林資源を有効活用した「木材」

木材は、建築分野において古くから利用されてきた建材であり、その利用が環境負荷の低減に貢献するため、サステナブル建材として注目されています。木材は再生可能な資源であり、適切に管理された森林から伐採された木材を使用することで、森林の持続可能性を保ちながら資源を活用できます。

また、木材は加工時のエネルギー消費が少ない点も特徴です。製造から廃棄までのライフサイクル全体で環境への負荷が少なく、自然素材であるため、健康的で安全な建築材料として高く評価されています。

廃棄物を新たな価値に変える「リサイクル材」

リサイクル材とは、一度使用された製品や製造過程で出た廃棄物を回収し、新たな製品の材料や原料として加工された素材のことです。これは、廃棄物の量を減らし、資源の有効活用を促進することで、環境負荷の低減に大きく貢献します。
リサイクル材は、不要になった建材を一度壊して作り直す「リサイクル建材」と、素材や特徴を活かして別のものに作り変える「アップサイクル建材」の2種類に大別されます。
建築分野では、木材やコンクリート、石膏ボード、プラスチック、ガラス、金属など、多種多様な建築廃材がリサイクルの対象となっています。これらの廃材は、チップ化されて新しい木製品や燃料になったり、砕石として道路の路盤材に再利用されたり、粉砕されて新たなボードの原料になったりします。

例えば、廃蛍光灯から製造されたガラスタイルや、コーヒーかすを混ぜた内装材などもリサイクル材の具体的な例として挙げられます。リサイクル材の活用は、持続可能な社会の実現に不可欠であり、今後さらなる普及が期待されています。

自然由来の成分でできた「自然素材」

漆喰
自然素材は、土や石、植物といった自然由来の成分を加工して作られています。化学物質をほとんど含まないため、アレルギーを持つ方やシックハウス症候群が懸念される方にとって、健康に配慮した選択肢となります。
具体的には、竹や麻、漆喰などが挙げられます。
これらの素材は、調湿性や断熱性に優れており、快適な室内環境を保つ効果も期待できます。製造過程における環境負荷が低い点も特徴で、土に還る性質を持つため、廃棄の際も環境への影響が少ないサステナブルな建材です。

最新技術から生まれた「新素材」

最新技術によって開発された新素材は、従来の建材では難しかった環境負荷の低減と高い機能性を両立させています。

例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、軽量でありながら高強度を誇り、建物構造の長寿命化に貢献します。

また、藻類を原料としたバイオプラスチックは、製造時の二酸化炭素排出量を削減できるだけでなく、使用後には生分解されるため環境に優しい特性を持ちます。
さらに、遮熱や断熱効果を高めるナノテクノロジーを応用した塗料やシート材なども登場しており、建物の省エネルギー化を促進します。これらの新素材は、今後の建築業界において、より持続可能な社会を実現するための重要な役割を担っていくことが期待されます。

サステナブル建材を選ぶ3つのメリット

サステナブル建材 メリット
サステナブル建材を選ぶことには、地球環境への負荷軽減、シックハウス症候群などの健康リスク抑制、そして建物の耐久性向上による資産価値向上という、おもに3つのメリットがあります。以下に詳しくみていきましょう。

地球環境への負荷を軽減できる

サステナブル建材の導入は、地球環境への負荷軽減に大きく貢献します。具体的には、製造過程での二酸化炭素排出量の削減や、再生可能な資源の活用、廃棄物の削減などが挙げられます。これらの取り組みは、地球温暖化の抑制や資源枯渇問題の解決に繋がり、持続可能な社会の実現、つまりサステナビリティの向上に不可欠です。環境負荷の少ない建材を選択することは、長期的な視点で見ても、環境と共生する社会の構築に役立つと言えるでしょう。
え、廃棄物の削減にもつながります。

シックハウス症候群などの健康リスクを抑えられる

シックハウス症候群は、建材から放散される化学物質が原因で起こる健康被害です。サステナブル建材には、化学物質の使用を極力抑えたものや、自然由来の素材が多く含まれています。これらは人体への影響が少なく、アレルギーやぜんそくなどの健康リスクを低減できるため、居住者の健康と快適な室内環境を守ることにつながります。
さらに、建材の選定を通じて、安全で安心な生活空間を創出できる点も大きなメリットです。

建物の耐久性が高まり資産価値の向上につながる

サステナブル建材は、従来の建材と比較して耐久性や耐震性に優れているものが多く、建物の長寿命化に貢献します。建物の寿命が延びることで、改修や建て替えの頻度が減り、長期的な視点で見るとコスト削減にも繋がります。

また、環境性能の高さは、不動産市場において建物の差別化要因となり、資産価値の向上にも寄与します。

特に近年では、環境意識の高い消費者や企業からの需要が高まっており、環境配慮型の建物は高い評価を受ける傾向にあります。

サステナブル建材を選ぶ際に押さえておきたいポイント

サステナブルな建材 ポイント
サステナブル建材を選ぶ際は、建物の用途や地域の気候を考慮することが大切です。

たとえば、寒冷地では高断熱性の素材を選ぶことで、エネルギー効率を高められます。また、店舗のように雰囲気や快適性を重視する建物では、自然由来の漆喰などを用いることで、環境に優しく、かつ快適な空間を創出できます。 次に、ライフサイクルアセスメント(LCA)を評価することが重要です。
LCAとは、建材の製造から建築、利用、そして最終的な解体処分に至るまでのライフサイクル全体における環境負荷を把握する手法です。
これにより、CO2排出量や廃棄物量などを定量的に評価し、より環境負荷の少ない建材を選択できます。日本では2028年に建築物のLCA算定が制度化される見込みであり、今後さらにLCAの重要性が高まるでしょう。

建物の用途や地域の気候を考慮して選ぶ

サステナブル建材を選ぶ際は、建物の用途や地域の気候を考慮することが重要です。

例えば、寒冷地では高い断熱性能を持つ素材を選ぶことで、エネルギー消費を抑えられます。店舗や宿泊施設など、利用目的によっても重視するべきポイントは異なり、雰囲気や快適性を重視する場所では、自然由来の漆喰などが適しているでしょう。

また、地域の気候や伝統、文化と調和する建材を選ぶことも、持続可能な建築には不可欠です。 地元で産出される木材などの地域産材を活用することで、輸送にかかるエネルギーを削減し、地域の経済活性化にも貢献できます。

ライフサイクル全体での環境負荷(LCA)を評価する

建材を選ぶ際は、製品のライフサイクル全体で環境負荷を評価するLCA(ライフサイクルアセスメント)の考え方が重要になります。
LCAでは、原材料の調達から製造、輸送、使用、廃棄、リサイクルに至るまでの全段階における環境への影響を定量的に評価します。
これにより、部分的な環境負荷の軽減だけでなく、製品全体のサステナビリティ向上を目指せるのです。LCAは国際規格ISOで標準化されており、多くの企業がLCAを活用し、より環境に配慮した製品開発を進めています。

建材のLCA評価は、CO2排出量の「見える化」にもつながり、脱炭素社会の実現に向けた重要な取り組みとして注目されています。

サステナブル建材を選ぶデメリット

サステナブル建材 デメリット
サステナブル建材の導入にはいくつかのデメリットも存在します。

まず、一般的な建材と比較して初期費用が高くなる傾向がある点が挙げられます。
これは、生産量が少ないことや、特殊な加工・施工技術が必要となるためです。

また、素材によっては従来の建材に比べて耐候性や強度に課題があるものもあり、頻繁なメンテナンスが必要になるケースも考えられます。
さらに、サステナブル建材を取り扱える施工業者が限られている場合があり、選択肢が狭まる可能性もあります。これらのデメリットは、サステナビリティへの貢献と経済性、実用性のバランスを考慮する上で重要な要素となります。

サステナブル建材を導入する際の課題

サステナブル素材の利用 費用
サステナブル建材の導入には、費用や調達の面でいくつかの課題があります。通常の建材に比べてコストが高くなる傾向があり、初期投資が大きくなる可能性があるため、導入をためらう企業や個人も少なくありません。

また、普及途上にあるため、製品の種類や供給量が限られている場合があり、必要な建材を安定して調達することが難しいケースも考えられます。
さらに、サステナブル建材に関する知識や情報が不足していることも課題の一つです。

まとめ

サステナブル建材は、環境負荷の低減、資源の有効活用、そして健康への配慮という点で、これからの建築において重要な役割を担っています。地球環境への負荷軽減、シックハウス症候群などの健康リスクの抑制、そして建物の資産価値向上といった多岐にわたるメリットがあります。
建材を選ぶ際は、建物の用途や地域の気候を考慮し、ライフサイクル全体での環境負荷を評価することが重要です。
導入にはコストや情報不足といった課題もありますが、これからのサステナビリティを追求する社会において、サステナブル建材の活用は不可欠と言えるでしょう。

WRITERこの記事を書いた人

デザイナー

高橋 桃子MOMOKO TAKAHASHI

設計 / 和歌山県和歌山市出身 / 実際の現場だけではなく、資料など全ての細部にまでこだわるようにしています。 / 海辺のお家を購入後に自分好みにリノベをして、猫とのんびり住むのが将来の夢の1つです

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