2021.01.29.Fri リノベーションのヒント 施主様インタビュー

インタビュー|育てるから、愛せる。クジラとRANA TAILが創る新しいオフィスの形

リノベーション会社の対談

こんにちは、クジラ株式会社です。わたしたちは、未来に繋がる「カッコいい」を創るワンストップリノベーションチームです。

今回は、2年前にオフィスリノベーションを行った株式会社RANA TAIL(ラナテイル)の坂本様とクジラ代表の矢野の対談を実施。オフィス完成に至るまでの裏話と、新オフィスで働くメンバーのリアルな反応をうかがってきました。

オフィスはただの仕事場ではなく、愛着をもって感じ取る場所

― 坂本様はもともと別法人を運営されていて、今回新法人「RANA TAIL」の設立を機にオフィスのリノベーションをされています。いわゆる「居抜き物件」などの選択肢もある中で、リノベーションをされようと思ったきっかけは?

リノベーションのインタビュー

坂本:もともとのキッカケは、掃除だったんです。

―掃除?

坂本:はい。もともと別法人で事務所を構えていて、そこは「ザ・オフィス」という感じで、機能的に満たされていることを重視して選んだ場所でした。

ところが何年かそこで働くうちに、メンバーによって掃除のクオリティが違うことに気づき始めて。一部のメンバーの掃除が雑というか、心がこもっていないというか……。はじめは性格的な違いなのかなと思っていたんですが、よく考えると、丁寧に掃除をしてくれているメンバーの多くが、オフィスを作るときに「どこを借りよう?」「内装はどうしよう?」と相談した人たちだったんですよね

―なるほど。オフィスに対する思い入れが違いそうな気がしますね。

坂本:そうなんです。僕はそれまで、オフィスは最低限機能を満たしていて、仕事ができれば良い場所だと思っていました。ですがメンバーの掃除に対する関わり方を見て、「ただ業務を行う場所」としてではなく「それぞれが愛着を持つ場所」だと思うようになったんです。

だとすれば、会社の価値観や目指しているビジョンを感じ取れるオフィスのほうが良い。そう思って、新法人RANA TAILはリノベーションでイチから創っていくことに決めました。

―リノベーションをクジラにご依頼いただいた理由はあったのでしょうか?

坂本:もともと代表の矢野さんと長くお付き合いをさせていただいていて、実際の施工事例や、完成に至るまでのプロセスや想いを以前から伺っていました。また、本気で社会と向き合って経営をされている姿勢に対して、単純に尊敬の念がありました。そういう理由で、新しいオフィスを構想をする前から、何かあればぜひお願いしたいなと。

オフィスって、経営者の価値観とか会社のビジョンみたいなものを表現できる場だと思うんです。だからこそ、従来のような「ただ機能を満たしただけのオフィス」とか、「カタログ通りのオフィス」ではなく、言語化できない想いを形にしたようなものにしたいと考えていました。

それに、矢野さんの人に対する想いや、チームについての考え方に僕もすごく共感していたので、クジラさんとだったらきっといいものが創れる、と思ってお願いすることにしたんです。

言葉を広げる、言葉にまとめる。クジラとのブレストでアウトプットを思い描いた

リノベーション会社の対談

―オフィスづくりは、どのような作業からスタートしたのでしょうか。

坂本:まずやったのは、理想のイメージを言語化して落とし込むこと。ホワイトボードを使ってブレストをし、キーワードを整理していきました。

たとえば中心にある「中世ヨーロッパ」というのが今回のリノベーションのメインのコンセプトだったんですが、これもクジラのスタッフさんとブレストをして言葉を因数分解をするなかで出てきたものなんですよ。

RANA TAILという会社で組織の在り方を変えたい、ギルド型の組織を作りたいという想いがまずあって。ギルドについて調べていくと、発祥は中世ヨーロッパ。中世ヨーロッパといえばレンガだ……と、連想ゲームのように少しずつイメージを具体化していきました。

リノベーション会社のブレスト▲2年前に実際に使用していたホワイトボード

―ブレストを通して言葉やイメージを広げていった、という感じでしょうか。

坂本:そうですね。一方で、”言葉にまとめる”作業もしていきました。たとえば理想とかビジョンみたいなものって、言葉にせずに「イメージ」だけで持っていることも多いじゃないですか?それを「こういう感じ」とふんわり伝えるだけでは、きっと上手くいかないはず。

みんなが同じ方向を向けるようにひとつの言葉としてまとめていく作業はかなり大変だったんですが、クジラさんは根気強くヒアリングに付き合ってくれて、それを空間としてどうアウトプットするかを丁寧に考えてくださいました。

矢野:今回のようなブレストって、実はオフィス作りや住宅づくりでやっているところってあまりないんですよね。ただ、僕たちは住宅であれオフィスであれ、そこにビジョンやコアバリューは絶対に存在すると思っています。どのリノベーションでも同じだと考えているので、キーワードの整理は力を入れてやりましたね。

▲整理したキーワードを空間デザインに反映させるためのコンセプトボード

矢野:経営者が社員さんに伝えたい哲学や想いってなかなか伝わりづらいと思うんです。それをしっかり言語化して、空間デザインというカタチに翻訳して社員さんたちに伝えるということが僕たちの役割だと思っています。

―ブレストを通して、最終的なコンセプトは「中世ヨーロッパ」に?

坂本:初めは「中世ヨーロッパとレンガ」と言っていたんですが、同時に「0から1へと創る」というコンセプトも大切にしたいと思うようになって。執務スペースは中世ヨーロッパ風だけど、会議室は何かを生み出す場所として、「0の状態」を表現したコンクリート風にした方がいいよね、となっていきました。

▲「0から1へと創る」という想いをこめた会議室

坂本:デザイナーさんは「段々中世ヨーロッパと離れていきましたね」と笑っていましたが、何度も話し合いの機会を設けてくれたからこその着地に、僕自身は納得しています。

「全部お任せ」にはしない。作るときも、できあがってからも、”一緒に”育てる

リノベーション会社の対談

―コンセプトやデザインが決定した後は、坂本さんはどのように関わっていかれたのですか?

坂本:デザインが決まった後は基本的にはクジラさんが動いてくださるのですが、建物という物理的なものを触るのでどうしても、想像もしなかったことが起きてしまうんですよね。

矢野:そうでしたね(笑)。一般的には「すべてが決まった後に工事が始まる」ってイメージだと思うんですが、中古物件の場合、壁を解体したら想定と違った!こんなものが出てきた!っていうことがよく起きます。状況に応じてプランが変わるという前提で工事を始めるので、工事中も打ち合わせは続いていくんですよね。RANA TAILさんの場合は、まず天井問題にぶつかって……。

―天井問題?

矢野:見ていただくとわかると思うんですが、ここの天井はコンクリートがむき出しになっていて、こっちは残っているんですよ。

コンクリートむき出しの天井リノベーション▲オフィスの入口に近い位置の天井はコンクリートが露出している

リノベーション後の天井▲一方窓際には、前オフィスの天井が残る

矢野:もともとはすべての天井を壊してコンクリートにしようとしていたんですが、途中で天井の一部にダクトが通っていることが判明したんです。天井を壊す位置を変更して、なんとかこの形に落ち着きました。

坂本:あとは、デスクの天板が歪む事件も起きましたね。木材を調達して六角形のオリジナルのデスクを作ったんですよ。木材屋さんとも相談して制作したはずなのに、いざ作ってみたら天板がめちゃくちゃ反っていた(笑)。

矢野:ありましたね。社内でも大モメでした。僕怒る、デザイナー血の気引く……みたいな(笑)。そのあとで違う種類の木材を入れて、補強もして作り直したんですが、あのときは本当にどうなることかと思いましたね。

―坂本さんは、どんな気持ちで工事の過程を見守っていたのでしょう?

坂本:世の中には納品したら終わり、というプロダクトもあるかもしれませんが、僕自身グラフィックデザインをしているので、完成したあとにいろいろ起きるみたいなのは慣れっ子なんです。ことオフィスに関しては、10年、20年の単位で使っていくものですよね。

「作ってもらって終わり」ではなくて、「ずっと一緒にやっていく」みたいな発想をもともと持っていたので、工事の間にトラブルが起きても「どうすればいいかを一緒に考える」という気持ちでいました。

―なるほど。単なる施主と施工会社ではなく、ひとつのものを作りあげる仲間というイメージですね。オフィスを作っていく中で、坂本さんが大切にしていたことはありますか?

坂本:メンバーが触る場所を残しておくことでしょうか。最初にお話しした通り、僕はオフィスに愛着を持ってほしかったんですよね。となると、完成された場所にせずに、好きにいじれる部分を残したほうがいい

矢野:オフィス完成を100%としたときに、「どのくらいの“余白”を残すのか?」も坂本さんと工事前に議論しました。意図的な余白を創ることでスタッフさんが好きにいじれる部分が残ります。

坂本:だからあえて什器は完璧にはそろえず、植物も造花ではなく手間のかかる本物を置きました。足りないものを自分たちで考える、植物に手をかける、そんな風に一緒にオフィスを育てて愛着を持ってもらえたらいいなと思っていましたし、今もその気持ちは変わりません。

リノベーション後の緑のあるオフィス▲取材時、植物たちは窓際で日向ぼっこをしていた

外からの風が吹く場所で、”自分たちのオフィス”を追求したい

―オフィスが完成して約2年。率直に、いかがでしょうか?

坂本:余白を残してメンバー参加型にしたのは正解でしたね。これがあったほうがいい、このスペースをこうしたい、という意見が自発的にあがるようになりました。

意外だったのは、社内メンバーの評価よりも社外の人たちからの評価の方が高かったことです。レンタルスペースとしても貸し出しているのですが、会議利用だけではなく、写真や動画の撮影依頼が頻繁に入るので正直驚いていますね。

―どういったところからの依頼なのでしょう?

坂本:大手メーカーの商品撮影とか、企業PVの撮影、あとは小規模ですが映画の撮影なんかにも使っていただいたみたいですね。

以前のオフィスは自分たち以外が使うスペースではなかったので、来客であっても、社外の人が入ってくることにすごく違和感がありました。一方、今のオフィスは、貸し出しもするし、メンバーの家族がオフィスを見に来ることもあって、人が出入りすることに対しての違和感がなくなった。外からの「新しい風」が吹いている感覚があります。

―たしかにそれは大きな変化ですね。新しい風が吹くことで、メンバーの皆さんにも変化は生まれましたか?

坂本:人にどう見られているかを意識するようになったと思いますね。今まで「そういうもの」だと思って気にもとめなかった部分に目を向けて、「もっとこうしたいな」と考える。良い格好をしようとする。そんな風にオフィスに対して”自分ごと”で考えていけるようになったことが一番の変化だと思います。

もちろん、誰がいつ来てもオフィスが綺麗な状態か、という見た目についてもそうですが、”自分ごと”に変わったことで、仕事への姿勢も変化してきたと感じています。

ビジョンや理念を反映させた格好良いオフィスで働いていることって、経営者が想像するよりもずっとメンバーの「気持ち」に影響するんですよね。普通はオフィスってクローズドな場所だけれど、リノベーションしたことでオープンにできるようになり、メンバーの家族にも見てもらえる場所にもなった。「こんな格好良い会社で働いているんだ!」って家族に言ってもらえたら、メンバーも、僕も嬉しいじゃないですか。

「めちゃくちゃ満足」。これが、今回のオフィスリノベーションに対しての僕のシンプルな感想です。

リノベーション会社の対談

▼WORKS


▼担当したクジラのデザイナーってどんな人?

━ INFORMATION ━
[エリア]大阪府大阪市
[種別]ビル
[面積]約156.75㎡
[工事費用]1,230万円

WRITERこの記事を書いた人

中野 里穂

ライター / 茨城県水戸市出身 / 好きな食べ物はだし巻き定食 / お客様と街の人の「リアルな声」をお届けします!

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