マンションでエアコンがつけられない部屋がある!?物件購入前にチェックするポイントとは?

子どもの頃、夏になると「この部屋にエアコンが設置できないため扇風機を使うしかない」と我慢した経験を持つ人もいるでしょう。マンションには「エアコンが設置できない居室がある」ということは意外に知られていません。
マンションを購入する際、室内環境を快適に保つためには、エアコンの設置可能性が重要なポイントです。建物の管理規約、設置場所、電力容量等を事前に確認し、後悔しない選択をすることが大切です。
目次
エアコン設置方法の基礎知識
エアコンは他の家電のようにコンセントに繋いだらすぐ使えるというわけではありません。まずは、エアコンの設置方法について基本的なところから確認してみましょう。
図のようにエアコンは室内機と室外機が冷媒管で繋がれ、室内機には結露した水を室外へ流すためのドレン管が繋がっています。マンションの場合、構造躯体がコンクリートで作られているため、あらかじめ、冷媒管とドレン管を通すための穴(エアコンスリーブ)が開けられています。
このように、エアコンを設置するときには3つのポイントが重要であることが分かりますね。
・エアコンスリーブがあるか
・室外機置き場があるか
・ドレン管のルートを正しく取れるか
また、電気容量をオーバーしてしまうとすぐにブレーカーが落ちてしまう原因になるため、電気関連の計画も重要です。エアコン設置の際のポイントを一つずつ確認し、ストレスのない生活を目指しましょう。
エアコンは設置できる?内覧時に確認する3つのポイント
マンション選び・購入前の内覧で、エアコンが設置可能かを判断する3つのポイントを紹介します。
配管を通す穴はある?
エアコン設置に際して重要なのは、配管を通す穴(エアコンスリーブ)の有無です。多くのマンションでは建築段階でエアコンスリーブが設けられていることが一般的ですが、リノベーションで部屋の間取りを変える場合、既存の位置や個数では希望する間取りにエアコンがつけられないケースもあります。
エアコンスリーブがなければ新たに穴を開けたいところですが、マンションでは躯体の壁に穴を開けることを禁止してる場合がほとんどです。ただし、窓の一部を加工して配管ルートを確保する方法はOKという場合もあるので、事前に管理組合に条件を確認しておきましょう。
室外機置き場はある?
室外機設置が可能かは重要なチェックポイントです。
最近のマンションには共有廊下に専用の室外機スペースが多いですが、古いマンションの場合、エアコンの設置が想定されておらず、廊下側の部屋に室外機を置く場所がないこともあります。
共有廊下に室外機を設置する場合には、近隣の生活環境に配慮して静かで振動の少ないエアコンを選ぶことが大切です。騒音対策として、静音設計の製品や振動吸収材の利用が方法の一つです。
ドレン管の勾配は十分確保できる?
エアコンを設置するには、結露水を排水するためのドレン管の設置が必要です。
水を外に排水するためには1/100以上の勾配が必要です。特にエアコンスリーブから離れた位置に室内機を設置する場合、ドレン管の勾配が十分でないと上手く結露水が外に排水できず、エアコンの故障や水漏れの原因になります。エアコンを設置するときは、適切な排水ルートを確保できるように計画しましょう。
エアコンの設置ができない時の対処法
室内環境を快適に保つためにエアコンは不可欠ですが、マンションでは設置可否や場所に制限があることがあります。この問題は、特にマンション購入を検討している人にとって大きな関心事です。実際、エアコン設置が難しい条件がある場合でも、工夫によって快適な生活空間を確保できます。
間取りで解決する
通常、マンションの間取りは固定されていますが、エアコンの位置、向き、隣接する居室との位置関係を工夫すればキッチンやダイニングへ効率よく冷暖気を送ることができます。
こちらのリノベーション事例では、ひとつのエアコンで子供部屋2つの空調を管理しています。エアコン設置の詳細な位置や、どの程度の馬力が必要か?などは設計デザインのプロにしっかりと相談するといいでしょう。
▼間取りでエアコン設置を解決したリノベーション
窓ガラスに穴を開け配管する
新しいエアコンを設置したいがエアコンスリーブが開いていないという場合、窓ガラスに穴を開けて配管するという方法もあります。コンクリートに穴を開けるより、窓ガラスに穴を開ける方が構造に影響しないと判断されマンションの管理組合から許可が出る場合があります。ただし、窓ガラスはマンションの共用部であるため、許可なく工事しないようにしましょう。
また、窓ガラスに配管する場合、窓の開閉はほとんどできなくなるため、頻繁に開ける必要のない窓に設置しましょう。
穴を開けずにウィンドウエアコンを設置
穴を開けずに設置できるウィンドウエアコンもひとつの案です。ウィンドウエアコンはセキュリティが心配という声もありますが、配管など専門的な工事が不要であるため、自分で設置できるメリットがあります。エアコンが必要な時期のみ取り付けて、不要になれば自分で取り外すことができ、簡単に部屋の温度を調節することができます。設置には、窓のサイズや種類を十分確認して、適合するウィンドウエアコンを選びましょう。
エアコン設置時の注意点
エアコン設置は、単に機器を取り付けるだけでなく、住空間全体の快適性や安全性に影響を与えるため、いくつかの注意点があります。特に、室内のどこに設置するか、十分な強度があるか、放熱が妨げられないか、温度分布をどのように最適化するかといった点は、計画段階でしっかり検討することが大切です。これらの要素を考慮することで、エアコンの性能を最大限に引き出し、より快適な居住環境を実現することができます。
十分な強度のある場所を選ぶ
室内機を設置する際は、壁の強度が十分にある場所を選びましょう。エアコンは本体重量があるため、石膏ボードなど強度の低い壁に直接取り付けると、落下や壁の破損の原因になります。特に大型のエアコンや古い建物の場合は、より注意が必要です。木造住宅の場合は柱や間柱、鉄骨造やRC造の場合は下地センサーなどで間柱や壁の補強材の位置を確認し、それらに固定することで安全性が高まります。また、エアコンは運転中に振動が発生するため、しっかりと固定されていないと騒音の原因にもなります。壁の材質や構造に不安がある場合は、専門業者に相談し、適切な補強工事を行うことを検討しましょう。これにより、エアコンの性能を最大限に引き出し、長期にわたって安全かつ快適に使用できます。
放熱を妨げない場所にする
エアコンの室内機を設置する際には、冷暖房効率を最大限に高めるため、放熱を妨げない場所を選ぶことが重要です。家具やカーテンなどでエアコンの吹き出し口が塞がれると、冷気や暖気が室内に均等に行き渡らず、設定温度になかなか到達しません。その結果、エアコンが常にフル稼働することになり、無駄な電力消費が増え、電気代が高くなる可能性があります。経済産業省の調査によると、エアコンは家庭における電力消費の約3割を占めるとされており、設置場所を適切に選ぶことは省エネにも直結します。
また、室内機と室外機を結ぶ冷媒配管の長さも放熱効率に影響を与えます。配管が長すぎると、熱の移動効率が低下し、エアコンの性能が十分に発揮されないことがあります。一般的に、配管長が長くなるほど冷暖房能力は低下し、消費電力は増加する傾向にあるため、可能な限り室内機と室外機の距離が近い場所を選定することが望ましいです。特に、室外機は直射日光が当たる場所や風通しが悪い場所に設置すると、排熱が滞り、冷房効率が著しく低下するため、日陰で風通しの良い場所を選ぶようにしましょう。
エアコンの温度分布を考える
エアコンの温度分布は、快適な室内環境を実現するために非常に重要な要素です。暖かい空気は上昇し、冷たい空気は下降するという空気の性質を理解し、効率的な冷暖房を行う必要があります。たとえば、エアコンから吹き出す冷たい空気は床面にたまりやすく、暖かい空気は天井付近に滞留しやすいため、部屋全体を均一な温度にするためには工夫が求められます。 特に冬場は、床付近の冷気を解消するために扇風機やサーキュレーターを併用し、天井付近にたまった暖かい空気を循環させると効果的です。これにより、室内の上下での温度差が小さくなり、足元から暖かさを感じやすくなります。
また、夏場は、エアコンの設定温度を必要以上に下げずに、扇風機やサーキュレーターで冷気を循環させることで、体感温度を下げつつ電力消費を抑えることができます。 さらに、エアコンの風向きも温度分布に大きく影響します。冷房時は水平方向に、暖房時は下向きに風を送ることで、それぞれ冷気と暖気の特性を活かし、効率的に部屋全体を快適な温度に保つことができます。これにより、設定温度の微調整だけで済むようになり、過度な冷暖房を避けることが可能です。窓の断熱性を高めることも、外気の影響を抑え、室内の温度分布を安定させる上で効果的な対策です。二重窓や厚手のカーテンの設置は、外気温の影響を受けにくくし、エアコンの効率を高めます。
断熱性能をアップして快適に過ごす
マンションライフを快適にするためには、断熱性能を確保することも重要です。断熱性がエアコンの使用頻度や光熱費に関連することは、皆さんもご存じのことでしょう。
「リノベーションするなら絶対、壁にも床にも断熱材を入れたい」と考える方も多くいます。
快適に過ごすために、エアコン設置と合わせて、断熱についても考えたいですね。
エアコンに関するQ&A
エアコンに関するよくあるご質問にお答えします。ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
Q.古いマンションはエアコンがつけられない?
「古いマンションにはエアコンがつけられないのでは?」と不安に思う方も多いはず。
古いマンションでは、構造の古さや管理規約によって新規設置が制限されることもあります。しかし、たいていの古いマンションでも適切な対応と工夫により、エアコンの設置は可能です。この記事を参考に、エアコン設置の可否と方法を確認しましょう。設置を希望する際は、管理組合への相談が必要です。さらに、外観を損なわないよう配慮しながら最適な方法を選びましょう。
Q.和室のエアコン設置方法は
和室にエアコンを設置する際は、その特性を理解した上で適切な方法を選ぶことが重要です。和室は畳や土壁といった自然素材が多く使われているため、通常の洋室とは異なる配慮が必要となります。特に、畳の部屋では、エアコンの風が直接畳に当たると、乾燥によって傷みや変色を早める可能性があるため、風向きの調整が大切です。また、和室のエアコンは、見た目の美しさも考慮し、部屋の雰囲気を損なわないように設置することが望ましいです。 具体的な設置方法としては、まず、配管を通すためのエアコンスリーブが既存であるかを確認します。もしない場合は、壁に穴を開けることになりますが、土壁などの場合は、専門的な知識と技術が必要となります。
また、和室の場合、鴨居や長押といった装飾部分を避けて設置する必要があるため、取り付け位置には細心の注意を払う必要があります。室外機の設置場所も同様に重要で、和室の景観を損なわないよう、目立たない場所に設置することを検討しましょう。 畳の部屋の快適性を保つためには、エアコンの選定も重要です。最近では、気流制御機能が優れており、畳に直接風が当たらないように調整できるエアコンも増えています。さらに、除湿機能や空気清浄機能が充実したモデルを選ぶことで、カビやダニの発生を抑え、和室特有の清涼感を保つことができます。
Q.床下エアコンとは?
床下エアコンとは、文字通り床下に設置されるエアコンのことで、床下の空間を冷暖房の熱源として活用するシステムです。この方式の大きな特徴は、床下全体に温風や冷風を送り込み、床面からじんわりと部屋を暖めたり、逆に床下から冷気を放出したりすることで、空間全体を快適な温度に保つ点にあります。一般的な壁掛けエアコンが直接的な風で部屋の空気を調整するのに対し、床下エアコンは足元から快適さを提供するため、冷暖房のムラが少なく、部屋全体が均一な温度になりやすいのが利点です。 特に冬場は、床下から暖気が上昇することで、足元からぽかぽかと暖かさを感じることができ、冷え性の人にとっては非常に快適な空間を実現します。
また、エアコン本体が床下に隠れるため、室内の景観を損なうことがなく、すっきりとしたインテリアデザインを保てるのも魅力の一つです。一方で、設置には床下空間の確保が必要となるため、すべての建物に導入できるわけではありません。新築や大規模なリノベーション時に検討されるケースが多く、床下の断熱性能や気密性が重要になります。
Q.店舗リノベーションでのエアコン設置について
店舗のリノベーションにおいて、エアコンの設置は顧客の快適性や従業員の作業効率に直結するため、非常に重要な要素です。特に、店舗の種類や広さ、天井の高さ、窓の数などによって必要なエアコンのタイプや容量が大きく異なります。例えば、飲食店舗では調理による熱や匂いが発生するため、高機能な換気システムと連携したエアコン設置が求められます。また、アパレル店舗や美容室などのサービス店舗では、空間デザインと調和するような見た目のエアコンを選ぶことも重要です。 店舗のエアコン選定では、業務用エアコンと家庭用エアコンのどちらを選ぶかが大きなポイントになります。業務用エアコンは、広い空間を効率的に冷暖房できるよう設計されており、耐久性やパワーに優れていますが、導入コストが高くなる傾向があります。
一方、家庭用エアコンは導入コストを抑えられますが、店舗によっては十分な冷暖房効果が得られない可能性があります。店舗の規模や使用頻度、予算などを総合的に考慮し、最適な選択をすることが肝心です。 さらに、店舗リノベーションでは、エアコンの配管ルートや室外機の設置場所も事前にしっかりと計画する必要があります。店舗の外観や周囲の景観を損なわないよう、室外機を隠す工夫や、防音対策を講じることも大切です。電力容量の確認も忘れずに行いましょう。古い店舗の場合、現在の電力契約では不足する可能性があるため、事前に電力会社に相談し、必要に応じて増設を検討してください。
Q.正しいエアコンの温度設定とは?
エアコンの適切な温度設定は、快適性と省エネ、そして健康維持のバランスを考慮することが重要です。一般的に、夏場の冷房時は室温が28℃、冬場の暖房時は室温が20℃が推奨されています。これは環境省が快適性を損なわない範囲で省エネルギーを目指すために提唱している室温の目安です。しかし、この温度はあくまで室温の目安であり、エアコンの「設定温度」とは必ずしも一致しないため注意が必要です。室内の環境(日当たり、断熱性能など)や昼夜、湿度によって体感温度は大きく変わるため、室内に温度計を置いて実際の室温を確認しながらエアコンを調整することが効果的です。
特に夏場は、外気温が30℃から35℃になることも多く、外気温と室温の差が開きすぎると体に負担がかかるため、26℃から28℃を目安に設定するとよいでしょう。冬場は、外の環境にもよりますが、暖房の最適な設定温度は22℃から24℃程度が適切とされています。 快適さを保ちつつ節電するためには、湿度も重要な要素です。湿度が高いと体感温度が上がり、低いと体感温度が下がります。そのため、夏は除湿機能を活用して湿度を50%以下に保つことで、設定温度を上げても快適に感じられます。冬は加湿器を併用することで、室温20℃でも暖かく感じやすくなります。扇風機やサーキュレーターを併用して室内の空気を循環させることも、冷暖房効率を高め、設定温度を無理に上げ下げせずに快適に過ごすための有効な手段です。自動運転モードを活用すれば、エアコンが自動で最適な運転をしてくれるため、手動で細かく調整するよりも節電につながる場合があります。
また、設定温度を極端に上げ下げすることは、体調を崩す原因にもなり得ます。特に室内と外気の温度差が5℃以上続くと、体温調節機能が疲弊し、体調不良につながる可能性があるため、健康維持の観点からも無理のない設定が大切です。
エアコン単体ではなく、暮らし全体を考える
エアコン設置は暮らしやすさに大きく関わりますが、住まい全体、暮らし全体からエアコン設置を考えられている方は意外に少ないのかもしれません。
快適な暮らしのためにも、暮らしの全体像からエアコン設置について考えるようにし、時にはプロに相談することも検討しましょう。