店舗外観の魅力的なリノベーションのポイントや事例を紹介
Writer 松尾翔 デザイナー WORKS 大学院中退後は設計デザイン事務所で修行を積み、2018年にクジラにジョイン。住宅から店舗まで幅広く設計案件を担当。「SEKAI HOTEL」のデザイン統括も担当している。 CREATOR’s STORY|松尾 翔 |
店舗の外観は、来店するお客様に最初に見られる重要な場所です。魅力的な外観は顧客の目を引き、店舗の雰囲気やサービス内容を端的に伝える役割も果たします。
この記事では、店舗外観のリノベーションにおけるポイントや、実際の事例についてご紹介します。理想的な外観を作るためのヒントをまとめるので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
そもそもリフォームとリノベーションの違いとは
店舗の外観を変える際に、よく耳にする「リフォーム」と「リノベーション」という言葉があります。どちらも建物に手を加えるという意味では共通していますが、実際には異なる意味を持っています。それぞれの違いを理解し、目的に応じて適切な方法を選ぶことが大切です。
リフォームとは
リフォームとは、一般的に建物の老朽化による劣化部分を修繕し、建物を元の状態に戻すことを指します。たとえば、外壁のひび割れや塗装の剥がれを補修する場合や、破損した部分を修理してきれいな状態にすることがリフォームです。
リフォームの主な目的は、建物の機能を回復させることであり、見た目の改善や安全性の向上も含まれます。新築当時の状態に近づけるために行われるため、大きなデザイン変更は通常行わないことが多いです。
店舗外観のリフォームの場合、主に外壁の塗り直しやひび割れの修繕、看板の交換などが含まれます。これにより、店舗の印象が明るく清潔になるため、顧客に安心感を与え、集客効果が向上することも期待できます。
リノベーションとは
リノベーションとは、単に元に戻すだけでなく、建物に新たな価値を加え、以前とは異なるデザインや機能性を持たせることを指します。リノベーションは既存の空間に対して大幅な変更を加えることができ、店舗のコンセプトやブランディングに合わせた外観作りが可能です。
例えば、店舗の外観をモダンなデザインに変更したり、異なるカラーや素材を取り入れてイメージを一新することがリノベーションにあたります。
リノベーションの大きなメリットは、店舗の外観を大きく変えることで、ターゲット層に合わせた独自の魅力を生み出せる点です。業態が変わったり、リブランディングを行いたいときに特に効果を発揮します。例えば、昔ながらの建物をおしゃれなカフェにリノベーションすることで、若年層の集客を狙うことも可能です。
魅力的な店舗外観にするための意識すべきリノベーションのポイント
店舗の外観リノベーションを成功させるには、いくつかのポイントを押さえて計画を進める必要があります。業種や店舗のコンセプト、立地環境に合わせて最適なリノベーションを行うことで、店舗の魅力を最大限に引き出せるでしょう。ここでは、意識すべきリノベーションのポイントについて詳しく解説します。
業種に合わせた外観のデザイン
まず、店舗の外観デザインは業種に合わせることが重要です。外観を見ただけで顧客が店舗の雰囲気やサービス内容をイメージしやすくなるため、適切なデザインを選ぶことは集客力を高めるポイントになります。
例えば、飲食店であれば温かみのある色合いや、入り口から料理の香りが漂うような工夫が求められるでしょう。美容院やネイルサロンなど、美容系の店舗であれば、洗練されたデザインや清潔感のある外観が顧客に安心感を与えます。
また、不動産や買取店舗など、信頼性を重視する業種では、落ち着いたトーンやスタイリッシュなデザインが好まれる傾向があります。
業種に合わせたデザイン選びは、外観における第一印象を大きく左右するため、慎重に考えましょう。
競合店との差別化のアイディア
リノベーションによって競合店との差別化を図ることも、外観デザインの重要なポイントです。同じエリアに同業種の店舗が多い場合、外観にインパクトを与えることで顧客の関心を引き付けることが可能です。
例えば、外壁のカラーを大胆に変えたり、異なる素材を組み合わせて独特の質感を出すことで、個性的な外観を作り上げることができます。
また、店舗の入口や看板にも工夫を凝らすことで、通行人に店舗の存在を意識させることができるでしょう。
、夜間でも目立つ照明や、店舗のロゴを大きく配置することで、遠くからでも視認性を高めることができます。
特に飲食店やアパレルショップなど、競争が激しい業界では、このような差別化が集客に直結することが多いため、積極的に検討してみると良いでしょう。
外壁や屋根の塗り替え・張り替えの重要性
店舗の外観を魅力的にするためには、外壁や屋根の状態にも注意を払いましょう。経年劣化によって外壁や屋根が傷んでいると、店舗全体のイメージダウンにつながりかねません。特にひび割れや塗装の剥がれ、変色が目立つ場合は、塗り替えや張り替えを検討することが重要です。
外壁の塗り替えを行う際は、素材選びもポイントです。例えば、アクリル塗料は比較的安価ですが、耐久性が低く、頻繁なメンテナンスが必要です。一方で、シリコン塗料やフッ素塗料は高耐久で、長期間にわたって美観を保ちやすいという特徴があります。
また、最近ではエコ塗料や断熱効果のある塗料もあり、省エネや環境への配慮を意識する店舗にもおすすめです。
屋根についても同様に、状態が悪化している場合には早めのメンテナンスが必要です。特に雨漏りのリスクがある場合は、顧客の安全にも関わるため、積極的な対策が求められるでしょう。
外壁や屋根の美観と機能性を保つことで、店舗全体の印象が良くなり、安心して顧客が訪れやすい環境を提供できます。
印象アップにつながるエントランス
エントランスは店舗の外観において特に重要な部分です。エントランスの印象が良ければ、訪れる人々に好印象を与え、入りやすさを感じさせることができます。
例えば、入り口に観葉植物や装飾品を配置することで温かみを演出したり、店舗のコンセプトに合わせた小物や看板を置くことで、顧客に店舗の個性を伝えることができます。さらに、清潔感のあるドアマットを敷くことや、定期的にエントランス周辺の掃除を行うことも、訪れる人にとって良い印象を与えるための工夫と言えるでしょう。
また、エントランスの形状やスペースの広さも検討してみる価値があります。例えば、飲食店やカフェであれば、テラス席を設置したり、外に小さな待合スペースを設けることで、顧客がリラックスできる空間を提供することが可能です。
エントランスが魅力的であれば、通行人の目に留まりやすく、自然と集客効果が期待できます。
ドアや窓の取り換えで印象を変える
ドアや窓は、店舗の印象を大きく左右する要素です。古びたドアや傷んだ窓枠は全体的な印象を損ねる原因となりかねないので、外観リノベーションの際に取り換えを検討するとよいでしょう。
例えば、ドアをガラス製に変えると、外から内部が見えやすくなり、店舗の雰囲気をアピールする効果があります。逆に、アンティーク調の木製ドアを選べば、温かみのある雰囲気を演出できます。
窓も同様に、取り換えやデザインの変更によって印象を変えることができます。大きな窓にすることで、店内の明るさを引き出し、外からでも店内の様子が見えるようになり、入りやすさを感じさせる効果があります。さらに、カーテンやブラインドの色やデザインを工夫することで、店舗のコンセプトやイメージに合った外観を作り上げることができます。
外観の色調や照明効果を狙う
外観の色調と照明もまた、店舗の雰囲気や印象を大きく左右します。色調は、ブランドイメージや提供するサービスに合わせて選ぶことが大切です。
例えば、カフェやレストランであれば温かみのある色合いが親しみやすさを演出し、美容院やアパレルショップではモノトーンや淡い色合いが洗練された印象を与えやすいでしょう。派手な色彩を使用する場合は、ターゲット層に合わせて選ぶと効果的です。
また、夜間の照明も重要な要素です。ライトアップによって遠くからでも店舗の存在感をアピールでき、特に飲食店やバーなどの夜間営業が多い店舗においては必須です。入口や看板を照らすだけでなく、店舗全体の照明に工夫を凝らすことで、華やかで魅力的な雰囲気を演出することができます。
照明の明るさや色合いを調整することで、温かみや落ち着き、あるいはスタイリッシュさといった印象を与えることが可能です。
オリジナル看板のデザインと設置
看板は、店舗の外観を形成する重要な要素であり、顧客に対して店舗の名前やブランドを認識させる役割を果たします。特に、オリジナルデザインの看板を設置することで、店舗の個性を一層引き立てることができ、他店舗との差別化を図ることが可能です。
例えば、ユニークな形や色彩の看板を使用したり、照明を組み合わせた看板を設置することで、昼夜を問わず店舗の存在感をアピールすることができます。
また、看板には素材の選定も重要です。木材を使用することで温かみを出したり、金属製の看板でスタイリッシュな雰囲気を演出したりと、素材によって印象が大きく変わります。さらに、看板の位置や高さも工夫することで、通行人の目に留まりやすくすることが可能です。特に通り沿いや繁華街での集客を考える場合、見やすく配置することがポイントです。
景観法の確認事項
店舗の外観リノベーションを行う際には、地域の景観法や建築基準法に注意する必要があります。地域によっては、外観やカラーリング、看板の設置に関して制限が設けられている場合があり、事前に確認しておかないと工事後に変更を余儀なくされることもあります。
例えば、歴史的な街並みが保護されているエリアでは、外観にモダンなデザインや派手な色彩が使用できない場合もあるため、事前に市区町村の役所や管理事務所に問い合わせておくと安心です。
また、景観法に基づく建物の高さ制限や、看板設置の許可申請が必要な場合もあるため、事前の確認が不可欠です。特に新規出店や大規模なリノベーションを行う場合は、専門の建築士やデザイナーに相談して、法令に適合した設計を行うようにしましょう。
法律に則った計画を進めることで、スムーズにリノベーションが行えるだけでなく、地域の雰囲気に溶け込んだ店舗を作り上げることができます。
店舗外観リノベーションのメリット
店舗外観のリノベーションには、見た目を良くするだけでなく、実際の営業にとってもさまざまなメリットがあります。集客力の向上やブランドイメージの向上に加えて、長期的な安全性と耐久性を確保できるため、事業経営を長期間安定させるための重要な投資ともいえるでしょう。
フルリノベーションでの安全性や耐久性が向上する
フルリノベーションを行うことで、建物の安全性や耐久性を大幅に向上させることができます。特に築年数が経っている建物では、外観だけでなく内部の構造や配管も劣化していることが多いため、これらを一新することで長期的に安心して営業が続けられる環境を作り上げることが可能です。
また、耐震補強や防火対策も同時に行うことで、災害時のリスクを低減させることができ、顧客や従業員の安全を守ることにもつながります。
外観リノベーションの一環として、屋根の防水加工や断熱材の導入など、細部にわたる施工を行うことで、雨漏りや結露、寒暖差による建物の劣化を防ぎます。これにより、建物自体の寿命が延び、結果的に修繕コストの節約にもつながるでしょう。
外壁デザインの工夫でコンセプトに合った外観に
店舗の外観は、訪れる人にブランドイメージを伝える重要な要素です。外壁デザインのリノベーションを行うことで、店舗のコンセプトに合った外観に仕上げることができます。
例えば、ナチュラル志向のカフェであれば、木材を使用した温かみのあるデザインにすることで、リラックスした雰囲気を感じさせることができ、顧客が「入りたい」と思うきっかけとなるでしょう。
一方で、クールでモダンなデザインを追求したい場合には、金属やガラスを多用したスタイリッシュな外観が効果的です。
壁面のカラーリングやテクスチャー、素材の選択によってもイメージは大きく変わるため、事前に店舗のコンセプトやターゲット層を明確にし、それに合わせたデザインの方向性を定めることが重要です。
集客力アップとブランドイメージの向上
外観リノベーションにより、店舗の集客力を向上させ、ブランドイメージをより強化することが可能です。人は外観の第一印象でその店舗の雰囲気を判断し、特に初めて訪れる人にとっては重要な要素となります。外観を魅力的にすることで、「ここに行ってみたい」と思わせることができ、リピーターだけでなく新規顧客の獲得も期待できるでしょう。
また、外観のデザインに一貫したブランドメッセージを組み込むことで、店舗の印象が顧客の記憶に残りやすくなります。例えば、特定の色を使用したり、特徴的なフォントやロゴを取り入れるなど、視覚的なブランドの統一感を持たせることで、店舗のアイデンティティを確立しやすくなります。
このように、外観リノベーションは単に見栄えを良くするだけでなく、ブランド力を強化するための有効な手段でもあるのです。
顧客の動線を意識したリノベーション
リノベーションを行う際には、顧客の動線を意識することも重要なポイントです。店舗の入り口から商品エリア、レジ、出口までの流れを考慮して外観やエントランスを設計することで、顧客がスムーズに移動でき、ストレスを感じずに店舗内で過ごせるようになります。
例えば、飲食店では、入り口から待合エリア、席までの流れをスムーズにすることで顧客の回転率を上げることができます。小売店であれば、ウィンドウディスプレイの配置や入り口から商品棚までの動線を工夫することで、顧客にとって魅力的な店舗体験を提供することができます。
動線を意識したリノベーションは、顧客満足度を向上させ、リピーター獲得にもつながります。
店舗外観リノベーションの最適なタイミング
店舗外観のリノベーションを行うタイミングも重要な要素です。例えば、季節の変わり目や新しい商品の入荷時期、新規顧客が増えるイベントシーズンに合わせてリノベーションを行うことで、集客効果を最大限に引き出すことができます。
また、競合他店舗のリニューアルや新規オープンのタイミングで自店舗の外観リノベーションを行うことで、差別化を図り顧客を引きつけることが可能です。
さらに、建物の老朽化や外壁の傷みが目立ってきた場合も、リノベーションを検討する絶好のタイミングです。特に、外壁が劣化していると店舗全体の印象が悪くなり、集客力の低下にもつながりかねません。事前に劣化状況をチェックし、早めにリノベーション計画を立てることで、見栄えを保ちつつ安全性を確保することができます。
店舗外観リノベーションの事例
既存のガラス障子を再利用し、シェアキッチンの顔
元々、室内で使われてたガラス障子は非常に丁寧に扱われていたため、ほとんど修理する箇所はなく、ガラスのみ交換して建物の外観に再利用させて頂きました。ガラスの面積を広くすることで店内の様子を伺うことができ、足を運んで頂き易いようなデザインにしています。
また、ヘリンボーン柄の入口の扉も昔、金物を収納していた木箱を解体して得た木材を再利用して製作したものです。
地元に愛された看板はあえてそのままに
ドラえもんの作者である藤子・F・不二雄も若き頃に通い詰めた文苑堂書店。
1946年に開業し、人々に愛された高岡のランドマークである文苑堂書店を2022年にまちごとホテルの拠点としてリノベーションしました。
長い歴史を生きてきた文苑堂書店の看板は、あえて手をいれずそのままに。
レトロな外壁タイルをそのまま利用
外壁の緑のタイルを既存利用し、大きなFIX窓を入れました。
中が見えることで、店に入りやすくなります。
店舗外観リノベーションはコンセプト・ターゲットを明確に
店舗外観のリノベーションは、単に見た目を整えるだけでなく、顧客の動線や安全性、ブランドイメージの向上、そして集客力アップにも寄与する重要な施策です。業種やコンセプトに合ったデザインに工夫を凝らすことで、他店舗との差別化が図れ、顧客にとっても魅力的な店舗空間を提供することが可能になります。
リノベーションを成功させるためには、事前に店舗のコンセプトやターゲット層を明確にし、リノベーションのタイミングや地域の景観法を考慮しながら計画を進めることが重要です。また、外観デザインや素材の選定、照明の効果的な活用など、細部にわたるこだわりが店舗全体の印象を左右します。
こうしたポイントを意識してリノベーションを行うことで、店舗の魅力を最大限に引き出し、多くの顧客に愛される空間を作り上げることができるでしょう。