2025.01.27
最終更新日
2025.01.28
リノベーションのヒント

店舗付き住宅リノベーションのメリットや注意すべきポイントを解説

店舗付き住宅 リングサロン

こんにちは!クジラ株式会社の菅原です!

Writer
菅原沙絵
デザイナー WORKS
2017年に新卒入社以来、住宅だけではなく店舗や宿泊施設のデザインも担当してきた。
お客様の理想を正確に捉え、ヒアリングを中心にデザインしていくことを得意としているデザイナー。
CREATOR’s STORY|菅原 沙絵

店舗付き住宅のリノベーションは、ビジネスと住まいを融合させる魅力的な選択肢です。この記事では、計画の段階から意識すべき重要なポイントを詳しく解説し、成功事例も交えて理想の店舗付き住宅を実現するヒントをお届けします。

店舗付き住宅のメリット


店舗付き住宅は、事業を営みながら生活拠点を一体化することができます。住居と店舗を兼ねることで、家賃の削減や時間の効率化といった経済的メリットを享受できます。

また、デザインの自由度や将来的な賃貸活用など、資産価値を高める選択肢も広がります。

さらに、エリア選定の自由度が増し、競合の少ない環境での出店も可能です。ここでは、店舗付き住宅がもたらす魅力を具体的なポイントに分けて詳しくご紹介します。

自宅を活用することで地代家賃を抑えられる

店舗付き住宅を選ぶ大きな理由の一つが、毎月の地代家賃を抑えられる点です。店舗と住宅を別々に借りる場合、住居と店舗の2つの家賃を支払わなければならず、特に都市部ではこの負担が非常に大きくなります。
例えば、店舗の家賃が月額30万円、住居が15万円とすると、合計で月45万円の固定費が必要になるでしょう。

一方、自宅を活用して店舗付き住宅とする場合、地代や家賃が発生しないため、毎月の出費が大幅に軽減できます。

また、住宅ローンを利用して自宅を店舗付き住宅にリノベーションするケースでは、ローン返済額が家賃に比べて安く抑えられることが多いです。事業経営における固定費削減は、利益率の向上につながるため、大きなメリットといえます。

出勤時間を削減して働ける

自宅が店舗としても機能する店舗付き住宅では、出勤のための時間が不要になります。通勤ラッシュで疲れる心配もなく、交通費も削減できます。

また、自宅と店舗が一体化しているため、営業準備や片付けに取り掛かる時間も短縮されるでしょう。時間の余裕ができる分、趣味や自己啓発のために使える時間を増やすことが可能です。

さらに、小さなお子さんがいる家庭では、育児と仕事を両立しやすくなる点も見逃せません。
例えば、昼間は店舗で接客を行い、合間に子どもの世話をするなど、柔軟な生活スタイルが実現できます。効率的な働き方を追求したい方にとって、店舗付き住宅は魅力的な選択肢となるでしょう。

事業の用途に合わせたデザインの自由度

店舗付き住宅では、自分の所有物件を活用するため、賃貸物件のように契約条件に縛られることがありません。これにより、店舗のデザインやレイアウトを事業の用途に合わせて自由にカスタマイズすることができます。
例えば、カフェであれば大きな窓を設けて開放的な雰囲気を演出したり、美容サロンであればシックで落ち着いた空間に仕上げることも可能です。

法律や建築基準法を遵守すれば、リノベーションの際に他の制約はほとんどありません。そのため、他店との差別化を図るために独自性の高いデザインを採用することができるのです。こうした自由度の高さは、顧客満足度を高める要因にもなります。

出店するエリア候補が広がる

店舗付き住宅は、一般的な商業用物件では実現が難しいエリアへの出店を可能にします。例えば、第一種低層住居専用地域など、商業用店舗の建設が制限されている場所でも、店舗付き住宅であれば出店が許可される場合があります。こうしたエリアは競合店が少ないことが多く、集客しやすい環境を整えるチャンスが広がります。

さらに、地域密着型の事業を展開する場合には、住宅街や地元の人々が日常的に集まる場所に店舗を構えることで、顧客との距離を縮めることができます。独自の市場を開拓したい方にとって、店舗付き住宅は大きなメリットをもたらすでしょう。

リノベーション費用を経費精算できる

店舗付き住宅のリノベーション費用は、事業経費として計上できる場合があります。
例えば、店舗部分の改装費や設備投資は減価償却の対象となり、税務上の負担を軽減する助けになります。
このような節税効果は、特に開業初期の資金繰りに大きなメリットをもたらします。

また、リノベーションの際に政府や自治体が提供する補助金制度を活用すれば、さらに費用負担を軽減できる可能性があります。
具体的には、省エネ改修や耐震補強に関する補助金が挙げられます。こうした制度を上手に利用することで、コストパフォーマンスの高いリノベーションを実現できるでしょう。

事業用ローンよりも金利が安い住宅ローンを利用できる

店舗付き住宅では、住宅ローンを利用することで、事業用ローンに比べて低い金利で資金調達が可能です。これは、住宅ローンが居住用不動産を対象としているため、金融機関がリスクを低く見積もることに起因しています。
例えば、店舗部分が建物全体の50%以下であれば、住宅ローンを適用できるケースがあります。

住宅ローンを活用することで、初期投資を抑えつつ、月々の返済額も軽減できるため、事業の収益性を高める助けとなります。資金計画をしっかり立てることで、長期的な安定経営が期待できるでしょう。

将来的に賃貸経営にも活用できる

店舗付き住宅は、自身が事業を終えた後にも有効活用できる点が魅力です。例えば、店舗部分を賃貸スペースとして貸し出すことで、家賃収入を得ることが可能です。

また、住居部分を分離して賃貸物件とすることで、収益を増やす選択肢も広がります。

このように、店舗付き住宅は事業を行う場としてだけでなく、資産価値を高める不動産投資としての側面も持っています。将来的な選択肢を考慮しながら、初期の設計やリノベーション計画を立てることで、長期的な資産運用にもつながるでしょう。

以上のように、店舗付き住宅には多くのメリットがあります。それぞれの利点を最大限に活かしつつ、自身のライフスタイルや事業内容に合ったプランを検討することが重要です。

店舗付き住宅のデメリット

店舗付住宅 デメリット
店舗付き住宅には多くのメリットがある一方で、注意すべきデメリットも存在します。
例えば、リノベーション費用が高額になりやすい点や、住み替えや売却の際にリスクが伴う点が挙げられます。

また、仕事と生活の境界が曖昧になることで、オンオフの切り替えが難しくなるケースもあります。さらに、税金面の対策を怠ると予期せぬ負担が発生することも。これらの課題を理解し、対策を講じることで、店舗付き住宅の魅力を最大限に活かすことが可能です。

リノベーション費用がかさむ

店舗付き住宅の魅力は多いものの、リノベーション費用が高額になる可能性は避けられません。
とくに、築年数が古い物件を購入して改装する場合、建物全体の耐震補強や断熱改修が必要となり、そのコストが予想以上にかさむことがあります。

また、店舗部分と住居部分の用途が異なるため、それぞれに適した設備や内装工事を行う必要があります。
例えば、飲食店であれば換気設備や厨房機器の導入、美容サロンならば給排水工事が追加されることもあります。こうした費用を最初にしっかりと見積もり、優先順位を明確にすることが重要です。

住み替えや売却リスクが伴う

店舗付き住宅は一度購入すると、その特異性から住み替えや売却が難しい場合があります。特に、店舗付きという性質上、一般的な住宅としての需要が低くなることが考えられます。

また、店舗として使用されていた部分が居住用として転用しづらい場合、購入希望者の条件に合わないケースも少なくありません。そのため、将来的な計画を視野に入れつつ、慎重に物件選びを行う必要があります。

オンオフの切り替えがしづらい

自宅と店舗が一体化していることで、仕事とプライベートの境界が曖昧になりやすいという点もデメリットの一つです。特に、仕事中に家族の生活音が店舗部分に漏れるなど、顧客に不快感を与える可能性があります。

また、住居部分に仕事のストレスを持ち込みやすくなるため、精神的なオンオフの切り替えが難しくなることもあります。この問題を回避するには、物理的に店舗と住居を分ける工夫や、動線をしっかりと計画することが求められます。

税金対策も必要

店舗付き住宅では、税金面の注意も欠かせません。固定資産税や都市計画税は、店舗部分と住居部分で異なる課税基準が適用されるため、正確な計算が必要です。

また、事業所得に関連する経費として計上できる項目と、住居部分に関する費用の区別を明確にしておく必要があります。これらを適切に処理するためには、税理士などの専門家に相談しながら、税務対策を講じることが重要です。

中古物件をリノベーションする際の注意点


次に、実際のリノベーション時の注意すべきポイントについても整理していきましょう。

用途地域や消防法を確認する

中古物件を店舗付き住宅としてリノベーションする際、用途地域や消防法などの法規制を確認することが欠かせません。
例えば、第一種低層住居専用地域では、一定の制限内でしか商業活動が認められません。

また、消防法に基づく防火管理や設備の設置が求められる場合があります。これらの規制を満たさないままリノベーションを進めると、後々トラブルにつながる可能性があるため、専門家に相談しながら計画を進めることが重要です。

費用とローン計画を立てるポイント

リノベーション費用を賄うためには、しっかりとしたローン計画が必要です。住宅ローンを利用する場合、店舗部分が建物全体の50%以下であれば、金利の低い住宅ローンを適用できる可能性があります。

また、工事費用に関しては、事前に詳細な見積もりを取り、予算オーバーを防ぐよう心がけましょう。

さらに、補助金制度を活用することで、断熱改修や耐震補強にかかる費用を抑えることが可能です。費用とローンの計画を立てる際は、将来の返済計画も見据えた無理のない設定が大切です。

地震や断熱性能を向上させる

日本は地震が多い国であるため、中古物件をリノベーションする際には、耐震性能の向上が最優先課題となります。とくに1981年以前の旧耐震基準で建てられた建物の場合、現行の新耐震基準に適合させる補強が必要です。

また、断熱性能も重要な要素です。古い住宅では断熱材が不十分で、冬は寒く夏は暑いといった問題が生じることが多いため、外壁や窓の断熱改修を行うことで快適性を高めることができます。

断熱性の高い家にすることで、冷暖房の効率が向上し、光熱費を削減できるだけでなく、居住環境の質も大きく向上します。こうした改修技術を活用することで、新築時以上の性能を持つ店舗付き住宅に生まれ変わらせることが可能です。

店舗付き住宅リノベーションの抑えるべきポイント

店舗付住宅 リノベーション ポイント
次に、店舗付き住宅をリノベーションする上で抑えるべきポイントを確認しておきましょう。

リノベーションしやすい物件を選ぶ

店舗付き住宅のリノベーションを成功させるためには、まず適した物件を選ぶことが重要です。リノベーションしやすい物件とは、構造がシンプルで改修の自由度が高い物件を指します。
例えば、木造軸組工法の住宅は、間取り変更が容易であり、店舗スペースと住宅スペースを柔軟に設計できます。一方で、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の物件は、壁の移動が難しく、コストが高くなる傾向にあるため注意が必要です。

また、店舗としての利用が想定される立地であるかどうかも確認しましょう。周辺の交通アクセスや人口密度、地域の需要などを調査することで、ビジネスに適した物件を見極めることができます。物件選びの段階で専門家のアドバイスを受けることが成功の鍵です。

集客につながるおしゃれな外観に

店舗付き住宅では、外観が集客に与える影響が非常に大きいです。特に初めて来店するお客様にとって、店舗の外観はその店の印象を左右する重要な要素です。リノベーションの際には、店舗の個性を引き立てるデザインを採用しましょう。
例えば、カフェなら木目調の温かみのあるデザイン、美容サロンなら洗練されたモダンな外観が効果的です。
看板やエントランスも重要なポイントです。店舗名を目立たせる工夫や、来店客が入りやすい雰囲気を演出することが求められます。地域の景観や建物の制約を考慮しながら、魅力的なデザインを実現することが、集客力を高める鍵となるでしょう。

店舗動線と生活動線を区別した間取り設計

店舗付き住宅の間取りを考える際には、店舗の動線と生活の動線を明確に分けることが重要です。この2つの動線が交わると、プライバシーが損なわれたり、業務がスムーズに進まなくなったりする恐れがあります。
例えば、店舗部分と住居部分の入り口を分けるだけでなく、内部の動線も計画的に設計しましょう。

店舗部分にはお客様や従業員が動きやすいレイアウトを取り入れ、生活部分には家族が快適に過ごせるプライベート空間を確保することが理想です。また、音漏れやにおいの問題にも配慮し、壁材や扉の選定を慎重に行うことがポイントです。

1階部分を店舗スペースにする

リノベーションの際には、1階部分を店舗スペースにすることを検討しましょう。道路に面した1階は視認性が高く、歩行者が立ち寄りやすい位置にあります。また、住居部分を上階に配置することで、プライバシーが守られるだけでなく、生活空間を落ち着いた環境にすることが可能です。

とくに飲食店や物販店の場合は、1階に店舗を設けることで、集客力が向上します。さらに、1階に店舗を構えることで、バリアフリー化がしやすく、高齢者や車椅子利用者にも優しい設計が実現できます。

玄関を分ける

店舗付き住宅では、店舗と住居の玄関を分けることが重要です。共通の玄関を利用すると、生活感が店舗部分に影響を及ぼし、お客様の印象を損なう可能性があります。
さらに、店舗と住居が同じ玄関を共有すると、掃除や整理整頓にかかる手間が増えるだけでなく、混雑やトラブルの原因にもなり得ます。

玄関を分けることで、住居部分にプライバシーが保たれ、生活空間の快適性が向上します。

また、店舗の入り口はお客様を迎え入れる「顔」としての役割も担うため、デザイン性やアクセスのしやすさにもこだわりましょう。

将来住宅利用のみになる可能性も視野に

店舗付き住宅を計画する際には、将来的に店舗部分を住宅として利用する可能性も考慮しておくことが大切です。事業の方針変更や引退などにより、店舗部分が不要になる場合でも、住居として快適に使える設計にしておけば無駄を減らせます。

例えば、店舗部分を取り壊さずに部屋として転用できるような間取りにしておくと、リノベーションのコストを抑えられます。

また、店舗部分を賃貸スペースとして貸し出す選択肢も視野に入れ、柔軟に対応できる設計を心がけましょう。

事例

自宅の1階をヒーリングサロンに

店舗付き住宅 リングサロン
自宅の1階をヒーリングサロンとしてデザイン・施工させていただきました。看板も設置していないこのサロンはお店なのか、住宅なのか一見では分かりません。
しかし、間違いなく”何かある”と感じさせる佇まい。1組限定かつ事前予約制であるため、飛込みのお客様が入れないようにしており、予約してくださったお客様と真剣に向き合い、安心を与えれるような環境を作っております。

母から受け継いだ二連長屋に素敵なアトリエを


「お家で快適に働ける、住み心地の良い店舗併用住宅」をコンセプトに設計させていただきました。
お店(アトリエ)と自宅を気軽に行き来したいとのご要望から元々1階にあった水周りを2階に配置することで、1階だけで自宅のリビングとお店を気軽に行き来できるようになりました。

また、普段過ごすことが多い店舗側にも断熱をしっかり入れることで快適に過ごせる空間になりました。

まとめ

店舗付き住宅のリノベーションは、適切な物件選びやデザインの工夫、動線や間取りの設計、そして将来を見据えた計画が成功の鍵となります。また、専門家の意見を活用しながら、法律や税務面の対策も忘れずに行うことが重要です。
これらの要素をしっかりと計画に取り入れることで、ビジネスと生活を両立させる魅力的な店舗付き住宅を実現できるでしょう。長期的に快適で収益性の高い住まいを目指し、最適なリノベーションプランを作り上げてみてくださいね。

WRITERこの記事を書いた人

デザイナー

菅原 沙絵SAE SUGAHARA

設計 / 大阪府大阪市出身 / 普段からデザインを意識的に見て、自分ならどうするのか考えるようにしてます / インテリア雑貨が好きでナチュラル・シンプルなものを集めることにはまっています

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