2026.10.16
最終更新日
2026.10.16
リノベーションのヒント

二世帯住宅でキッチンは共有しリビングは別に|玄関と水回りも一緒にした長屋の実例

長屋のリノベーション施工事例

二世帯住宅でキッチンを共有するか、リビングを分けるかは、「完全分離か同居か」の二択で決めなくて構いません。玄関・キッチン・浴室・リビングを一つずつ、共有するか分けるかで組み立てられます。

たとえば大阪市住吉区で、生まれ育った長屋と空き家になっていたお隣の長屋をつなげ、3世代で暮らすT様の住まいでは、玄関とダイニングキッチン、浴室などの水回りを共有し、リビングは1階と2階で世帯ごとに分けて、家の真ん中の吹き抜けで上下階をつなぎました。

この記事では、二世帯住宅の部分共有型と費用の目安、共有する場所と分ける場所の決め方を、住吉区の長屋の実例(共有した場所とねらい、吹き抜けのための構造の確認)とあわせて紹介します。

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二世帯住宅の部分共有型はキッチンや玄関をどこまで共有するかで形が変わる

二世帯住宅の間取りには、大きく分けて完全分離型・部分共有型・完全同居型の3つの型があります。このうち部分共有型は「どこを共有し、どこを分けるか」の組み合わせが家族ごとに違います。玄関だけを共有する家もあれば、キッチンや浴室まで共有する家もあります。

表は横にスクロールできます →

型共有するもの・分けるものリフォーム費用の目安(1棟・税込)
完全分離型玄関からキッチン・浴室・トイレまで世帯ごとに分ける1,000万〜3,000万円
部分共有型玄関・キッチン・浴室など一部を共有し、ほかは世帯ごとに分ける300万〜1,000万円
完全同居型玄関からキッチンまでを共有し、個室を世帯ごとに分ける150万〜300万円

共有する設備が多いほど新しくつくる設備が減るため、費用は下がりやすくなります。ただ、同じ部分共有型でも、間取りの変更や建物の補強、設備の入れ替えをどこまで一緒に行うかで総額は大きく変わります。後で紹介するT様の住まいは、2軒の長屋をつなげて全体をフルリノベーションした工事で、参考費用は4,640万円(築年数不詳・180.12㎡・税別)です。部分共有型にする工事以外にも駐車場の整備、外壁塗装、サッシの入替、庭の整備などフルリノベーションさせて頂きました。

型ごとの費用の考え方や、使える補助金・減税はこちらの記事で紹介しています。

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二世帯住宅でキッチンを共有しリビングを分けた住吉区の長屋の事例

2軒の長屋をつなげて玄関とダイニングキッチンをひとつにした

改修前の外観。外壁の異なる2階建ての建物が2軒並んでいる

大阪市住吉区の木造の長屋2軒(築年数不詳・戦後)をつなげ、180.12㎡(ガレージ除く)の住まいにフルリノベーションした事例です。工期は約150日。改修前は2軒それぞれに玄関・キッチン・浴室・トイレ・階段がありました。

打ち合わせの初期に、T様からは「できるだけ1階に水回り、2階にT様世帯の部屋や収納」というイメージをいただいていました。そこに私たちから提案したのが、玄関とダイニングキッチン、水回りを二世帯で共有し、リビングは1階と2階で世帯ごとに分け、上下階を吹き抜けでつなげるプランです。改修後の間取り図で、共有した場所と分けた場所を並べると次のとおりです。

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場所共有か分けたか(改修後)ねらい
玄関1階に1か所を共有並んでいる靴を見るだけで、今誰が家にいるかが分かる
ダイニングキッチン1階に1か所を共有。コの字に並んだキッチンとダイニング行き帰りに顔を合わせる時間ができる。キッチン側からもダイニング側からも座れて、家族みんなで食卓を囲める
浴室・脱衣所・ランドリー1階に1か所を共有T様の「できるだけ1階に水回り」というイメージに合わせた
トイレ1階と2階に1か所ずつ。2階には洗面ボウルも—
リビング1階(図面の表記は「リビング/寝室」)と2階に分けたそれぞれの世帯が自分のペースで過ごす時間を守る
寝室・子ども部屋・収納2階に寝室、子ども部屋2室、収納T様の「2階にT様世帯の部屋や収納」というイメージに合わせた
改修後1階の間取り図。玄関・ホール・階段の横にダイニングとコの字のキッチン、奥に浴室・脱衣所・ランドリー、トイレ、リビング/寝室、ガレージがある
改修後2階の間取り図。中央の吹き抜けと階段のまわりにリビングとフリースペース、寝室、収納、トイレ、子ども部屋2室がある
柳川 映子柳川 映子

担当デザイナー

安心感と各世帯の時間をどう両立させるかがテーマだった

広さだけ見れば、完全分離の二世帯にすることも十分にできました。ただ、T様とお話しする中で見えてきたのは、生活の場所を切り離すより、ほどよい距離で家族が近くにいる環境で暮らしたいという思いでした。家族が近くにいる安心感と、それぞれの時間を尊重する独立性。この2つをどう両立させるかを設計のテーマにして、共有するか分けるかを場所ごとに決めていきました。

木の天板のカウンターを椅子4脚が囲み、奥にキッチン、右に電子キーボードがある1階のダイニングキッチン

共有したキッチンは、収納と調理スペースを広くとり、親子で並んで作業できるようにしました。キッチンとカップボードは奥様が選んだWOODONEのsu:iji(スイージー)で、ダイニングテーブルも同じパイン材でそろえています。

玄関の土間に置かれた黒い靴と、その上の曲線の上がり框

↓こちらの施工事例もご覧ください


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リビングを分けても家族の様子が伝わるように吹き抜けで上下階をつないだ

リビングを1階と2階に分けると、別の階にいる家族の様子は分かりにくくなります。T様の住まいでは、家の真ん中に吹き抜けを設け、1階と2階で離れていても、声や物音、光が上下に届くようにしました。晴れた朝は窓から光が入り、雨の日や夕暮れは吹き抜けに下げた丸いペンダントライトが家の中心を照らします。

2階の手すり越しに見た吹き抜け。丸いペンダントライトと階段、奥の壁に縦長の窓が3つ並ぶ

2階のリビングとフリースペースは吹き抜けのまわりにあり、階段を上がったところから1階の玄関まで見下ろせます。顔は見えなくても、夜、子どもたちが眠る前に交わす「おやすみ」が家のどこかから聞こえてきます。

階段の上から見下ろした1階。木の床とタイルの土間、ドア、丸いペンダントライトが見える

吹き抜けは、開放感やデザイン性のメリットがある反面、空調や音についてデメリットが生じる場合もあります。気になる方はこちらの記事もご覧ください。

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住吉区の長屋では吹き抜けのために梁を補強し解体後の現場で確かめた

T様の住まいは、もともと柱や壁が多い長屋です。間仕切りを減らして広い場所をつくること自体が構造の面で難しいうえに、2軒にあった階段をひとつにまとめて位置を動かし、新たに吹き抜けを設けました。このプランは図面だけでは決めきれず、解体後の現場で確かめながら進めました。

長屋は隣り合う住戸が構造を共有していて、抜ける壁もあれば、残さなければならない部分もあります。つなげる長屋や吹き抜けの位置によって、できることは変わります。

柳川 映子柳川 映子

担当デザイナー

吹き抜けの大きさと光の入り方は現場で一緒に確かめた

社内で窓の大きさやレイアウトを検討し、吹き抜けまわりの梁の補強や天井の高さは、現場で大工さんと細かく打ち合わせました。構造の安全性を確かめたうえで、T様にも現場に来ていただき、「吹き抜けの仕上がりはこれくらいの大きさになります」「この窓の配置なら、2階の光がここまで届きます」と、実際の場所に立って一緒に確かめていただきました。

長屋のリノベーションで構造について気をつけたいことは、こちらの記事で紹介しています。

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二世帯住宅で共有する場所は一緒にいたい場面と一人で過ごしたい場面で選ぶ

共有するか分けるかは、場所ごとに「一緒にいたい場面」と「一人で過ごしたい場面」を思い浮かべると決めやすくなります。具体的には、次のような点を家族で話し合います。

  • 一緒に食卓を囲みたいのはどんなときか。朝や夕方にキッチンを使う時間が重なりそうか。
  • 玄関を共有するか。別の二世帯の住まいを計画したお客様は、「完全に分けると行き来がしにくくなるけど、共用にすると生活リズムが交わる場面も多くなりますよね」と話しています。
  • 声や音が届いてほしい場所と、届いてほしくない場所はどこか。吹き抜けや階段の位置、寝室の場所の決め方に関わります。
  • 子どもが成長したときや、親世帯に手助けが必要になったときに、どの部屋の使い方を変えられるか。

玄関を共用にするか分けるかを話し合い、1階と2階で暮らしを分けた摂津市の二世帯の住まいは、担当スタッフとの対談と、住まい手へのインタビューの2本で紹介しています。

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キッチンと水回りは共有しリビングは上下階で分けた二世帯住宅のまとめ

二世帯住宅は、完全分離か同居かの二択ではなく、玄関・キッチン・水回り・リビングを一つずつ共有するか分けるかで決められます。T様の住まいでは、玄関とダイニングキッチン、浴室などの水回りを共有して顔を合わせる時間をつくり、リビングは1階と2階に分けて各世帯の時間を守り、吹き抜けで声と光が上下に届くようにしました。吹き抜けでつなぐなら、音と冷暖房の考え方も設計の段階で確かめます。

実家や気になる物件で、どの壁を抜けるか、階段や吹き抜けをどこに置けるかは、現地で建物を見ないと分からないことも多くあります。共有する場所の組み合わせと、その建物で取れる間取りをあわせて考えたいときは、お問い合わせからご相談ください。

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WRITERこの記事を書いた人

デザイナー

柳川 映子AKIKO YANAGAWA

島根県浜田市出身 / お客様の夢やこだわりをデザインで形にできるよう、日々勉強中です。/ 将来は縁側とお庭のあるおうちを自分でリノベーションして住むことが夢です。

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