火事で家の一部が焼けたらどこを直す?やる工事・やらない工事の分け方と実例

火事で家の一部が焼けたとき、家全体を新しくするか、焼けたところだけ直すかの二択で考える必要はありません。柱や梁がまだ使えるか、その階や部屋の被害がどれだけ大きいか、火事の前から不満があった場所か、予算をどこに回すか。この4つを見ていけば、「やる工事」と「やらない工事」を分けられます。
この記事では、火事で半壊した大阪府の木造戸建てで工事の範囲をどう決めたかと、範囲を決めるときの4つの目安を紹介します。
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火事で一部が焼けた家は「全部直す」と決めなくていい
一部が焼けた家は、被害の大きい場所には大きく手を入れ、被害の軽い場所は残すというように、場所ごとに工事の深さを変えて直せます。そのために、最初にどこを変えてどこを残すかを決めます。
大阪府の築15年の木造2階建て(106.11㎡)は、火事で半壊した状態からの工事でした。被害は1階に集中し、2階は比較的軽く済んでいました。全部直す予算もなければ、全部残せる状態でもありませんでした。

写真は火事のあとの1階のリビングです。天井と壁は黒くすすけ、家具や物がそのまま残っていました。

工事後の同じ1階です。白い壁と明るい床のLDKに、奥のキッチンまでが見通せます。
この住まいでは、現地で何度も打ち合わせを重ねて「やる工事」と「やらない工事」を分け、予算の配分を決めました。1階はすべてに手を加え、2階は火事の被害があった水回りの更新と内装替えを中心にして、状態の良かったフローリングはそのまま残しています。参考費用は1,690万円(税別)です(築15年・106.11㎡・フルリノベーション・工期約90日)。
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「半焼」「部分焼」は損害額の割合で決まる消防の区分
「半焼」「部分焼」は、消防が火災を報告するときに使う焼損の程度の区分で、焼けた面積ではなく損害額の割合で決まります。消防白書では、次のように説明されています。
- 全焼:建物の焼損部分の損害額が火災前の建物の評価額の70%以上のもの、またはこれ未満であっても残存部分に補修を加えて再使用できないもの
- 半焼:建物の焼損部分の損害額が火災前の建物の評価額の20%以上のもので、全焼に該当しないもの
- 部分焼:建物の焼損部分の損害額が火災前の建物の評価額の20%未満のもので、ぼやに該当しないもの
この区分は建物全体の損害の割合を表すもので、どの柱を残せるか、どの部屋をどこまで直すかまでは示していません。工事の範囲は、区分の名前とは別に、家の中を一つずつ見て決めていきます。
参考:総務省消防庁「令和6年版 消防白書」第1章第1節 火災予防(第1-1-6図の備考)
火事のあとの調査の進め方や、火災保険の使い方は火事にあった家のリフォームの記事で紹介しています。
LINEで相談・無料診断リノベーションについて相談するやる工事とやらない工事を分ける4つの目安
大阪府の住まいで工事の範囲を決めたときの考え方を、4つの目安に分けて紹介します。
①柱や梁の内側まで火が入っているかを大工が見る
最初に見るのは、建物を支える柱や梁が使えるかどうかです。表から見えるのは焦げ跡だけで、柱や梁の内側まで火が入っているかは、建物を触ってきた専門家が見ないと分かりません。

写真は火事のあとのダイニングとキッチンです。天井の板がはがれ、奥のキッチンまで黒くすすけています。
営業ディレクターの山根は、「火災の復旧は、燃えた部分より『燃えていないけれど使えない部分』の見極めが難しいんです」と話しています。この住まいでは、ふだんは必要に応じて後日に呼ぶ大工に、初回の現地調査から同席してもらいました。順番に人を呼んでいると見立てに時間がかかり、予算や工期がぶれてしまうためです。「こちらの柱は再利用可能です」「この梁は交換しましょう」と、デザイナー・施工管理・大工がその場で、やらないといけない工事とやらなくても大丈夫な工事を仕分けていきました。
お客様のD様は、そのときの大工の言葉をこう振り返っています。
「燃えている木と燃えてない木が混在してるけど、これならいけるいける!」って明るく言ってくださったのにも、すごく安心しましたね。
依頼先を選ぶときは、最初の現地調査で構造を見られる人が立ち会うかどうかを確かめておくと、工事の範囲が早く見えてきます。
②被害の大きい階は火事の前からの不満までまとめて直す
被害の大きかった場所は、元に戻すだけでなく、火事の前から不満だったところまで一緒に直す範囲に入れます。被害の修復だけで止めず、大きく手を入れるその機会に前からの不満も解消します。
大阪府の住まいでは、D様には、火事の前から1階の行き来のしにくさに不満がありました。そこで1階は、ぐるりと回れる間取りに組み替えています。和室はLDKとつながっていたところを、廊下を長くとって独立させました。D様は「和室は、前はリビングの音が気になって落ち着けなかったのが、今はとても静かで」と話しています。


上が工事前、下が工事後の1階です。工事後は、和室とLDKの間に廊下ができ、和室がLDKから切り離されています。
ダイニングで事務作業をしていて書類が散らかる、という困りごとも早い段階で出ていました。
LINEで相談・無料診断リノベーションについて相談する③被害の軽い場所は残して新しい部分になじませる
被害の軽い場所は、使えるものを残し、新しくした部分と建材や色を合わせます。
大阪府の住まいの2階では、火事の被害があった水回りを新しくして内装を替え、状態の良かったフローリングと間取りはそのまま残しています。

工事後の2階の間取り図です。トイレ・脱衣所・浴室と3つの洋室の並びは、工事前と同じです。
高橋 桃子担当デザイナー
残せるものは残す
火事のショックでつい「全部新しくしたほうが安心」と思いがちな場面ですが、残せるものは残す。そのほうが、家としての記憶も、予算の使い方も、いい形に収まります。ただし、残すと決めた瞬間に仕事が終わるわけではありません。新しい内装と、既存のフローリングが違和感なく馴染むように、建材や色、素材を緻密に合わせていく。「残す」のほうにこそ、丁寧な仕事の重みがかかります。
残した部分には、傷んだところだけを直す方法もあります。この住まいでは、火事で焦げ跡が付いていた階段の踏み板を、上から貼れる蹴込板で直しました。

④外まわりと内装のどちらに予算を回すかを決める
予算に限りがあるなら、どこにお金をかけるかも工事の範囲を決める材料です。大阪府の住まいでは、高額になりがちな外まわりの工事を必要最低限におさえ、その分をD様の好きなデザインや内装に回しました。
どこを残してどこを新しくするかを細かく決めるために、打ち合わせが週に4回になった時期もあります。D様は、これから家づくりをする人へのアドバイスとして「自分が好きなテイストを遠慮せずに全部書き出してみること」「そこからプロの意見を聞きながら現実的でないものを削ぎ落としていって、最終的に『絶対に譲れない軸』を残す」ことを挙げています。


上が火事のあとの、下が工事後のキッチンです。
工事のあいだの仮住まいの探し方は、家が火事になったらどこに住むかの記事で紹介しています。
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一部が焼けた家の工事範囲を決める前に
火事で一部が焼けた家は、全部を新しくするか、焼けたところだけ直すかの二択ではありません。柱や梁が使えるかを大工が見て、被害の大きい場所は火事の前からの不満まで含めて直し、被害の軽い場所は残して新しい部分になじませる。外まわりのように費用のかかる工事をどこまでやるかも、範囲を決める材料になります。
大阪府の木造戸建てでは、初回の現地調査から大工が立ち会って柱と梁を仕分け、1階は間取りから組み替え、2階は水回りと内装を中心に直してフローリングを残しました。
これから工事の依頼先に家を見てもらうなら、最初の現地調査で柱や梁の状態を見られる人が立ち会うかを聞き、あわせて火事の前から困っていたことを書き出しておかれてはいかがでしょう?
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担当デザイナー
以前からの困りごとに合わせて壁を造作
以前からダイニングで事務作業をしていたため、散らかりがちだったダイニングスペース。そこで、A4サイズが入るキャビネットの奥行きに合わせて、キッチンカウンターの壁を造作させていただきました。使い勝手を考え、高さがオーダーできる既製品の家具を組み立てて、設置。ダイニングがすっきりと整理できるようになりました。