躯体現し(くたいあらわし)を解説!戸建・マンションのリフォーム・リノベーションにおけるメリット・デメリット
リフォーム・リノベーションのご相談に来るお客様のほとんどが、事前にInstagramやPinterestなどからお好きなデザインや間取り、仕上げに使う素材などを調べて来られます。
その中でも最近、「これってどうなってるんですか?」「うちでも出来ますか?」とよく聞かれるのが躯体現し(くたいあらわし)仕上げについてです。
そこで今回は、戸建住宅で多い木造や、マンションで多い鉄筋コンクリート造(RC造)などの構造別に、躯体現し仕上げを導入する際のメリットやデメリット、気をつけるべき点について解説していきます!
目次
躯体現し(くたいあらわ-し)って何?
「躯体現し」とは通常は隠してしまう、建物を支える骨組みを見せた状態で仕上げることをいいます。
例えば、床であればフローリング、壁/天井であれば壁紙や塗装などを施さずに完成とすることです。躯体現しと呼ばずに、現しと呼ぶこともあります。
まずは、実際のリノベーション事例を見てみましょう。
【マンション|鉄筋コンクリート造】躯体現しリノベーション事例
天井躯体現し | 仕上げ:素地(そじ) | 取り入れやすさ★☆☆
思い切って天井一面を現しにし、コンクリートの素地をそのままで仕上げかなりラフな仕上がりです。古くなったコンクリートの粉や、ほこりが落ちてこないか心配な方は、クリアーを使った防塵塗装をおすすめします。
クリアーの防塵塗装とは、透明のコーティング塗料のことで、劣化を防ぎ、チリやホコリなどが付着することを防ぐものです。
防塵塗料の中には、半透明のブラック色もあるので、それらを使ってよりインダストリアルでカッコいい空間にするのも良いかもしれません。
コンクリートの状態によっては荒々しい印象になり、似合うインテリアも限られてきますので、取り入れやすさとしては星1つ。
ですが、コンクリートの素地のままの仕上げが合うデザインもありますので、ぜひリフォーム・リノベーションのプロに相談してみましょう。
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天井躯体現し | 仕上げ:塗装 | 取り入れやすさ★★
天井一面を現しにするのは先ほどの事例と同じですが、現しにした後に白く塗装しています。
塗装仕上げにすることで、インダストリアル過ぎず、少し凹凸があったり、ムラがあったりと綺麗過ぎない、ほど良いラフなデザインになります。
ちょっとしたラフさがインダストリアルなデザインやモダンなインテリアテイストが好きな方に人気です。
梁躯体現し | 仕上げ:左官(コテ抑え) | 取り入れやすさ★★★
こちらは梁を現しにしていますが、表面の仕上げはモルタルという材料を左官(コテという道具を使って塗る)で仕上げています。
今回は左官の中でも、つるっとした見た目の『コテ抑え』という仕上げですが、あえてムラをつけたデザインなど、様々な見栄えにすることが可能です。
左官で仕上げると既存の壁面の状態に左右されず、荒さも軽減されるのでインテリアコーディネートの選択肢も増えます。
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壁・梁躯体現し | 仕上げ:素地/左官(コテ抑え) | 取り入れやすさ★★☆
先ほどの事例と同様に梁の現しに加えて、壁の一部も現しにすることで空間のアクセントとして取り入れている事例です。
建てられた当時の大工さんの墨出し(墨でつけられた、壁などの基準となる線)の跡が見えることもあります。
建物ごとにコンクリートの色や墨の残り方も違い、ヴィンテージ感漂うオリジナリティの高い壁面になることも。
コンクリート現しにした壁面に絵やタペストリーを飾ることで、さらに個性をいかしたコーディネートにすることもできます。
▼この壁・梁躯体現しのリノベーション事例はコチラ!
【戸建|木造】躯体現しリノベーション事例
天井現し(躯体部分:野地板) | 仕上げ:素地 | 取り入れやすさ★☆☆
木造現しの中で一番ダイナミックで、解放感あるのが天井の躯体現し方法です。建てられた当時の躯体を見せることができます。
木材にも良し悪しがあり、良い木材を使って建てられている場合にオススメです。しかし、躯体の下に天井が作られている場合が多いので、既存天井を解体してみてからでないと良い木材かどうか判断できません。
さらに、こういった仕上がりにする場合は天井は外断熱にする必要があります。綺麗な状態の木材に出会える可能性が低いのと、外断熱と工事の規模が大きくなるので、取り入れやすさは星1つです。
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天井現し(躯体部分:梁・小屋束)| 仕上げ:ベニヤ板塗装 | 取り入れやすさ★★★
既存の丸太の梁が印象的な空間に仕上がっています。この仕上がりの場合は、梁の色に合わせて薄いベニヤ板を塗装し貼るので、既存の梁にも似合った木の温かみを感じられるお部屋になります。
外断熱をしないでコストを抑えつつ、既存の天井の木材の状態が良くなくても現し仕上げにする方法です。
また、マンションの天井躯体現しでご紹介した事例とは違い、荒々しさはかなり軽減されインテリアコーディネートもしやすい仕上がりになっています。
▼この天井躯体現しのリノベーション事例はコチラ!
天井現し(躯体部分:2階床下地) | 仕上げ:塗装 | 取り入れやすさ★★☆
1階の天井を現しにし、2階の床組(床を支える構造部分)を見せる仕上げです。この仕上げの場合、上2つの仕上がりとは違った印象になっています。
2階の床組を見せる仕上げであれば、屋根裏の断熱方法に関係なく現し仕上げにすることができ、取り入れやすいのが特徴です。
躯体現しを取り入れる前に知っておきたいこと
さらに詳しく、躯体現しって?
躯体現しの「躯体」とは建物の構造を支える骨組みのことを言います。
鉄筋コンクリート造(RC造)の建物では、「コンクリートを流し込んで作られる部分」など、木造の建物であれば「柱や梁」など、鉄骨造(S造)の建物では、「鉄製の柱や梁」など、これらを躯体と呼びます。
例えば、木造の建物をより細かくわけると、上の画像のように建物の中に躯体と呼ばれる部分はたくさんあります。
現し仕上げと一言で言っても、「どの躯体を見せるか」によって完成時の印象はまるで違ってきます。前述の躯体現し事例などを参考にリフォーム・リノベーションのプロに「こういう風にしたい」と伝えるところからスタートし、「どこを見せるか」の詳細な打ち合わせを重ねていきましょう。
【マンション|鉄筋コンクリート造】躯体現しのメリット・デメリット
躯体現しのメリット
・コンクリート独特の質感・ラフさを表現できるのが魅力
建物ごとにコンクリートの状態も違うので、表情豊かなデザインにできること間違いなしです。コンクリート柄の仕上げ材には出せない、本物の手触り・質感を体感できます。
・天井を現しにすれば、天井高が高くなることがある
マンションは床から天井までの高さを指す「天井高」が低い場合が多いですが、天井を現しにすることで天井高が高くなることがあります。例えばリビングだけを天井現しにすることで開放的な空間にすることもできます。
お部屋ごとに現しにする箇所は検討できるので、予算と相談しながら検討してみてください。
躯体現しのデメリット
・解体をするまで躯体の状態がわからない
躯体は見せるために作られている部分ではないので、建てられた当時の工事中のメモがコンクリートに書かれていたり、壁紙を張ったときの跡が残っていたりと、そのままの状態で使えるとは限りません。
リノベーション事例でご紹介したような塗装などの選択肢など、『そのまま使えない場合』も踏まえて考える必要があります。
・マンションの最上階は躯体現しにできない場合も
写真に写っている、窓の上の黄色いモコモコした様なものが吹き付けの断熱材です。
最上階の場合、天井いっぱいに吹き付け断熱されていることが多いため、その場合は天井を現しにすることができません。
ただ、建物が建てられた当時の図面や資料が残っている場合、運良く外断熱と記載があれば、望みはあります。(管理会社か管理人室にある場合が多いので確認してみましょう)
絶対に天井を現しにしたい!とお考えの方は、最上階より下の階を選ばれることをおすすめします。
・床を現しに出来ない場合が多い
管理規約によって遮音の規定がある場合、音が下の階に響きやすくなるため、現しにすることが出来ません。
床に現しの雰囲気を出したい場合は、コンクリート調のビニール形のタイルを使ったり、フレキシブルボードというコンクリートの質感に寄せたもので代用しましょう。
【戸建|木造】躯体現しのメリット・デメリット
躯体現しのメリット
・天井を現しにすると天井高がかなり上がり広々とした空間にできる
通常では大きな梁の下に水平な天井を作るため天井は低くなりますが、現しにする場合、屋根の勾配に合わせて天井を作るので天井の高さは高くなります。
リビングの吹き抜け空間など、特に解放感が欲しいところに取り入れると雰囲気もグッとよくなります。
・木材の質感や暖かみを感じられる
壁面や天井などの多くはクロスで仕上げることが一般的ですが、空間の一面だけでも躯体現しにすると、空間の面積に対する木材の面積が広がります。
どこか木造のコテージのような雰囲気も感じることができ、独特の雰囲気を演出することが可能です。
躯体現しのデメリット
・断熱についてコストが増える場合がある
一般的に、断熱材は躯体と内装仕上げの間に詰めています。
なので、そのまま現し仕上げにしてしまうと、断熱材が露出してしまうのです。断熱性能を落とさずに、現しにする外断熱など方法はリフォーム・リノベーションのプロに相談しましょう。
▼外断熱について詳しく知りたい方はコチラ!
躯体現しを考える時は
躯体現しは「既存のものを上手く使うリフォーム・リノベーション案」として代表的と言っても過言ではありません。
新しく設置していくリフォーム・リノベーションではなく、既存のものをしっかり把握し、上手く再利用する計画性が大切です。
「必ず躯体現しを取り入れたい」という方は、不動産の選定・購入時点からリフォーム・リノベーションのプロによる調査やアドバイスが必要となります。
「できるなら躯体現しを取り入れたい」という方でも、どのような取り入れ方で、どれくらいの費用がかかるのかをリフォーム・リノベーションのプロと細かく打ち合わせする必要があります。
住まいに個性を持たせる躯体現し
魅力と難しさが共存する躯体現しですが、慎重に検討すれば必ず実現するリフォーム・リノベーションプランでもあります。
まずは一緒に躯体現しについて調査・検討・アドバイスしてくれるパートナーとなるリフォーム・リノベーション業者の選定が不可欠かもしれません。
世界にひとつだけの理想の住まいのために、ぜひ躯体現しを検討してみてください。
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