2026.10.23
最終更新日
2026.10.23
リノベーションのヒント

長屋の耐震補強は隣とどう進める?補強の範囲・費用・大阪市の補助と実例

京町屋リノベ

長屋の耐震補強は、自分の住戸の柱や梁を補強するだけでは決めきれません。隣とつながる壁や天井裏、補助金の申請先まで、棟全体のことを隣の所有者と一緒に考える必要があります。大阪市の耐震改修の補助も、長屋は原則として棟単位で申請し、他の所有者・居住者の同意を得ることが条件です。

2026年10月初めには、大阪市生野区で長屋の一角が倒壊したと報じられました。この記事では、長屋の耐震補強で隣と関わる部分、耐震診断から工事までの流れと費用の考え方、大阪市の補助の条件を、解体してから柱と梁を補強した京都市の京町家と、吹き抜けのために梁を補強した大阪市住吉区の長屋の実例とあわせて紹介します。

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長屋の耐震補強は自分の住戸だけで決められない部分がある

長屋は、隣り合う住戸が壁を共有してつながった建物です。大阪市の建築基準法の取扱いでも、長屋は「隣接する住戸が開口部のない壁又は床を共有し、廊下、階段等の共用部分を有しないもの」とされています。住戸の中の柱や梁は自分の工事として補強を計画できますが、隣と共有している部分や補助金の申請は、棟全体の話になります。

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部分長屋で気をつけること
住戸の中の柱・梁・壁隣り合う住戸が構造を共有していて、抜ける壁もあれば、残さなければならない部分もある
天井裏壁がなく、隣の住戸まで天井裏がつながっている長屋もある
隣と共有する壁・屋根工事の前に、共有する壁・屋根を触る範囲を隣の所有者と調整する
補助金の申請(大阪市)長屋は原則として棟単位で申請し、他の所有者・居住者の同意を得る

「つながっている長屋は揺れに強い」と言われることもありますが、建物の形だけで断定はできません。傷み方は一棟ずつ違うため、まずは耐震診断で今の状態を確かめます。

参考:大阪市「大阪市建築基準法取扱い 6-1 長屋の解釈」(2026年10月確認)

長屋の耐震補強は耐震診断で今の強さを確かめてから決める

補強が要るか、どこをどれだけ補強するかは、耐震診断の結果で決めます。木造住宅の診断結果は「上部構造評点」という数字で示され、大阪市の案内では次のように読み取ります。

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上部構造評点判定
1.5以上倒壊しない
1.0以上〜1.5未満一応倒壊しない
0.7以上〜1.0未満倒壊する可能性がある
0.7未満倒壊する可能性が高い

耐震診断の費用は、クジラの目安で1棟20万〜40万円(税込)です。

ただ、古い長屋は診断の数字だけでは分からないこともあります。大阪市天王寺区で、6年間空き家だった長屋をケーキ屋さんにリノベーションしたときは、床を解体して初めて、基礎がなく土に直接柱が立っていると分かりました。

この長屋を担当したディレクターは、「長屋でも古いものだと特に、今とかなり建て方が違ったり、増築されていたり、住んでいる人がご自身で工事を繰り返しされている場合も多いので、解体してみないとどういう構造の状態かが分からない部分があります。」と振り返っています。

解体後に分かったことで補強の範囲が変わる場合に備えて、工事の予算には、解体してから決める部分の費用を見込んでおきます。この天王寺区の長屋の事例と、受け継いだ長屋の空き家を直す・貸す・解体するときの選択肢は、こちらの記事で紹介しています。

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長屋の耐震補強の費用は補強そのものより解体と復旧の範囲で変わる

柱や梁を補強するには、まず床・壁・天井をはがして骨組みを出し、補強したあとで下地と内装をつくり直します。リノベーションと一緒に補強する場合、解体と復旧はもともとリノベーションの工事に含まれるため、新たに加わるのは主に柱・梁の補強の費用です。その金額は、柱・梁の傷み具合と補強する範囲で変わります。

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工事リノベーションと一緒に行う場合
①床・壁・天井の解体リノベーションの工事に含まれる
②柱・梁などの補強新たに加わる
③床・壁・天井の下地をつくるリノベーションの工事に含まれる
④壁紙などの内装リノベーションの工事に含まれる

長屋のリノベーション費用の実例や、構造について気をつけたいことは、こちらの記事で紹介しています。

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大阪市の耐震補助は長屋なら棟単位で申請する

大阪市では、平成12年(2000年)5月31日以前に建てられた住宅を対象に、耐震診断・耐震改修設計・耐震改修工事の費用の一部を補助しています。令和8年度の補助額は次のとおりで、いずれも示した額のうち一番低い額が補助金額になります。

表は横にスクロールできます →

補助の種類補助額(一番低い額)申請締切
耐震診断診断費(税込)の10/11、5万円×戸数、1棟20万円令和8年12月28日
耐震改修設計設計費(税込)の2/3、10万円×戸数、1棟18万円令和8年12月28日
耐震改修工事(木造)工事費(税抜)の1/2、115万円×戸数、延べ面積×36,000円/㎡の1/2令和8年12月15日

長屋で気をつけたい条件は3つです。

  • 長屋は原則として棟単位で申請し、建物全体で診断・設計・工事を行う。他の所有者・居住者と調整し、同意を得る
  • 補助金の交付決定の通知を受ける前に契約・着手すると、補助を受けられない
  • リフォームと一緒に行う場合、補助の対象は耐震改修工事にかかる費用だけ

事前相談では、建物の外観写真、間取り図(手書きでも可)と、建物所有者全員・建築年次・棟明細が分かる固定資産(家屋)評価証明書を出します。棟全体の所有者を確かめる手がかりにもなります。

参考:大阪市「民間戸建住宅等の耐震診断・改修等補助制度」(2026年10月確認)

解体して見えた腐朽と土壁の剥落に柱と梁の補強で対応した京都市の京町家の事例

賃貸に出す前に解体して柱と梁を補強した

改修前の外観。2階建ての木造の建物が、両隣の建物と接して道沿いに並んでいる

京都市下京区の京町家(築117年・約180㎡)を、賃貸住宅にリノベーションした事例です。建物謄本に「大正」と記されているほど古くから建つ建物で、左右の棟のうち、右の棟はフルリノベーション、左の棟は借りる方が改装する予定のため、解体と玄関まわりの工事にとどめました。

左の棟は解体だけの予定でしたが、解体すると木材の腐朽や壁土の剥落が多く見つかりました。借りる方が内装をつくる前に、柱と梁を補強しています。

内装を解体した2階。曲がった丸太の梁と古い柱、土壁が出ていて、左手前に明るい色の木材の柱が立っている
床を外した1階。土間に古い柱が立ち、奥の壁は下のほうの土壁がはがれている
菅原 沙絵菅原 沙絵

担当デザイナー

解体のみの範囲でも劣化が多く柱と梁を補強した

賃貸として貸し出し、店子様側で改装予定なので、解体のみの範囲でしたが、木材の腐朽、壁土の剥落などの劣化が多かったので、柱や梁を補強しました。

改修後の外観。白い外壁の2階建てで、2階の窓に格子、1階の腰壁に黒いタイルが貼られている

参考費用は3,900万円(築117年・約180㎡・税別)で、右の棟のフルリノベーションと左の棟の解体・補強・玄関まわりの工事を合わせた金額です。工期は約150日でした。

↓こちらの施工事例もご覧ください


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吹き抜けをつくるために梁を補強した大阪市住吉区の長屋の事例

耐震補強が目的でなくても、長屋で間取りを変えるときには補強が要ることがあります。大阪市住吉区のT様の住まいは、生まれ育った長屋と、空き家になっていたお隣の長屋をつなげた二世帯住宅です。2軒にあった階段をひとつにまとめて位置を動かし、家の真ん中に吹き抜けを設けました。

2階の手すり越しに見た吹き抜け。丸いペンダントライトと階段、奥の壁に縦長の窓が3つ並ぶ

もともと柱や壁が多い長屋で、間仕切りを減らして吹き抜けをつくるには、梁の補強と構造の確認が欠かせませんでした。補強の内容は図面だけで決めきらず、解体後の現場で確かめながら進めています。

柳川 映子柳川 映子

担当デザイナー

吹き抜けまわりの梁の補強は現場で大工さんと打ち合わせた

社内で窓の大きさやレイアウトを検討し、吹き抜けまわりの梁の補強や天井の高さは、現場で大工さんと細かく打ち合わせました。構造の安全性を確かめたうえで、T様にも現場に来ていただき、「吹き抜けの仕上がりはこれくらいの大きさになります」「この窓の配置なら、2階の光がここまで届きます」と、実際の場所に立って一緒に確かめていただきました。

2軒の長屋で共有した場所と分けた場所、二世帯の暮らし方は、こちらの記事で詳しく紹介しています。

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長屋の耐震補強を隣の所有者と進める前に確かめたいこと

長屋の補強は、隣の所有者・居住者と話す場面が出てきます。話し始める前に、次のことを確かめておくと進めやすくなります。

  • 棟全体がいつ建てられたか、所有者が誰か。固定資産(家屋)評価証明書で、建物所有者全員と建築年次、棟明細を確かめられます。
  • 補助金を使うか。大阪市の補助を使うなら棟単位での申請になるため、隣の所有者・居住者の同意が要ります。
  • 工事で触る範囲。隣と共有する壁・屋根に手を入れるか、隣の敷地に足場を置くかを、所有者と事前に調整します。
  • 隣の住戸が空き家で、所有者と連絡がつくか。空き家の隣が傷んでいて心配なときの相談先は、隣の長屋が空き家で倒壊しそうなときの相談先で紹介しています。
  • 解体してから決める部分の予算。古い長屋は、解体して初めて傷みや基礎の有無が分かることがあります。

長屋の購入や、隣と接する部分・修繕の負担の調べ方は、こちらの記事で紹介しています。

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長屋の耐震補強は隣とつながる部分と補助の条件から考える

長屋の耐震補強は、住戸の中の柱・梁を補強するだけでなく、隣と共有する壁や天井裏、棟単位で申請する補助金まで、隣の所有者と一緒に考えることになります。まず耐震診断で今の強さを確かめ、補強の費用は解体と復旧の範囲で変わることを踏まえて計画します。

京都市の京町家では、解体のみの予定だった棟で腐朽と土壁の剥落が見つかり、柱と梁を補強しました。大阪市住吉区の長屋では、吹き抜けをつくるための梁の補強を、解体後の現場で確かめながら進めました。どちらも、解体して初めて分かったことに合わせて補強の内容を決めています。

補助の条件や手続きは、大阪市の場合は都市整備局の耐震・密集市街地整備受付窓口(06-6882-7053)に、それ以外の地域はお住まいの市区町村に相談できます。建物の状態は、耐震診断ができる建築士に見てもらいましょう。補強と合わせて間取りや暮らし方も見直したい場合は、お問い合わせからご相談いただけます。

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WRITERこの記事を書いた人

デザイナー

菅原 沙絵SAE SUGAHARA

大阪府大阪市出身 / 普段からデザインを意識的に見て、自分ならどうするのか考えるようにしてます / インテリア雑貨が好きでナチュラル・シンプルなものを集めることにはまっています

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