全焼した家は建て替えかリフォームか|躯体を残して直したコンクリート造2軒の実例

家が全焼しても、柱・梁・壁・床など建物を支える骨組み(躯体)が使える状態で残っていれば、建て替えずに躯体を残して直すリノベーションを選べる場合があります。どちらにするかは、躯体が使える状態か、解体して建て直す費用と比べてどうか、残した躯体で暮らしに合う間取りがつくれるか、建て替えるならどんな法律の条件がかかるか、の4つを確かめて決めます。
この記事では、その4つの見方と、全焼したコンクリート造の戸建て2軒(大阪府高槻市・京都府城陽市)を、躯体を残してリノベーションした実例を紹介します。
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全焼した家でもコンクリートの躯体が残れば直す道がある
「全焼」と聞くと建て替えるしかないように思えますが、内装や家財が焼けても、建物を支える躯体が残ることがあります。
大阪府高槻市の鉄筋コンクリート造(RC造)の戸建ては、火災で家が全焼し、骨組みの状態になりました。お客様のK様は、最初に知り合いの大工さんに相談しています。
「躯体が残っていたので建物を解体してから建て直すと大きな費用がかかってしまうとの事でしたので、躯体を残したまま工事をする方が費用を抑えられるとアドバイスをいただき、リノベーションをしているクジラさんを紹介していただきました」(K様)

写真は工事前の高槻市の家の室内です。壁と天井は黒く焦げていますが、コンクリートの壁や天井そのものは形をとどめています。
建て替えか躯体を残すかを決める4つの見方
全焼した家を建て替えるか、躯体を残して直すかは、次の4つを順に確かめると決めやすくなります。
①躯体がこの先も使える状態か
最初に確かめるのは、残った躯体をこの先も使えるかどうかです。これは見た目だけでは決められないので、構造を調べられる専門家に現地で見てもらいます。
城陽市の家では、クジラが壁や鉄筋の損傷を調べる会社をお客様に紹介しています。
2軒はどちらもコンクリートの躯体を残して直した家です。構造の種類(木造・鉄骨造・コンクリート造)や焼け方によって、どこまで残せるかの判断は変わり得ます。木造の家も含め、躯体を残せるかどうかは、専門家の現地調査の結果を見てから決めましょう。
②解体して建て直す費用と比べてどうか
建て替えには、新しく建てる費用に加えて、焼けた建物を解体して撤去する費用がかかります。高槻市の家は、最初に現地を見たクジラも、RC造のため解体撤去費がかなりかかる建物だと見ていました。
一方、躯体を残して直す場合も、2軒では壁の焼けかすを落とす、躯体に付いた臭いを取る、焼けた残置物を処分するといった、火災ならではの工事が加わりました。臭いの取り方は火事の臭いの記事で、焼けた家財の処分は火事のあとの片付けの記事で紹介しています。
2軒の参考費用は、高槻市の家が1,670万円(税別・家具・家電除く/築46年・117.79㎡・工期約80日)、城陽市の家が2,760万円(税別/築49年・約107㎡・工期約120日、外壁・外構・窓サッシを含むフルリノベーション)です。比べるときは、建て替えとリノベーションの両方の見積もりを、解体・処分の費用まで含めてそろえましょう。
③残した躯体でどこまで間取りを変えられるか
躯体を残すと、その躯体の形が間取りの前提になります。城陽市の家はプレキャストコンクリート造(PC造)で、柱・梁ではなく壁で建物を支える壁式構造でした。そのため大幅な間取り変更は難しく、もとの間取りを復旧しながら、使い勝手を高める工事にしています。
間取りを大きく変えたいのか、もとの暮らし方に戻したいのかで、躯体を残す方法が合うかどうかが変わります。どこまで変えられるかは構造の形式で違うため、設計の段階で、残す躯体のどの壁を動かせないかを確かめましょう。
LINEで相談・無料診断リノベーションについて相談する④建て替えたら同じ家を建てられるか
建て替えは「建物を新しく建てる」工事なので、建築基準法の手続きと、今の基準への適合が求められます。手続きが要るかどうかと、そもそも建てられるかどうかは、分けて確かめましょう。
手続きの要否:建て替えは、建築基準法では「新築」か、取り壊したり災害でなくなったりした建物と用途・規模・構造が大きく変わらない建物を建てる「改築」にあたります。新築・改築は、都市計画区域などの中では建物の大きさにかかわらず、区域の外でも2階建て以上か延べ面積200㎡超の建物なら、建築確認の対象です。躯体を残すリノベーションでも、壁・柱・床・梁・屋根・階段のどれかを過半にわたって直す「大規模の修繕・模様替」にあたる場合は、2階建て以上か延べ面積200㎡超の建物であれば、建築確認が要ります。木造2階建ての戸建ては、2025年4月以降に工事に着手するものからこの対象に入りました。
工事の可否:都市計画区域などの中では、建物の敷地は建築基準法上の道路に2m以上接していなければなりません(第43条)。この条件を満たさない土地では、原則として建物を新しく建てられません。また、建てたあとに法令が変わり今の基準に合わなくなっている建物(既存不適格)は、建て替えや大規模な修繕などの機会に、今の基準に合わせることが求められます。どの規定にかかるか、緩和があるかは土地と建物によって違うため、役所の建築指導の窓口や建築士に確かめましょう。
参考:国土交通省「建築物の改修における建築基準法のポイント説明会」資料(建築基準法の手続、増築・改築・大規模の修繕・模様替の意義、既存不適格)/国土交通省「2025年4月から木造戸建の大規模なリフォームが建築確認手続きの対象になります」/e-Gov法令検索「建築基準法」(第6条・第43条)
火災のあとの現地調査や火災保険の使い方の全体は、こちらの記事でまとめています。
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全焼した家の躯体を残して直した実例①大阪府高槻市のRC造の戸建て
高槻市の家は、築46年・117.79㎡の鉄筋コンクリート造の戸建てです。火災で全焼し骨組みの状態になったあと、躯体を残してフルリノベーションしました。工期は約80日です。


工事前と工事後を、ほぼ同じ位置から写した外観です。コンクリートの建物の形はそのままに、すすで黒くなっていた外壁を白く仕上げ直しています。
予算の関係で断熱材をしっかり入れることは見送り、代わりに調湿効果のある漆喰を、K様ご自身で壁に塗って仕上げました。1階に夫婦の寝室と水回りをまとめ、将来、階段の上り下りが大変になっても1階で暮らせる間取りにしています。工事の経緯はK様のインタビューでも紹介しています。
↓こちらの施工事例もご覧ください
LINEで相談・無料診断リノベーションについて相談する全焼した家の躯体を残して直した実例②京都府城陽市のPC造の戸建て
城陽市の家は、築49年・約107㎡のプレキャストコンクリート造(PC造)の戸建てです。火災で全焼した建物を、外壁や外構、窓サッシも含めてフルリノベーションしました。工期は約120日です。


壁式構造で大幅な間取り変更が難しかったため、住み慣れた環境に戻れるよう被災前の使い勝手を復旧し、そのうえで新築当時から変わった暮らし方に合わせて手を加えています。ご高齢のお母様が暮らすため、玄関・トイレ・お風呂に手すりを付け、もとの水回りの段差もなくしました。
柳川 映子担当デザイナー
外壁・外構もあわせてリノベーション
外壁やカーポートにも火災の被害が出ていたため、内部工事とあわせて一新。以前の外観を復元しつつ、気になるところは打ち合わせの中で微調整を行いながら最終決定しました。
お客様は、住み替えではなくこの家を直すことを選びました。「ずっとここに住み慣れていますし、母も高齢でもう引っ越しは厳しい。ここが“実家”なんです」と話しています。工事の経緯は城陽市のお客様のインタビューでも紹介しています。
↓こちらの施工事例もご覧ください
全焼した家を建て替えるか決める前に
全焼した家でも、躯体がこの先も使える状態で残っていれば、建て替えずに躯体を残して直す方法があります。決めるときは、躯体の状態、解体を含めた建て替えとの費用の差、残した躯体でつくれる間取り、建て替えるときの法律の条件の4つを確かめます。
高槻市のRC造の戸建てと城陽市のPC造の戸建ては、どちらもコンクリートの躯体を残し、高槻市の家は1,670万円(税別)、城陽市の家は外壁・外構・窓サッシを含めて2,760万円(税別)で直しました。城陽市の家は壁式構造のため、もとの間取りを復旧する形にしています。
躯体を残せるかどうかと、建て替えられる土地かどうかは、どちらも専門の確認が要ります。まずは構造を調べられる建築士や施工会社に躯体の状態を見てもらい、あわせて役所の建築指導の窓口で、その土地で建て替えるときの条件を確かめてから、建て替えと躯体を残すリノベーションの見積もりを比べましょう。
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担当ディレクター
RC造の火事物件で出てきた問題を一つずつ
RC造ということ、火事物件ということで設計上様々な問題が出てきました。基礎が傾いていたため建具がうまく入らないという問題などもありましたが、一つ一つ解決法を詳細に説明させていただきながら施工させていただきました。