【事例付き】サスティナブルな暮らしに寄り添う、建材や住まいづくり。
こんにちは、KUJIRAのデザイナーの松尾です!
近年、社会全体の標語になりつつある”サスティナブル(持続可能性)”。聞き馴染みはあるし関心がないわけではないけど、どのように暮らしに取り入れたらいいのか、どこか取っ付きにくいと感じてしまいますよね。
Writer 松尾翔 デザイナー 大学院中退後は設計デザイン事務所で修行を積み、2018年にクジラにジョイン。住宅から店舗まで幅広く設計案件を担当。「SEKAI HOTEL」のデザイン統括も担当している。 |
実は建築やインテリア分野においてもそういった考え方が徐々に浸透しつつあり、実際にサスティナブルな建材というのも販売されています。種類はまだ多くはないですが、今回は僕がオススメするサスティナブルな建材をご紹介します!
目次
そもそもサスティナブルって何?
サスティナブルという言葉について少し調べてみると、「地球の限りある資源を使いすぎず大切にして、よりよい状態で未来へ繋ぐことを目標とする。」とあります。
僕なりには、『この地球の美しい景色を、未来に暮らす子孫に見せてあげるために、今からアクションを起こしましょう!!』ということだと思っています。日常生活でできる取り組みとしては、使い捨てのものをできるだけ使わないようにしたり、オーガニックや地産地消の商品を購入するなど、「サスティナブル」と一言で言っても、調べてみると意外にも多くあるようです。
僕がデザインの修行のためにイタリアに留学して一番感動したのは、家具や住まいや衣服を何度もリフォームしながら大切にするという「使い続けるカッコ良さ」が生活の当たり前の光景だったことです。
難しいように聞こえることもあるかもしれませんが、実はサスティナブルな要素は意外と自宅に取り入れやすいので、皆さんも是非挑戦してみてください。
サスティナブル建材①:SOLIDO
火力発電所で発生する石炭灰の他、コーヒーショップで使用済みのコーヒー豆などさまざまな廃棄物を利用し、原料の60%に再生材料が使用された環境にやさしい素材で作られています。
また製造過程において発生する廃材は再びリサイクルされ、環境負荷の軽減に貢献しています。
セメント素材独特の白華(はっか)と使用済みコーヒー豆により、1枚1枚異なる温かみと素材本来の風合いを楽しむことができます。
おすすめの使用箇所
アクセントウォール
アクセントフロア
キッチンパネル
クジラではアクセントウォールとして使用したことが何度かあります。
こちらはホテルの客室デザインに使用した事例ですが、間接照明との相性も非常に良かったと思いますし、なにより環境に優しい建材を、リノベーション・リフォームに使用するというストーリーが好きです。
写真のリノベーションは、元々廃業した居酒屋跡地で行ったもので、それまでは随分放置されたままでした。
リノベーション・リフォームによって建物に新しい生命を吹き込むだけでなく、デザインには環境に優しい建材であるSOLIDOを使い、ホテルの客室として多くの人に利用されるようになりました。今までその地を訪れることがなかった人たちが、これをきっかけに訪れてくれるようになったことまで含めて、僕の大好きなリノベーションストーリーです。
▼サスティナブル建材「SOLIDO」を使用したリノベーション
商品情報
商品名:SOLIDO
メーカー名:KMEW
建材種別:内装ボード、外装材、床材
原材料名:セメント、使用済みコーヒー豆、古紙パルプ、フラッシュアイ(火力発電所で発生する石炭灰)、現場廃材
サイズ:T15×W455×H910,1820,3030
サスティナブル建材②:NUNOUS
環境汚染の原因ワースト10にランクインする繊維産業やファッション産業。
世界的に見ても繊維産業は拡大し続けており、日本国内の年間の生地生産数量でさえ約18億㎡にものぼります。日本の繊維製品の品質基準は非常に高く高品質ですが、その反面、基準に満たない「規格外品」が存在します。
布の「規格外品」はリサイクルがむずかしく、多くは粉砕や焼却などの処理が行われてきました。
NUNOUSは従来と異なる方法でリサイクルすることで、布の色や質感を最大限活かしながら大理石のような1点ずつ異なる表情を持つ唯一無二のマテリアルに仕上げています。
おすすめの使用箇所
アクセントウォール
アートパネル
オーダー家具
財布やブックカバーなどの小物など
商品情報
商品名:NUNOUS
メーカー名:セイショク株式会社
建材種別:内装ボード、壁面材、布地
原材料名:「規格外品」の繊維製品
サイズ:H450×W225×T2、48
サスティナブル建材③:PANECO
日本国内だけでも年間約120万トンもの衣類が廃棄されていると言われ、その多くが焼却処分されることにより大量の温室効果ガス排出にもつながっています。PANECOはこの深刻なファッションロス問題に、ディスプレイ・デザインの視点からアプローチした、廃棄衣料品を原料とする繊維リサイクルボード。
ボードは硬度があり加工しやすく多様な目的に使用することができ、店舗や商業施設、イベントやオフィス等のさまざまな空間の内装やディスプレイ什器、家具へと生まれ変わらせることができます。
おすすめの使用箇所
ディスプレイ棚
アートパネル
オーダー家具
商品情報
商品名:PANECO
メーカー名:株式会社ワークスタジオ
建材種別:内装ボード
原材料名:廃棄衣類、廃棄レザー、再生木材
サイズ:W930×H930×T5.5
サスティナブル建材④:STUDIO RELIGHT
廃棄された蛍光管ガラスを自社で中間処理し、オリジナル製品やガラスブロックなど、建築資材にリサイクルするなど循環型社会に適した商品の企画・製造販売を行っています。
また、ガラスの原料の全てが廃品で作られた日本初の取り組みでもあります。加工方法も複数あり、用途やデザインのテイストに合わせて使えるのが良いですよね。
おすすめの使用箇所
ガラスブロック
テーブルの天板
商品情報
商品名:Plain/Build/Icy/Cell/etc..
メーカー名:株式会社サワヤ
建材種別:ガラス
原材料名:廃蛍光灯、廃ブラウン管、廃ナトリウム灯、
サイズ:オーダー
以上、4種類のサスティナブルな建材についてご紹介させていただきました。
こういった建材は各種メーカーも日々研究しているのでこれからもっと増えてくるでしょう。
サスティナブル素材
これまでは、建築の建材に使用できるサスティナブル建材をご紹介しましたが、他にも家具やお皿などの小物に使用したい注目のサスティナブル素材をご紹介します。
fabula:食品廃棄物
出典:fabula
規格外の野菜や加⼯時に出る端材など、様々な⾷品廃棄物から新素材の製造・販売をしています。
コンクリートの約4倍もの曲げ強度がある素材で、将来的には建材への活用も期待できます。
REMARE:廃棄プラスチック
出典:REMARE
廃棄プラスチックを活用したマテリアル開発・製造・販売をしています。
原料となるプラスチックの色や特性を活かしているため、1枚ごとに表情が異なります。唯一無二の表情を持つ素材で作った家具は愛着が湧きそうですね。
PANECO:衣類廃棄物
出典:PANECO
様々な繊維素材を加工して木質ボードのようにしたり、成形してハンガーのような小物を作ることができます。
色とりどりの御影石のような模様なので、内装材や什器に使用すると空間のアクセントになりますね。
古材を使ったサスティナブルな住まい
リサイクル素材も素敵ですが、やはり「既存のものを再利用する」というのもこの世に二つとない素敵な空間デザインを作るための方法だと思います。
僕は「再利用した」という精神的なカッコ良さは後からついてくるものだと思っていて、あくまで一目でわかるカッコ良さをまずは楽しめることが重要だと思っています。
長い時間をかけて生まれてくる風味や風格といった類のカッコ良さはもっと住まいなどの空間に取り入れられるべきです。2018年にクジラに入社した僕が、たくさんのリノベーション・リフォームに関わる中で、デザイナーとして幸せに感じる瞬間のうちのひとつが、こういった風味や風格に出会った時です。
▲SEKAI HOTELのデザインでは、以前商売されていた婦人服屋さんの看板や梁をあえて残しました。
使い込まれたものにしかない魅力を大切にしていくことも立派なサスティナブルな住まいに繋がると思います。ここからは、クジラのデザイナーが採用した、古材を使ったデザイン事例もいくつか紹介させてください。
キッチン周り
住まい全体に木材のインパクトがある空間ですが、キッチン周りにはこの住まいから解体工事の時に出てきた木材を製材してカウンター壁面に再利用しています。
そしてカウンター天板には、クジラで大切に保管していた一枚板を綺麗に加工して再利用しています。こういった空間は、住んでいく中での経年変化が楽しめます。
▼キッチン周りに古材を使用したサスティナブルな住まい事例
玄関タイル
こちらは物件探しの段階で、お客様とディレクターが「可愛い!」と一目惚れして物件購入を決め、残すデザインを採用したものです。
残すことを最初に決めたことで、改修部分のデザインも残す部分を考慮したプランになりました。残す部分が住まいのデザインの主役になるって、とても素敵じゃないですか?
このお客様は、住まいの他の部分にも古い建具を採用するために、中古品を扱っているお店に行くために遠方までお付き合い頂いたりと、使い込まれたものが持つ風味や風格を大切にされています。
▼玄関タイルを再利用したサスティナブルな住まい事例
扉など
こちらの事例は、扉や梁、欄間などかなりの部分を再利用した住まいです。このように“残す部分”を増やすとなると、リノベーション・リフォーム工事が始まってみないとわからない部分も多く、工事中もたくさんの確認や打ち合わせが必要となります。お客様とクジラがチームになれたからこそ出来上がった空間と言えます。
▼扉などを再利用したサスティナブルな住まい事例
どの事例にも言えることは、デザイナーの提案にお客様が賛同、意思決定してくれたことが素晴らしいということです。人生の新しい門出とも言える住まいのリノベーション・リフォームに、古いものを使うということはなかなか簡単に決断できるものではありません。
しかし、一部分であっても古いものを使用するということは「住まいの経年変化も楽しんでいく」という意思決定に他なりません。リノベーション・リフォームした住まいを引き渡しで終わり、ではなく、僕たちの提案とお客様の意思決定によって、お客様のこれから続く長い暮らしにご一緒させてもらえるような気がして本当に幸せに思います。
少し話は逸れますが、住まいの主役であるお客さまの価値観と、リノベーションのプロである僕たちの価値観が混ざり合って良いモノが出来上がっていく感覚はデザイナーの仕事の醍醐味とも思っています。特にクジラでは「お客様とひとつのチームになる必要性」について毎日追求しているので、ご興味ある方はぜひこちらもご覧ください。
おまけ
イタリア留学時の寮の前に住んでいたご家族は、お父さんがガレージの前で家具をリフォームしていました。
なかなか本格的な工具を使っていたり、子どもと一緒にペンキを塗ったりと日本ではあまり見ない光景です。やはり一度買ったものを「愛着を持って所有する」という文化がとても大切だと思います。
使い込んだものに自然と目が行く価値観で過ごす生活は、とても幸福感が上がるように思います。
衣服、車、家具などたくさんのものがありますが、住まいそのものも愛着を持って使い込んでいきたいものです。
▼DIYで住まいを大切に使っていきたい方はコチラも!
最後に
住まいや暮らしには、住む人の大切にしたい価値観や人となりが現れるもの。こういった未来に繋がるカッコいい考え方を大切に、実際に行動できる人は素直に憧れてしまいます。
「長く使い続ける」というのは、僕たちの住まいという身近なところから、地球という大きな視点においても本当に大切なことだと思います。サスティナブルな住まいについてご興味を持たれた方はぜひお気軽にご相談ください。
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